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僕の幼なじみは今夜も知らない誰かに抱かれる(R15版)  作者: 碗古田わん


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十四、小春を買うということ

挿絵(By みてみん)

 あれから一週間が経った。

 週末の金曜日、加藤(かとう)小春(こはる)は休み時間にトイレに行って、教室に戻るところだった。

「か、加藤……」

 と、小春は背中から声を掛けられた。

 振り返ると、そこには花江(はなえ)宏(ひろし)が立っていた。

「ちょ、ちょっといいかな……?」

 オドオドと周りの目を気にしつつ、宏は尋ねた。

「いいけど?」

 小春はいつものフレンドリーな笑顔で応える。

「なに?」

「こ、ここだと、ちょっと……」

「じゃあ、人気のないところに行こうか」

 小春の提案で、二人は階段の踊り場まで移動した。

「こ、これ……」

 そこで宏は、スマホを見せた。

 画面には、専用アプリの会員用メニューが表示されていた。

「夕べ、承認されたんだ」

 宏は少し誇らしげに言った。

「よかったね」

 それに小春は優しく微笑む。

「こ、これって、『小迎小夜子』っていうのが加藤だよね……?」

「それはもう一人のあたしね」

 宏の問いに小春は強調するように答えた。

「今ここにいる加藤小春とは別人だから、そこだけ注意してね」

 そして、釘を刺す。

「う、うん……」

 宏は頷いたが、心の中では、

(そういう設(・)定(・)なのかな?)

 と、思っていた。

「これで第一関門は突破したね」

 小春はニッコリと笑った。

「次は予約競争、頑張ってね」

「えっ?」

 思わぬ言葉に、宏は意表を突かれた。


 そして、日曜の深夜。

 時計はもう直ぐ午前零時を指そうとしていた。

 宏は自分の部屋で、スマホを握りしめ待機していた。

 画面には小春の予定表が月曜日から金曜日まで並んでいる。

 今か今かと待ちきれず、宏はさっきからスワイプ を繰り返していた。

 午前零時なり、小春の予定表が更新された。

「きた!」

 急いで宏は金曜日に予約を入れた。

 だが、

「えっ?」

 既に予定は埋まっていた。

(マズい!)

 慌てた宏は、別の曜日に予約を入れようとした。

 しかし、既にどの曜日も予約で一杯だった。

「そんな……」

 宏は愕然となった。


 翌朝。

 いつものように塚田(つかだ)純希(じゅんき)と小春は一緒に登校した。

「ところで、花江の予約は入ってた?」

 会話が途切れたところで、純希は聞いた。

 宏が会員になったことは、土曜日に二人で出掛けたときに聞いていた。

「ううん、入ってなかった」

 小春のスマホには会員用ではなく運営側のアプリが入っており、いつでも予約状況を確認できた。

「駄目だったか……」

 純希は苦笑いするしかなかった。

「まぁ、あたし、元々予約が取りづらいから」

 小春はノホホンと言った。

「でも、下野の父親は常連だったんだろう?」

「あれは例外中の例外」

 純希の疑問に、小春は肩をすくめた。

「あたしへ執着心は異常だったみたい」

 それは剣(つるぎ)銀治郎(ぎんじろう)に後から聞いたことだった。

「執念が違うのか……」

 その言葉に純希は神妙な顔になった。

「それぐらいじゃないとあたしの予約は無理ってこと」

 それを余所に、小春はケタケタと笑った。

 そのまま純希と小春は、校門まで来て、下駄箱で上履きに履き替えてから教室へと向かう。

 B組の前で純希と別れた小春は、教室へと入った。

「おはよー!」

「おはよう」

「おはよ」

「おはっ」

 いつものように元気よく挨拶すると、教室のあちらこちらから挨拶が返ってくる。

「おはよっ」

 自分の席に向かった小春は途中で宏にも挨拶する。

「お、お、お、おはよう」

 宏はいつも以上にキョドりながら、挨拶を返した。

 その目は赤く、隈もできている。

 いつも以上に俯き、明らかに落ち込んでいた。

(あらら……)

