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僕の幼なじみは今夜も知らない誰かに抱かれる(R15版)  作者: 碗古田わん


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九、噂

挿絵(By みてみん)

 衣替えを控えた九月の下旬。

 市立瀬渓東(いちりつせたにひがし)中学校は、週末に行われる文化祭の準備で放課後も多くに生徒が残っていた。

 塚田(つかだ)純希(じゅんき)もその一人だった。

 純希の所属する二年A組は、演劇をやることになっていた。

 純希は裏方で大道具を担当していた。

 今は足りない備品を取りに行って、教室に戻るところだった。

「おい」

 そこで純希は知らない男子生徒に声かけられた。

「A組の塚田だろう?」

「そうだけど」

 男子生徒の問いに純希は頷いた。

「俺はB組の松岡だけど」

 と、男子生徒――――松岡(まつおか)祐太朗(ゆうたろう)は名乗った。

「同じクラスの加藤とやりたいんだけど、いくら払えばいい」

(またか!)

 その問いに純希は心の中で舌打ちをした。

「僕にそんなこと聞かれても困る」

 そう思ったが、取り敢えずは当たり障りのない返事をする。

「加藤とやりたかったら、塚田に話を通せっていわれたぜ?」

 すると、祐太朗は真顔で言った。

 いつもの間にか、純希が小春の仲介役をしているという噂が広まっていたのだ。

 こうして話し掛けられるのも初めてではない。

 すでに、何人もの男子から同じような問いを掛けられていた。

「デマだよ」

 さすがに純希もウンザリそうに応えた。

「そうなのか?」

 祐太朗は残念そうに言った。

「じゃあ、加藤に直接、聞くか……」

「だからぁ」

 独りごちる祐太朗に、純希はあからさまにムッとした。

「小春がパパ活やってるって話自体がデマだから!」

 そして、強い口調で言い放つ。

「そ、そうなのか……」

 その迫力に祐太朗は押され気味になった。

「話はそれだけ?」

 勢いのまま、純希は話を打ち切った。

「おうっ……」

 純希に圧倒された祐太朗はそれ以上、口を開くことができなかった。

「じゃあ、僕は行くよ」

 その答えを聞く前に純希は祐太朗に背を向けると、歩き出した。

(誰だよ、そんなデマ流した奴は……)

 心の中に怒りを抱えたまま。


 最終下校時間になり、純希は学校を後にした。

 いつも一緒に帰る加藤(かとう)小春(こはる)は、先に帰ったので今日は一人だ。

 マンションに着き、いつものようにエレベーターで部屋のある階まで上がる。

 そして、これまたいつものように、自分の部屋には行かず、真っ直ぐ小春の部屋へと向かった。

”ピンポン”

 と呼び鈴を鳴らすと、すぐにドアが開いた。

「お帰り、純希」

 小春は上機嫌で純希を部屋に迎え入れる。

 そのまま自分の部屋へと招く。

 制服から着替えていた小春は、部屋着のキャミソールにショートパンツという格好だった。

 小春がベッドに座ったのを見て、純希も隣に座った。

「純希……」

 甘えた声で小春が言った。

 頬は紅潮し、瞳は潤んでいた。

「小春……」

 小春を見詰める純希の瞳もまた潤んでいた。

 そのまま二人は、キスをした。


   ♢♦♢♦♢♦


 行(・)為(・)が終わり、純希と小春は、全裸のままベッドに横になり、余韻を楽しんでいた。

「今日も仕(・)事(・)、いいんだっけ?」

「予約再開が今度の日曜日だからね」

 純希の問いに小春は頷いた。

 例(・)の(・)件(・)で休止していた小春の仕(・)事(・)も、来週から再開することになっていた。

「だから、あと二回ぐらいできるよ」

 それから、悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「いや……そろそろ帰る時間だから」

 と、純希は真面目顔で答えた。

 小春の部屋に時計はないが、ベッドの頭に置かれているスマホはまもなく午後七時を示していた。

 塚田家の夕食の時間は父の帰る午後の八時頃と決まっている。

 それを知っているから小春もそれ以上はなにも言わなかった。

「今週、あたしが休みでよかったね」

 代わりにニマニマと笑みを零す。

「じゃなかったら、文化祭終わるまでお預けだったもんね」

「お預けって……」

 その言い方に純希は冷や汗笑いした。

 だが、実際にそうなのだ。

 純希と小春は、いつも放課後にし(・)て(・)い(・)た(・)。

 しかし、例(・)の(・)件(・)が一段落した直後から、放課後は文化祭の準備一色となり、小春が休んでなければす(・)る(・)こともできなかっただろう。

 なので、純希は強く否定できなかった。

「そう言えばさ」

 そこで小春はなにかを思い出したようで、いきなり話題を変えた。

「例の噂、知ってる?」

 それを聞いた純希はギクッとなった。

「どんな噂?」

 表面的は何事なかったように取り繕いながら、純希は聞き返した。

「あたしとやりたいなら、純希を通せ、みたいな噂」

「初耳だなぁ」

 純希は惚けた。

 既に何人も聞いてくる男子はいたが、小春に配慮して黙っていたのだ。

「そうなんだ……」

 その答えに小春は意外そうな顔をした。

 もう迷惑を掛けてる思っていたからだ。

「もし、そんな奴が来ても蹴っちゃっていいからね」

 ちょっと怒ったように小春は言った。

「うん」

 と、純希は頷いた。

(まぁ、実際そうしてるし)

 純希は心の中で肩をすくめた。

「ところで……」

 そこで今度は純希が話題を変えた。

 このまま、噂の話をしていてボロが出るのを避けるためだ。

「小春のクラスは、文化祭、なにやるんだっけ?」

「お化け屋敷だよ」

 怒りを収めた小春は、足をブラブラさせながら答えた。

「純希のクラスは、演劇だっけ?」

 そして、聞き返す。

「うん」

 純希は首を縦に振った。

「まぁ、僕は大道具だから、当日は暇なんだけどね」

「じゃあ、一緒に廻る?」

 その言葉に小春は提案した。

「いいけど……、お化け屋敷はいいの?」

 聞き返した純希に、

「あたし、脅かし役だから、変わってもらうことはできるよ」

 と、小春は笑顔で答えた。

「なら、時間合わせて廻ろうか」

「うん」

 純希の誘いに、小春は嬉しそうに頷いた。

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