99 連続”解析”結果
次で100話です!
同時更新しておきます。
「そういう訳で、連続事件自体は解決したと思われます」
”氷雪”がギルド長へ報告している。
ここはギルドの応接室だ。
「感謝するわ。でも、少なくとも貴族で、そう云う物が流通してたと言う訳ね」
「セイカが神殿で現場から持っていった物だけは解呪したんだが、それ以前に作られた物に関しては……」
昨日あのヴァンパイアは、貴族に麻薬のような症状が出る宝石が流通していると言った。相手が貴族では私達庶民が解決に乗り出すのは、難しいのではないだろうか。
私が、うーんと唸っていると、ガイアスさんが助け舟を出してくれる。
「自分は一応貴族に籍が有る。兄上に聞けば何か手助けが出来るかも知れない」
聞いた所、ガイアスさん実家は子爵家という事だが、別世界すぎて分からない。
「そもそも、国がこの件で動けるかが謎よねぇ。こういうのは貴族が集まるパーティーの裏で別室でやっている場合が多いのよね。一応聞いてみるわ」
「えっ、国にですか?」
「それ以外、何があるのよ。騎士隊長さん辺りに聞いてみようかしら」
ギルド長の人脈は何時も謎だ。気軽に騎士隊長と話を出来る人って何!?
「貴族の間の事だから、冒険者に依頼が出されるかは謎だけど”氷雪”にはガイアスさんがいるから……来るかもね」
フフッとギルド長は怪しい笑みを浮かべた。こんな時、絶対痛い目を見るのは私なのだ。知ってる知ってる。
「とりあえず、今回の依頼報酬ね。そんなに高額では無いけど」
そう言ってギルド長自らテーブルに報酬を乗せる。あまり多くないと言っても、私の給料からすると十分に多い。金銭感覚バグらないようにしなきゃ。生活の水準を上げるのは楽だけど、落とすのは大変だって言うしね。
ギルド長室から出た私達は、ぞろぞろと廊下を歩く。
「セルフィさんはこの後どうするの?」
イクリスさんがそう聞いてくるが、私はこの後は仕事だ。
「今日は、このまま鑑定業務ですね。窓口じゃないんで楽なもんです」
「そう言えば、俺達に馴染みが有るから窓口嬢っていうイメージが定着してるけど、本分は鑑定業務の方だもんね」
「いつまで経っても、ギルド長が人員補充してくれないんですよね。募集しているのかも怪しいですし……」
「俺としては、奥の仕事の方が安心出来るんだけど」
イクリスさんは、凛々しい眉毛を下げて困った顔を作る。
これは嫉妬ってやつか!?それともカスハラの問題か?
「どちらもお仕事なので、ギルド長が仕事を都合よく割り振ってくれるかは謎ですね……」
「そうなんだ……」
私達は鑑定室の前で別れ、私は仕事をする為に素材の山に向かう。今日は、ロウ爺はお休みなので、私も鑑定業務なのである。奥さんは、今日も旅行だったりするのだろうか。一人寂しく、ご飯を食べていない事を願う。
鑑定室に入ってからは、真面目に仕事を始める。
ふんふん、今日は武器と宝石の鑑定だった。
スキルの向上により、目の前に3つほど並べて解析を始める。一度に並べすぎると、スキルが暴走するからだ。
”解析”
・東方の神事用の短刀 1600年前にローラ王国の春の祭事に使われていた物、耐久度55%
・深海の宝珠 500年前に輸送で帝国へ送られる際に沈没した船の中に有った、干ばつに祈りを捧げるための象徴的な物、耐久度33%
・サンドキャットの心臓から出た宝石 サンドキャットの心臓で作られる、淡いブルーの宝石、耐久度87%
とまあ、こんな所だ。
珍しい物は素材とは違って相場がハッキリしないので、私は金額を言わずに概要だけを粛々とつげて、買い取り額はギルド長に一任している。私は作業を続けながらふと箱の中の赤い宝石に気が付く。これは……。
『おい、その宝石にスキルをかけろ』
机で腹ばいになって鑑定をするアイテムなどを覗いていたベルジュが、チャッと立ち上げって宝石をぺしぺしする。
”解析”
・乙女のピジョンブラッド 若い少女の力作られた、幻惑・酩酊感などの強い症状が出る。強い蛍光色を持ち、瞳に光を映す事で魅入られる。
私は椅子を蹴とばす勢い立ち上がり、その宝石を持って、ギルド長室に駆け込む。
「あら、セルフィちゃんってば、ノックしないと」
ギルド長は山程の書類に囲まれ、仕事をしていた。ギルド長ってちゃんと書類仕事こんなにしてたんだ。私から見ると力業が多いので、あまり書類仕事をしているイメージが無かったのだ。
「ギルド長、この宝石は先日の宝石と同じものです」
「あら、そうなの?……これ、誰が依頼に出した物か分かる?」
「書類によると、この街のCランク冒険者ですね。用途には気付かずに横領してギルドに流したとかですかね?一般の冒険者が手に入れるのは難しいですよね」
「その可能性も有るわね……正々堂々とギルドの鑑定に出すなんて大胆だわ」
ギルド長に同意である。街の鑑定では、どの程度看破出来るか分からないのだが、足がつかないのは街の裏鑑定の方だ。ギルド長は矯めつ眇めつ宝石を眺めている。宝石の効果が現れないかハラハラしたが、ギルド長は元Aランク冒険者なので、呪い関係には耐性が有るようだった。
「この宝石を持ってきた冒険者を探して、裏口から入れるように事務員のカルルさんとデスクのユーグさんに手配して」
「はい」
カルルさんとユーグさんは、今は裏方業務をしているが、元冒険者だった人だ。荒事も有る程度はOKだとか。
「では、伝えに行きますね」
私は宝石をギルド長に預けたまま、部屋を後にした。