 そんな宏を小春は可哀想に思った。

(でも、こればっかりはなぁ……)


 それから瞬く間に一週間が過ぎた。

 十月も半ばを過ぎて、ようやく秋らしい気候になってきた。

 校内でもブレザーを着る生徒が増えてきた。

 そして、日曜日。

 宏は予約競争に勝つべく、あらゆる手段を講じていた。

 具体的には、PCにスマホの仮想環境を四台作り、自分のスマホも合わせて五台で全曜日をいっぺんに予約できるようにした。

 予約動作も、マクロを入れて自動化した。

 幸い、専用アプリは仮想環境やマルチログインを弾かなかった。

「できることはすべてやった……」

 あとは時間になるのを待つだけだ。

 午前零時になった。

 時間を自動で感知したマクロが一斉に動き始める。

 その画面を宏は期待と不安で身も守っていた。

「月曜日駄目……火曜日駄目……金曜日駄目……」

 だが、結果は芳しくなかった。

「木曜日駄目……」

 宏が全滅を覚悟したとき、

「水曜日……成功」

 宏は、思わず画面を二度見した。

 画面には確かに『予約完了』の文字が映し出されていた。

「やった!」

 宏は小躍りした。

「これで、加藤とで(・)き(・)る(・)!」


 翌朝。

 小春はスマホのアラームにセットしてあった音楽で目が覚めた。

 ベッドから起き上がり、スマホを握ると仕(・)事(・)用(・)のアプリを立ち上げる。

 そして、月曜日の習慣になっている今週のスケジュールをチェックした。

「あっ……」

 そこで小春は、水曜日に花江《はなえ》雄一(しゅういち)の名を発見した。

 宏の父の名だ。

「取れたんだ」

 小春は純粋に驚いた。

 宏が予約を取れたとしてもずいぶん先の話だと思っていたからだ。

 なんなら、一生、縁がないとも思っていた。

「そっか……花江とす(・)る(・)のか……」

 一瞬、小春は素で考える。

「いや……す(・)る(・)のは小夜子だから」

 すぐにこれはお(・)仕(・)事(・)と、気持ちを切り替える小春だった。


「花江の予約が取れた?」

 純希は驚きの声を上げた。

 いつもの通学路でのことだ。

「うん」

「そっか……」

 頷く小春に、純希は神妙そうな顔をする。

「あっ、相手するのは小迎小夜子だからね」

 それを見た小春は、慌てて付け足した。

「加藤小春は、純希だけのものだから安心して」

 それから、念を押す。

「うん……」

 頷きながらも、純希の心中は複雑だった。


「おはよー!」

「おはよう」

 元気よく挨拶して教室に入った小春は、クラスメイトたちと挨拶を交わす。

 そのまま自分の席へと向かう。

「おはよっ」

 その途中で宏にも朝の挨拶をした。

「お、おはよう!」

 すると、宏は先週とは違って上機嫌で挨拶を返してきた。

 自分の席に着きながら小春は、

(よかったね)

 と、思った。


 水曜日がやってきた。

 宏は、ネットで買った濃紺のスーツに白いワイシャツ、それに赤いネクタイを締めて家を出た。

 母親には、友達のパーティに呼ばれたと嘘をついた。

 元々、放任主義で息子に興味のない母はそれを信じてくれた。

(事前に爪を切った。風呂にも入った。歯磨きもたくさんした。今もガムを噛んでいる……大丈夫なはずだ)

