9 冒険者の実情
9&10同時更新です。
荷物をまとめてから探索を再開し、階段を見つけて一階下がって地下10階。比較的浅い階層だが、突然朽ちた部屋が廊下を挟んで20以上ある区画に入った。そこに所狭しと机と本棚に碑石や古文書が山積みになっている。
天井までは20m以上あるが、書架はそれに届くほどだ。棚はかなり歯抜けではあったが、それにしても量が多い。碑文は、朽ちている物が殆どが、本は保存魔法がかかっていたようで、ページがめくれる程度には状態が良かった。
「流石に全部は持っていけませんね……一晩吟味しても良いでしょうか。残りは後日、上層部と相談して再度来ます」
考古学チームのリーダーはここまでの規模は考えていなかったのか、唖然としながらも周りを見回していた。
かくしてここでの更なる一泊が決まり、キャンプの準備をする事になった。簡易なテントは張るが、本が有る場所で火を起こす訳にもいかず、塩漬けハムとスライスチーズをひたすら作り、サンドイッチ制作マシーンに徹する。
議論するにしろ時間は限られているのだから、片手で食べられるものを用意した方が良いだろう。”氷雪”と私は先にご飯を済ませる。前衛の二人は特にお腹が空いていたらしく、すごい数を平らげていた。そうして私は、ご飯目当てにサーリャさんにパーティーに誘われる事になるのだが、それは別の話。
国が貸し出してる時知らずのマジックバックが無かったら、解析スキルでしかお役に立てないので丁重にお断りをしておく。私にデフォでマジックバッグはついていないのだ。
ご飯を食べたら急激に眠気が襲ってきた。
スキルを連続で使ってきたし、空のブーツを履いていても普段は内勤なので、外で活動するのは相当疲れる。内勤万歳。やはり、冒険者にはなれないな……。
そこで意識がプツリと切れた。
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隣で寝がえりを打つ気配がして、急に意識が浮上する。頭を持ち上げてみると、サーリャさんの柔らかい体で押しつぶされていた。グラマーな体が何となく目に毒で、そっとそこから抜け出す。
腕時計を見ると、朝の5時。いくらなんでも早いが、妙にハッキリ目が覚めてしまった。テントから出て大きく伸びをしていると、後ろから声がかかる。
「あれ、セルフィさん?」
後ろからイクリスさんの声がかかる。
「イクリスさんこそ、どうしたんですか?」
「俺はさっき見張り番を交代した所。起きるの早いんだね」
「そうですね、寝るのが早かったので、中途半端に目が覚めちゃって」
私はそう言いながら、マジッグバッグを漁り、タッパーからお米を出して、おにぎりを握っていく。
「豪勢だね。俺、おにぎり好きなんだ。柔らかいパンにしろ、おにぎりにしろ、ダンジョンで作り立てが食べられるなんて驚きだよ」
「マジックバッグ様さまです。帰るまでの日数の目安が出来ましたからね。せっかくなので食材を少し使おうかと。」
ひたすらオニギリを握っているのを横目に、アイクスさんが呟くように言う。
「冒険者は、いつどうなるか分からないから、特に美味しい物に目が無いんだ。最後の晩餐が粗末な食事だと、後悔しようとしても出来ないからね。簡素でも美味しい物だと本当に嬉しい」
考えてもいなかった事を言われ、ぎょっとしてアイクスさんを見てしまう。
華やかに見えても強敵と戦って生活する冒険者パーティーがある一方で、無難な仕事をして食べるに困らない程度の安定した生活をしている中堅冒険者もいる。
「じゃあ、何でそんなに強くいられるんですか?」
不思議だ。うちの冒険者ギルドに居る人は、そこまで命にかかる仕事を受けるパーティーは少ない。もちろんランクを上げる事を目標にして邁進しているパーティーも居るが、そういう訳でも無い気がする。
イクリスさんは、どこか遠くでも見るように首を傾げる。
「なんでだろう、小さい頃に読んだ冒険譚に憧れたからかな。今まで危険な事は何度でも有ったけど、それを上回る達成感が有ったよ」
それは本当に眩しい笑顔で。ギルドで見た笑顔は外用の作られた笑顔だったのだと初めて分かった。それに比べて、自分は憧れていた大人になれているだろうか。夢はなんだっただろうか。よく覚えていないが、今はまだ、ぬるま湯な生活が私に合っていると思う。
「さ、机で潰れている考古学チームを起こして、持ち帰れる量の本をまとめてもらうか。マジックバッグにも容量の上限が有るだろ?」
「そうですね、本棚丸ごと持っていく訳にいかないので……。後日またチームを組むそうですし、寝落ちするくらい一晩議論してたら、いい加減に取捨選択出来たでしょう」
おにぎりを握り終えた頃にはみんな起きてきて、それに喜んだサーリャさんの恒例の熱い抱擁を受ける。これ、誰にでもしてるのかな。
かくして私達は帰路に就くことになった。
帰りはスキルを使いながら捜し歩く必要が無いので最短ルートで登って行き、アッサリと外に出ることが出来た。往復10日、これなら短い方だろう。
私は城への報告をアイクスさん達のパーティーにまかせ、何日ぶりかの自宅の風呂へダイブした。気持ち良すぎたのと、疲れから溺れそうになったのを付け加えておく。
おにぎりがー、好きだからー!(中の人が)




