↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の幼なじみは今夜も知らない誰かに抱かれる(R15版)  作者: 碗古田わん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/41

十五、宏の告白

挿絵(By みてみん)

(また、この夢だ……)

 塚田(つかだ)純希(じゅんき)は思った。

 近くもあるし遠くもあるベッドの上で、加藤(かとう)小春(こはる)が知らない誰かに抱かれていた。

(いや……知っている)

 小春に覆い被さる男子の顔には、見覚えがあった。

(あれは花江だ……)

 小春とま(・)ぐ(・)わ(・)っ(・)て(・)いるのは、花江(はなえ)宏(ひろし)だった。


 ♢♦♢♦♢♦


 行(・)為(・)が終わり、ベッドを降りた小春はゆっくりと純希に近づいた。

「ごめんね、純希」

 純希の前まで来た小春は、済まなそうに謝った。

「花江が凄いから、あたし、身も心も花江のものになっちゃった」

 そして、申し訳なさそうに言った。

「もう純希だけを見てあげられないや」

 寂しそうに笑う小春を見て、純希は胸が苦しくなった。


 そこで純希はハッと目を覚ました。

「おはよ」

 すると、ベッドの横で寝顔を眺めていた小春が挨拶する。

「こ……小春」

 純希は目に涙を浮かべた。

「どうした?」

 驚きながらも、小春は純希の頭を撫でた。

「小春が……」

 そのままの姿勢で、純希は今見た夢のことを話した。

「そっか……」

 それを聞いた小春は、優しく微笑んだ。

「不安になっちゃったんだね」

 言いながら、純希の頭を撫で続けた。

「でも、それなら大丈夫」

 小春は安心させるように言った。

「花江のたいしたことなかったから」

 そして、断言する。

「それに何度も言ってるけど、あたしは純希とするときが一番気持ちいいんだよ」

「うん……」

 力説する小春に、純希は頷きながら涙を拭った。

「コハちゃん、純希まだ起きないの?」

 と、そこでドア越しに塚田(つかだ)希美(のぞみ)の声がした。

「あっ、今、行きます」

 返事をしてから、小春は純希を見た。

「さぁ、ご飯食べよ?」

「うん」

 小春が立ち上がると、純希もベッドを降りた。


 いつものように塚田家で朝食を済ませた純希と小春は、朝の通学路を歩いていた。

「しかし、心配だなぁ」

 その途中で純希がポツリと呟いた。

「まだ、あたしがNTR(寝取ら)れる心配してるの?」

 小春はジト目で純希を見た。

「いや……そっちは大丈夫だと思うけど……」

「だと思うけど?」

 口を濁した純希に、小春は続きを即した。

「なんか、勘違いしなきゃいいけどなぁ」

 余計な心配とは思ったが、それでも純希は気になった。

 宏がこれをきっかけに距離感をバグらせるのではないかと。

「そこは大丈夫だと思う」

 だが、小春は断言した。

「散々、言い聞かせたから」

 そして、ニヤリと笑う。

「……」

 その笑みがあくどく見えて、純希は背筋が寒くなった。

「これで約束を守れないなら、蹴ってやるよ」

 小春は、本気とも冗談ともつかない口調で言い切った。

「あはははは……」

 それを聞いた純希は、冷や汗笑いをするしかなかった。

 そのまま二人は学校に着いた。

 下駄箱で上履きに履き替え、教室のある二階へと上がる。

 二年B組の教室前で、小春は純希と別れた。

「おはよー!」

 毎度のごとく元気よく挨拶をして、小春は教室に入る。

「おはよう」

 と、教室のあちらこちらから挨拶が返ってくる。

「おはよー」

 そのまま自分の席に向かう途中で、宏にも挨拶した。

「お、おはよう……」

 すると宏は、俯いて目を合わさず、オドオドとした態度で挨拶を返した。

(ちゃんと約束、守ってるじゃん)

