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僕の幼なじみは今夜も知らない誰かに抱かれる(R15版)  作者: 碗古田わん


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六、告発の行方

挿絵(By みてみん)

 あれから一週間が経った。

 その間、加藤(かとう)小春(こはる)は精力的に仕(・)事(・)を熟した。

 媚薬を盛られた件も、そのとき感じた不安もすっかり忘れていた。

 そして、月曜日。

 いつものように塚田(つかだ)純希(じゅんき)と一緒に登校した小春は、教室前の廊下で別れると自分のクラス――――B組に入った。

「おはよー!」

 これまたいつもように元気よく挨拶する。

 すると、クラスメイトの視線が一斉に小春に向けられる。

「えーっと……どうしたのかな?」

 少しタジッとした小春は、冷や汗笑いを浮かべた。

 教室の入口で固まった小春に、親友の山野(やまの)美都子(みつこ)が駆け寄ってきた。

 黒髪をポニーテールして、大きな目とちょっとポッチャリとした頬をした少女だ。

「なにかあった?」

 聞く小春に美都子は無言で黒板を指さした。

 そこには、


 ’加藤小春はパパ活をしている’


 とデカデカと描かれていた。

「えっ?」

 小春は思わず声を漏らした。

(バレた!?)

 そして、内心焦る。

(でも、誰が?)

 とも思った。

「これって本当なの?」

 美都子は小春をジッと見詰めた。

「いやだなぁ、そんな訳ないじゃん」

 それに小春はできるだけ自然に作り笑いを浮かべた。

「誰だろうね? こんな悪戯」

 そして、黒板まで行くと黒板消しで書き込みを消し始めた。

「だよねぇ」

 美都子もそれに同意すると、もう一つの黒板消しを取って手伝い始める。

「小春!」

 そこへ血相を変えた純希が飛び込んできた。

「どうしたの、純希?」

 小春はわざとらしく首を傾げた。

「いや……小春が大変なことになってるって聞いたから……」

 焦りながら純希は答えた。

「大丈夫だよ」

 平気そうに言った小春は、再び黒板消しを再開する。

 その様子を見て純希は、騒ぐのは逆効果だと気付いた。

「僕も手伝うよ」

 動揺ができるだけ外に出ないように気をつけながら、純希は申し出た。

「じゃあ、上に方、お願い」

 小春は純希に黒板消しを渡した。

「うん」

 黒板消しを渡された純希は、小春の背では届かない上の方を消し始めた。

「……」

 その様子をジッと見詰める視線があったのだが、二人とも気付かなかった。


 その日の放課後。

「しかし……誰があんなマネしたんだろう?」

 いつもの帰り道で純希は首を傾げた。

「あたし、イジメられてるのかな?」

 と、小春はケタケタと笑った。

「そんなことはないと思うけど……」

 小春の自虐ネタに純希は困ったような顔をした。

「じゃあ、本当にバレた、とか?」

「でも、身の安全は保証されているんだろう?」

「そのはずなんだけどね……」

 そう言う小春は自信なさげだった。

 媚薬の件があったからだ。

「とりあえず、銀兄ぃには報告しておくよ」

 小春は平気そうに微笑んだ。

「でっ? 今日もす(・)る(・)?」

 だが、うだうだ考えても仕方ない。

 この件は一端忘れることにして、小春は純希に聞いた。

「いや……今日はそんな気分じゃないから、やめておくよ」

 それで小春は、自分よりも純希のほうが神経衰弱(ナーバス)になっていることに気付いた。

「ちえっ」

 なので、小春は露骨に舌打ちをした。

 この空気が壊れるようにと願いながら。

「し(・)た(・)か(・)た(・)っ(・)た(・)の?」

 すると、反応に困った純希は指で頬を掻いた。

「ちょっとだけ、ね」

 言いながら、小春は純希を上目遣いで見た。

 そのかわいらしさに、純希はウッとなった。

「じゃあ、ハグだけ……」

 そして、妥協案を提示する。

「うん!」

 小春は嬉しそうに両手を開いた。

 周りを見回して誰もいないか確認してから、純希は小春を抱きしめた。

「えへへへへ」

 小春はさらに嬉しくなって純希をギュッとする。

「……」

 そんな二人を電柱の陰から覗き見る人影があったのだが、二人は気付かなかった。


 小春はいつもより早い時間に事(・)務(・)所(・)に顔を出した。

 奥の控え室で銀治郎を待つ。

「おはようございます」

 仕(・)事(・)着(・)に着替えてから十分も経たずに、剣(つるぎ)銀治郎(ぎんじろう)がドアを開けて入ってきた。

「銀兄ぃ!」

 小春は挨拶もせずに、いきなり本題に入った。

 今日、学校で起きたことを説明する。

「うむっ……」

 全てを聞いて、銀治郎は唸った。

「一番可能性があるのは、同伴現場を見られたことだな」

 そして、冷静に状況を分析する。

「周りに気をつけていても、こればかりは防ぎきれない」

「でも、制服違うよ?」

 小春は反論した。

「普段と違う制服をいていたら、それだけで怪しいと思われるだろう」

 それに銀治郎は正論で答える。

「そっか……」

 銀治郎の言い分は理解できる。

 小春は肩を落とした。

「とりあえず、当分は同伴を入れないように代表に話しておこう」

「うん……」

 残念そうに小春は頷いた。

 同伴は実はけっこういい稼ぎになる。

 それが封じられるのは、小春的には打撃だった。

 だが、背に腹はかえられない。

 小春は渋々、従った。


 その翌日の朝。

 純希と小春は、これまたいつものように一緒に登校していた。

 すると、小春のプリッツスカートのポケットがブルッと震えた。

 スマホに着信があったのだ。

「誰だろう?」

 スマホを取り出し、確認する。

 美都子からのメッセだった。

 何も考えずにメッセを開く。

 すると、

『これ、教室の黒板にURLが描かれてたんだけど、本当にコハちゃん?』

 というメッセージとともにURLが張られていた。

「えっ?」

 慌ててURLをタップする。

 すると、小春と誰かがし(・)て(・)い(・)る(・)動画が流れ始めた。


   ♢♦♢♦♢♦


「なにこれ……」

 動画を見て小春は絶句した。

 横からスマホを覗き込んでいた純希も蒼ざめる。

(小春……仕(・)事(・)だとあんなに感じるんだ……)

