104 大捕り物
また明日の昼頃来ます。
外からなだれ込んだ騎士団に、中にいる貴族が次々と捕まっていく。舞踏会の会場は大変な騒ぎで、騎士の気合が感じられる。違法な場所に来ている、ここの二部屋に居た貴族達は現行犯なので、一斉検挙である。
イクリスさんが捕縛しているへ男の所へ騎士団長がやって来て、その仮面を剥がした。
「コンフェルジュ伯爵でしたか、随分な騒ぎを起こしてくれましたね。いくら伯爵位の方とは言え、司法の裁きからは免れられませんよ」
「くっ……」
「連れていけ」
騎士団長は、部下に男を護送するように命じた。そうしてこちらを見ると、感心したように言う。
「また、あなた達でしたか。ギルド長に優秀な冒険者に頼んだとは聞きましたが……感謝します。報酬は後日、ギルドの方で。では失礼します」
素早い。端的に連絡事項を告げただけで風のように去ってしまった。
私が騎士団長を見送っていると、セイカさんが部屋に散らばった宝石を集めている。
「すごい量ですね……解呪するのが面倒くさいです」
「セイカさん、そこの扉を出た所にもっと大きな石有りますよ」
私が気の毒に思いつつ言うと、セイカさんが扉から隣の部屋を見て「うわー!?」と叫んだ。
無理もあるまい……普通の石の10倍以上はあるからね。
「これでセイカは、暫くは神殿にこもり切りねー」
私の頭の上からサーリャさんが覆いかぶさるようにして抱き着く。
「今日のセルフィちゃん、すっごい可愛い!いつもの服も可愛いけど、ドレス姿なんてレアよね。中々見れないかも!」
そうしていつも通り、私の頭にすりすりする。
「サーリャ、やめておけ」
ガイアスさんがサーリャさんを引きはがすと、ちらっと後ろのイクリスさんを見る。
「ハイハイ、止めますよ」
「何も言って無いぞ」
サーリャさんはイクリスさんに向けて、両手を軽く上げておどけて見せた。
とにかく、女性の血で出来た宝石の事件は止まった。後に聞いた所、この館自体はコンフェルジュ伯爵の物では無く、貸していた他の貴族の物で両家とも領地没収の上、爵位剥奪とされたそうだ。悪い事は出来ないものだねえ。
大捕り物を見物していると、ベルジュは肩からトタンと床に降り立ち、セイカさんの方へ歩いて行く。
『その一番大きい宝石を見せてみい』
「え?はい」
『せっかくだから、力を吸い取っておこう』
私は、呆れてしまう。
「それ、この間も、そうすれば良かったんじゃない……?」
『入っている魔力がケタ違いだ。以前の宝石は、一粒一粒がちゃちな物だったのでな。言ってみれば、砂粒一粒に対してビー玉一つといった所だ。こちらだと少しは糧になる』
分かりやすいような、分かりにくいような。そう言うと、ごぉぉぉぉぉと宝石から赤い霧を吸い込む。それが終わると、宝石が不透明な白い塊に成り果ててしまった。以前の妖魔と同じである。要するに一個一個有るか無しかの力を取るくらいなら、要らないと言った所なのだろうか。ベルジュは基本的に、面倒くさがりなのだ。
私達は館から抜け出すと、馬車を出してもらって、ガイアスさんの実家に戻った。ドレスを着替えないと、お家に帰れない。夫人は私達を見て、「上手くいったようね」と頷いて私をメイドに連れて行かせる。
私は、ドレスを脱がせてもらいお風呂に入れられてごしごし洗われると、ようやく私服に着替えることが出来た。心なしか、私服が奇麗になっているような……。しかし、やっと呼吸ができる。コルセットとか、普通の庶民がするものじゃないよ!貴族女性のスタイルは一日にしてならず。
貴族は貴族で大変なのね。
戻って来てからは何故か夫人に持てなされ、お菓子とお茶が出てくる。セイカさんはまったりと座り、マドレーヌをもぐもぐしている。会場の人を沢山解呪していたようなので、疲れたのだろう。こうして、この件は私達の手から離れ、あとは国にお任せだ。
こちらからもギルド長に報告はするが、本当に直接ギルド長に問いたい。どういうコネを持っているのかと。しかし、それも明日以降の話である。
今日は馬車で自分のアパートまで送って貰い、早々にベッドに入る事にする。ガイアスさんの実家でお風呂に入れてもらったので、体からめちゃくちゃフローラルな香りがする。
私はその甘い香りの中、眠りについた。