 いつもと変わらぬ様子の宏の態度に、小春は感心した。

 小春が席について、リュックから教科書を机の中に移動させているとき、親友の山野(やまの)美都子(みつこ)がソソクサと近寄ってきた。

「なんか、花江がいつも以上にキモいんだけど」

 開口一番に美都子は言った。

「そうなの?」

 小春は首を傾げた。

「なんか、教室に来てから、ズーッと一人でニマニマしてるんだよね」

「ふーん」

 美都子の言葉に生返事しながらも、小春は心の中で、

(やっぱ、隠しきれてないじゃん)

 と、冷や汗笑いをした。

(まぁ、思い出すぐらいならいいか)

 それでも小春は、そんなことを思うのだった。


 その翌日の金曜日。

「おはよー!」

 小春はいつもように元気よく挨拶して教室に入った。

「おはよ」

 宏にも挨拶する。

「……おはよう…………」

 なにやら暗い声で挨拶が返ってきた。

「?」

 その態度に小春は頭に疑問符(クエッションマーク)を浮かべた。


 週が明けて月曜日。

 登校した小春は、クラスメイトへの挨拶を済ませた後で、宏にも挨拶した。

「おはよ」

「…………おはよう……」

 それに対して宏は、落ち込んだような素振りで挨拶を返す。

(怪しい……)

 そんな態度に、小春は訝しげな顔をした。


 その日の帰り道で、居た堪らなくなった小春は、純希に相談した。

「考えられるのは、この前、小春を買ったのがバレた、とかかな?」

 話を聞いた純希は、最初に思いついた推論を述べた。

「それって、マズくない?」

 その考えはなかった小春は、真剣な顔で聞き返した。

「専用アプリを見られたら、マズいね」

 専用アプリには当然だが、買(・)え(・)る(・)女性の全リストが顔写真入りで載っている。

 そこに小春がいることが知られたら、問題になるだろう。

「花江に直接、聞いた方がいいんじゃない?」

 純希は提案した。

 事実なら、すぐにでも専用アプリを強制削除してもらわなければならない。

「うん、そうするよ」

 ことの重大性を理解して、小春は強く頷いた。


 翌日の朝の教室で、小春はいつものように登校すると宏の横まで来た。

 そこで、誰も見ていないことを確認してからソッと机の上にメモを置く。

 メモには『放課後、屋上で待ってます』と書かれていた。

「!?」

 それに気付いて、宏はハッとなった。

 慌てて後ろを振り返ると、小春が素知らぬ顔で席に着いているところだった。

「…………」

 前を向いた宏は密かに決意した。


 火曜の三時限目は音楽だった。

 クラス全員が音楽室に移動して授業を受けた。

 そして、休み時間。

 教室に戻ってきた生徒たちは、それぞれ自分の席へと着く。

 小春も同様で、教室の窓際最後尾の席に着いた。

「……?」

 教科書を出そうとした小春は、そこにメモが入っていることに気付いた。

 メモには『僕も話があります。一人で来てください。花江』と書かれていた。

 それを見た小春は、思わず宏の背中を見た。

 宏は緊張で僅かに震えていた。

(どうしよう……)