 そして、いいし得ない敗北感を味わった。

「こんなの知らない!」

 それを見透かしたように、小春は首を横に振った。

「誰、これ!?」

「そうなの!?」

 困惑する小春に、純希も驚いた。

「とりあえず、銀兄ぃに言って消してもらわなきゃ」

 と、小春はメッセの通話機能で銀治郎を呼び出した。

「どうした?」

 コール一回で、銀治郎はすぐに通話に出た。

「消して欲しい動画あるんだけど!?」

 小春は慌てて用件を伝えた。

「うん……あたしらしい娘(こ)の動画……うん……うん……リンク、送るね」

 通話を終えた小春は、すぐにスマホを操作して該当のURLをメッセで送った。

「でも、元の動画を消しても、保存済みの動画は消せないんじゃ……」

「それも、なんとかするって」

 不安がる純希に、小春はお気軽に言った。

 それで純希は、小春がお世話になっている事(・)務(・)所(・)は元々、コンピューター関係の技術者(エンジニア)を派遣する会社だったことを思い出した。

「でも、動画を見た人を忘れさせることはできないよね?」

 それでも、なお純希は懸念した。

「そこは惚けるしかないかなぁ」

(つまり、ノープランか……)

 もしもの為に純希は思案した。

「そうだ!」

 そこで小春は思い出した。

「みっちゃんに返信しないと」

 そして、スマホを操作する。

『こんなの知らない。誰これ?』

 メッセを送るとすぐに美都子から返信が来た。

『そうなの? もうクラス中大騒ぎだよ』

 それを読んだ小春は、困り顔をした。

「今日は休んだほうがいいんじゃない?」

 心配そうに純希が進言した。

「ここで休んだら、認めたのと同じになっちゃう」

 その言葉に小春は奮起した。

「でも、ちょっと怖いから、教室まで付き添ってくれる?」

 それから首を傾ける。

「いいよ」

 純希も最初からこんな状態の小春を一人にする気はなかった。

「じゃあ、行こう」

 二人は学校目指して歩き出した。

 学校に着いた純希と小春は、自分達の教室のある二階へと上がった。

 B組の前まで来る。

 純希と小春は目と目で頷いてから、教室のドアを開けた。

「おはよー!」

 小春が元気よく挨拶すると、クラス全員から一斉に視線を向けられた。

「えーっと……どうなってるのかな?」

 二日連続のこの仕打ちに内心うんざりしながらも、小春は冷や汗笑いを浮かべた。

「一応、みんなにはさっきのメッセのやり取りしたことを話した」

 おもむろに美都子がやって来て、状況を伝える。

「女子はそれでなんとか納得したけど……」

 それから一箇所に群がっていた男子をチラッと見る。

「でも、男子は……」

 そこまで言って、美都子は言葉を濁した。

「だってよう」

 すると、それを聞いていた男子が小春に近づいてきた。

「この動画、どう見ても……」

 男子がスマホを見せようとしたとき、

”ピロロロン”

 クラスにいた全員のスマホがメッセの着信音を鳴らした。

「なんだ?」

 クラスメイトたちが訝しげにメッセアプリを開く。

 すると、いきなりスマホがフリーズした。

「な、なんだ!?」

 クラスメイトたちはみなうろたえた。

 だが、それも一瞬で、すぐに操作可能になる。

「なんだったんだ、今の……」

 教室にいた全員が首を傾げていると、一人の生徒が異変に気付いた。

「おい、例の動画、なくなってるぞ!」

 それでも教室内が再び騒がしくなった。

「リンク先の動画も消されてる」

(さすが、銀兄ぃ)

 それを聞いた小春は心の中で指を鳴らした。

(仕事が早い)

「でっ?」

 証拠が消えた小春はここぞとばかりに強気に出た。

「動画がなんだって?」

「いや……消えちまったんで比べられねぇけど、あれはどう見たって加藤だったぜ」

 それでも男子生徒は、小春に詰め寄った。

「フェイク動画かもしれない」

 すると、それまで事の成り行きを見守っていた純希が口を開いた。

「多分、生成AIを使って小春の顔をAVに合成したんだ」

 そして、あらかじめ用意していた言(・)い(・)訳(・)をもっともらしく話す。

「そんなこと可能なのかよ?」

「今の生成AIなら充分可能だよ」

 男子生徒の問いに純希は断言した。

「なぁーんだ」

 途端に男子生徒たちから落胆の声が上がった。

「でも、これで二日続けての嫌がらせでしょ?」

 美都子は小春を心配した。

「先生に言ったほうがいいんじゃない?」

「ううん」

 しかし、小春は首を横に振った。

「あまり大事にはしたくないから」

「そぉ……」

 本人が言ってるので、美都子はそれ以上は勧められなかった。

(なんとかなった……かな?)

 そして、純希は心の中で額の汗を拭った。

「……」

 そんな様子を教室の隅でジッと見詰める視線があったが、純希も小春も気付かなかった。

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