森の中
ゴブリンは生物としては強者に入る。火山や凍土などの、極端な環境でなければ生きていける適応力。人間では死ぬ毒物や腐敗物を食べても問題ない強靭な胃。枝や草程度では傷付かない肌。多産で、成長が速い繁殖力。
欠点としては単純な頭。大人になってもタマキの胸までしかない体格。短い寿命。
それでもバカではない。銃器を作ることこそできないが、落ちているものの構造を理解して、使うことができる。単純な魔術なら使うことができる。体格の不利を理解し徒党を組むことができる。
それでも人間と対等に、亜人などと同じように扱われないのは相容れないからだ。文化が違う。言葉が違う。言葉が通じない山賊のようなモノとしてゴブリンは扱われる。
多くなればなるほど互いに意見を共有し、村を襲い、討伐される。そういったことを様々な場所で繰り返されている。
そんなゴブリンたちは手に太い枝を削った棍棒とカゴを持ち、3匹グループを作って巣の周囲を歩いていた。
ギャイギャイと互いに会話しながら呑気に歩いているゴブリン。時折り草やキノコを見つけてはカゴに放り込んでいる。
「ギャ!」
一匹が上を指差し笑う。そこには木の実が成っていた。毒々しい見た目をした、どう見ても毒がありそうな見た目の実だ。そんなことはゴブリンには関係ない。
ギャイギャイと見つけた者の肩を良くやったと他の二匹が叩き、幾つも成っている木の実を取りに行く。ヒョイヒョイと幹や枝に手を足をかけて登っていく。
そして木の実をもぎ取り下に投げては受け取り、カゴに入れていく。
「ギャギャギャ!」
うぇーいと盛り上がるゴブリンたち。全てもぎ取って後は重くなったカゴを持ち、浮き足だって巣に帰る。
そして、川の岩場を通ろうとした時、
バンバンバン! と言う連続した音で三匹とも殺された。
SGのソードオフ。強烈な殺意と共に放たれた散弾は一匹一発でゴブリンの全身を撃ち抜いた。
岩場の裏から身を乗り出し、タマキは撃ち抜いたゴブリンから目を離さず注視する。ゴブリンの生命力は高い。確実に散弾で撃ち抜いた。それでも当たりどころが悪ければ即死にはならない。ピクリとも動かないことを確認し、最後に一発、撃ってからリヒターに合図する。
「いいよ。今日はこれで終わり」
「合計で10匹か。なんか違和感とかあったか?」
全身鎧を着て、同じく岩場の次裏から出てくるリヒター。
「んー、特に無いかな。最後のやつらはご飯が多く手に入って浮かれてたみたいだし、他のやつらもそんな感じだし」
念の為SGに装弾し直すタマキ。その後討伐の証明として撃ち抜いたゴブリンをカメラで写真に収める。その場で確認は出来ないが乱暴に扱っても壊れにくい事に定評のあるアケミノの人気機種だ。
「メカオークは噂だけか?」
村に着いて数日。話を聞くと、見たと言っているのは1人だけで、他には居なかった。それもハンターではない。ちょっと森に薬草を取りに行ったら鉄色の大きな体を見たらしい。
一日目は森の探索に費やした。だが足跡もゴブリンと思われる小さな物や4足のものしか見つからなかった。
二日目はゴブリンの巣穴の特定。出歩くゴブリンを監視して巣穴まで尾行。巣穴は天然の洞穴を利用していた。浮かれたゴブリンは警戒が疎かになる。全身鎧を着たリヒターでは流石に無理だがタマキには楽な仕事だった。
三日目、つまりは今日だ。外に出たゴブリンを討伐する。昨日、今日と外に出たゴブリンは全部で10匹。つまりは確認できた数としては全匹討伐した事になる。
「後は巣穴の中だな。予定通り俺が中に入ってSGでやればいいか?」
洞穴となるとリヒターの大剣を振り切れない。振らない大剣はただの邪魔な鉄塊だ。銃を扱うならタマキが行くべきだが、不意の遭遇に備えるなら全身鎧のリヒターが良い。
「うん。良いと思うよ。私はライフル持って巣穴の外で待機ね」
「よし。帰るか。日の出で巣穴行くぞ」
本来、強襲なら夜の寝静まった夜に行くべきだ。だが、ゴブリンは小さく、おまけに夜に見づらい緑の肌だ。光の届かない場所からの奇襲が怖い。
ならば外に出たゴブリンが帰らないことを不審に思われて警戒されても、周りの確認がしやすい日が出てる時間帯が良い。それがリヒターとタマキの結論だった。
そうして夜は村に帰り、寝て、万全の状態で巣穴に攻め入る。
油断なくSGを構えて全方位ライトを投げ入れる。
そこには、潰れて血に塗れたゴブリンの姿。そして、
光を照り返す鈍色の鎧、否、曲線装甲を纏った2mは越える大柄な人型。
血に塗れたゴブリン程の大きさの鈍色に光る棍棒を持ち、背を向けて、大きな牙を待つ頭部のみがコチラを向いていた。