 小春は思案した。


 そして、放課後。

 小春は悩んだ末、純希には先に帰ってもらうことにした。

「危険だ」

 と、純希は止めたが、宏がわざわざ一(・)人(・)で(・)、と書いたことが引っかかったのだ。

 純希は最後まで難色を示したが、結局、折れてくれた。

 屋上の重い扉を開くと、既に宏が来ていた。

「こんにちは、花江」

「こ、こんにちは……」

 小春がニコリと笑って挨拶すると、宏はいつものようにキョドりながら挨拶を返した。

「話って、なに?」

 小春は意識して笑みを作った。

 そうしないと、心のドキドキが表に出てしまいそうだったからだ。

 それだけ、今日の会(・)談(・)には重要な意味はあった。

「か、加藤の話は……?」

 それに対して、宏はいつも以上にドキドキしているのが見た目でもわかった。

 緊張で身体が震え、さっきから視線が定まらない。

 頬は紅潮して、呼吸も速くなっていた。

「最近、花江の様子がおかしかったから、どうしたのかな? と思って」

 そんな宏の態度に、小春は内心、ヤバいかもと思った。

「もしかして、小夜子を買ったこと、親バレした?」

 そして、ズバリ聞く。

「い、い、い、いや、いや!」

 すると、宏は首をブンブンと横に振って、全力で否定した。

「そ、それはない……!」

「そうなの?」

 それを聞いた小春は、ホッと胸を撫で下ろした。

「じゃあ、あたしの話はおしまい」

 すると、今度は宏の話が気になりだした。

 はっきり言って、予想できない。

「花江の話は?」

 なので、少し警戒しながら聞いてみた。

「じ、実は……」

 宏は言い淀んだ。

「こ、後悔してたんだ……さ、小夜子を買ったことを……」

 それからポツリポツリと語り始めた。

「後悔?」

 意外な単語(ことば)に、小春は思わず口を挟んだ。

「ぼ、僕の好きなのは加藤であって……さ、小夜子ではないんだ……」

 宏の目には涙が浮かんでいた。

「き、教室で加藤を見るたびに……さ、小夜子とのギャップを感じて……そ、それは日に日に大きくなっていったんだ……」

「……」

 宏の言いたいことは、小春も理解できた。

 むしろそう仕向けたのは小春自身だ。

 だからこそ、小春はなにも言えなくなってしまった。

「だ、だから……も、もう一度加藤にお願いしたいんだ……」

 そこで宏は涙を拭うと、顔を上げ、小春の目をしっかりと見た。

「ぼ、僕とつき合ってくれませんか……?」

 そして、意を決して告白する。

「……」

 予想外の展開に、小春の頭は真っ白になった。

「……花江は、あたしがこんな仕事していて、嫌じゃないの?」

 ようやくそんな言葉を絞り出す。

「い、嫌だけど……ど、どうしようもない事情があるんでしょ?」

 宏の問いに、小春はコクッと頷いた。

「だ、だったら、受け入れるよ……」

「……優しいんだね」

 その答えに小春は寂しく微笑んだ。

「でも、ごめんね」

 それから小春は、歌うように言った。

「あたし、好きな男子がいるんだ」

 まるで鎮魂歌(レクイエム)のように。

「多分、あたしが仕事を続けてる間は……ううん、たとえやめたとしても受け入れてはもらえないだろうけど」

 そしてまた、寂しそうな笑顔を見せる。

「それでも、好きなの……」

「そ、それって、つ、塚田?」

「純希は幼なじみだから……」

 宏の問いに、小春は優しい嘘をついた。

「でも、ありがとう」

 小春は優しげな眼差しで宏を見た。

「こんな加藤小春(あたし)を好きになってくれて」

「う、うん……」

 小春に礼を言われて、宏は頷きながらも頭を垂れた。

 瞳から涙をこぼしながら。

 そんな宏の頭を小春は優しく撫でた。


 屋上での用事が終わり、小春は一人、帰ろうとした。

 すると、校門の前で純希が待っていることに気付く。

「小春」

 同時に気付いた純希が手を上げる。

 合流した二人は、そのまま学校を後にする。

「どうだった?」

 純希は恐る恐る聞いた。

「とりあえず、親バレはしてないって」

 小春は一番心配していたであろうことを答えた。

「よかった……」

 それを聞いて純希は胸を撫で下ろした。

「でっ? 花江の用事っていうのは?」

「うーんとね……」

 純希の問いに小春は少し考え込んだ。

「内緒」

 それから、唇に人差し指を立てる。

「えーっ」

 純希は怪訝そうに小春を見た。

「代わりに、今日はサービスするからそれで勘弁して」

 それに小春は笑って答える。

「サービスって……」

 その言葉に純希は冷や汗笑いをするしかなかった。

 そのまま二人は言葉でじゃれ合いながら、帰宅の途についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。