 もう何回反復したかわからないチック項目を心の中で数えながら、宏は最寄り駅へと向かった。

 そこから電車に乗って、東京を目指す。

 遅れてはいけないと、時間に充分余裕をもったため、予約の二時間前には指定のホテルに着いてしまった。

 仕方なくロビーの席で時間を潰す。

 華やかな高級ホテルのロビーに居心地の悪さを感じながら、ソシャゲで気を紛らわせた。

 その途中で小春と銀治郎がチェックインを済ませたのだが、緊張から逃げるためソシャゲに集中していたのでそれにはまったく気付かなかった。

 そうしているうちに、スマホに部屋番号の通知が来た。

「よし……!」

 満を期して席を立った宏は、エレベーターへと向かった。

 指定された部屋のある階まで上って、そこで降りる。

 部屋の前まで来て、宏は大きく深呼吸した。

 それから、ドアをノックする。

 緊張して返事を待っていると、程なくしてドアの向こうから声が聞こえた。

「合い言葉を言ってください」

 それは紛れもなく小春の声だった。

「こんにちは、お急ぎですか?」

 それに宏は事前に専用アプリに送られた言葉を継げた。

「別に急いでいませんよ」

「正解です」

 ドアが開かれ、そこには、光沢のある白い長袖セーラー服に紺色のプリッツスカートを着た小春が立っていた。

「か、加藤……」

 緊張と感激が入り交じり、宏は思わず呟いた。

「違いますよ」

 小春は宏の唇に人差し指を立てた。

「今のあたしは小迎小夜子です」

 そして、言い聞かせる。

「う、うん……小迎」

 いきなりやらかしてテンパりながら、宏はぎこちなく頷いた。

「小夜子でいいですよ」

 そんな宏に、小春は優しく微笑んだ。

「う、うん……さ、小夜子」

 宏は、女子を名前で呼ぶことに気後れして噛んでしまった。

「さぁ、入ってください」

 それを気にする様子を見せずに、小春は宏を部屋に迎え入れた。

 いつも元気な小春が、まるで別人のようにおしとやかになっていて宏は躊躇しながらも部屋に入った。

 とりあえず小春は、宏が持っていたバックを受け取り、壁のフックに掛ける。

 それからスーツの上着を脱がすと、ハンガーに掛けた。

「お若いですね……歳は?」

「じゅ、十四歳……」

 小春の質問に宏は、いいのかとも思いつつも本当の年齢を口にする。

「あたしより年上なんですね」

 小春は微笑んだ。

 あと数日で小春も十四歳になるのだが、それは言わなかった。

「同年代の方を相手にするのは初めてです」

 小春は微笑んだ。

「キスしていいですか?」

「う、うん……」

 小春の問いに、宏はカクカクと頷いた。

 そのまま小春は宏に唇を合わせた。

「!?」

 当然のように舌を入れてきた小春に、宏は驚いた。

 しかし、エロゲで得た知識を駆使して、すぐに舌を絡める。

「ずちょ……っ……ズチュっぐちゅっっ……ぐじゅっ」

 淫靡な音が部屋中に響く。

 それだけで宏は股間が熱くなった。

「もう我慢できませんか?」

 それに気付いた小春は唇を離すと聞いてきた。

 宏はコクコクと頷いた。

「じゃあ……ベッドに行きましょう」

 そんな宏に、小春は甘く囁いた。


  ♢♦♢♦♢♦


 結局、若さに任せて五回戦して、制限時間がきた。

「き、今日はありがとう……」

 すでに身なりを整えた宏は、お礼を言った。

「一つだけ、いいですか?」

 同じく身なりを整えた小春が、宏に聞いた。

「な、なに……?」

「今夜のことは、一晩だけの夢」

 応えた宏に、小春は言った。

「明日からは、ただのクラスメイトです」

 歌うように。

「それを忘れないでください」

「ぼ、僕は……」

 その言葉で感情が高まり、宏は涙した。

「ま、また、お金貯める……」

 腕で涙を拭いてから、宏は真剣な目で小春を見た。

「そ、それでまた、加藤を買うから……」

 そして、宣言する。

「そのときは……」

 小春は笑みを零した。

「また、小夜子に会いに来てくださいね」

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