106 頭数に自然に入っている。
前日二話更新しております。
遡ってお読みください。
明日もお昼更新です。
「と、言う訳で”氷雪会議”を始める」
今回の氷雪会議にも、何故か私が居る。私は今日は非番だったので、ババロアを配ってから席についてた。
ババロアを作ってくるのは良いんだけど、冒険者じゃない私がここに居るのがおかしいんだよね。異物混入である。何故か私専用の椅子が一脚増えてるし。
ーーーーーしかも、イクリスさんの隣に。
サーリャさんがババロアをつつきながら地図に見入る。
「ここかー、この街に居て結構長いけど、このダンジョンは知らなかったわね」
「書類が結構深い所に有ったんです。もしかしたら訳アリかも知れませんけど」
私が地図に書いてあるダンジョンをトントンと指差す。正面でもぐもぐ食べながらも資料を見ているのが、セイカさんだ。
「ダンジョンが有る事は知ってましたけど、人工ダンジョンなんですね」
ここで人工ダンジョンの説明をしておこうと思う。これは文字通り、過去の賢人が制作をし、最下層にボスがいて、試練を与える。無事に試練を乗り越えたらアイテムが出現する。
長い間放っておかれたダンジョンなので、難易度が上がり、その分ドロップアイテムのレアリティが跳ね上がる場合もあるので、期待も出来ると言えよう。
大体は、求めているような物が手に入るのが人工ダンジョンではあるのだが。……何事にも例外は有るという事で。
「シーフがいなければ、道中の宝箱は開けられませんね」
セイカさんが神妙な顔をする。
『なに、”解析”で中身は分かるのだから、中味が実が有るものを、開封時に罠が作動する物だけは持ち帰って街に戻ってから解除すればいい』
ベルジュがトスンと地図の真ん中に座る。
君は構って欲しい猫か。
「え。私、行くんですか?」
「「「え?」」」
「確かに。いつも一緒だから、もう”氷雪”の一部かと思っていた」
「これは盲点ね」
「えっ、僕も来てくれるものだとばっかり……」
皆が口々に言うが、私は冒険者ではない。しがない末端ギルド員だ。
ベルジュさえ目をかっぴらいているが、皆さん私の本分を忘れていらっしゃるようだ。
「ごめんねセルフィさん、話を持ってきてくれたのに、俺達図々しくて」
イクリスさんが謝ってくるが、これは……うーむむむむ。
私は頭の中で計算をする。私には、結構有休が溜まっている。場合によっては着いて行けるかもしれない。
「何日で行く予定ですか?」
「馬車で片道五日だから……三週間弱くらいかな」
有休をもぎ取れるかどうか、微妙な線である。
「……私、有休が溜まっているんで、消化で行けるかギルド長に聞いてみます」
「いいの?」
すまなそうに言ってくるイクリスさんに、私は頷いて見せる。
「ダメ元で聞いてみますね」
絶対とは言えないので、軽率には約束出来ないが、聞くだけならタダだ。
「じゃあ、行ってきます」
私がガタンと席を立つと、イクリスさんも席を立とうとするが、そこまで離れた場所では無いので断る。そうでなければコイバナ大好きなので、餌食になってしまう。私が1人な方が被害が少ない。
私は従業員出入り口から入り、二階のギルド長室に行く。了承を得てドアを開けると、書類に囲まれたギルド長が驚いた顔をしている。
「セルフィちゃん、今日非番よね?」
「そうなんですけど、ちょっとお話が」
「そう。じゃあ、私も休憩したいからソファにどうぞ」
ギルド長は席を立って隣の部屋のミニキッチンに移動する。ギルド長室にはミニキッチンが付いており、お茶くらいならここで淹れられるようになっている。
ブランデーケーキをお皿に乗せて来てくれて、お話開始だ。
「実は、まとまった休みが欲しいんです」
私は先日の剣の話をして、ダンジョンの事も併せて報告する。
「なるほど、あのダンジョンね。あそこは暫く放っておかれている筈だから、良い物が出るかもしれないわね」
「やっぱりそうなんですか?あの、それに付いて行くくらいの有休って一度に使えますか?」
ふぅん、とギルド長が唸る。
駄目なのだろうか。
「そうね……最近セルフィちゃんは仕事続きだし、いいわよ。今は城もすぐに鑑定に必要になる調査団は出ていない筈だし」
何で、城内の動きを知っているのでしょうか。でも、どうせ聞いても教えてくれないんだろうな。
何はともあれ休みがもぎ取れたには違いないので、心の中で万歳をする。私はケーキを素早く食べると、礼を言って部屋を辞した。




