買い物記
日が昇るころには街は既に起きていて、小鳥のさえずり、ではなく車のエンジン音で目を覚ます。
リヒターは全身鎧を、タマキは銃を。それぞれの荷物を持ち、外に出る。
タマキはトラックへ。昔には軽トラと言われていた規格の小さなトラック。SATOU製の型落ちだ。軽というだけあり、小回りがきくこのトラックをタマキは気に入っていた。軽トラックにしては、と付くが馬力が有り、重い荷物もよく運ぶ。リヒターの全身鎧を積んでもよく走ってくれる傑作機だ。
タマキのトラックがリヒターの安宿へ横付けする。リヒターはそれに手を振って答えて、荷物を荷台に載せてから助手席へ。大柄なリヒターには狭そうだ。だがそんなことは口に出さないリヒターだ。
「ありがとう。次は買い出しでいいよね?」
「うん。さっさと買って行こうか」
クラッチを切り、ローギアへ。アクセルを踏み込みながら半クラヘ。落ちる回転数と同じようにゆっくりと動き始めるトラック。
「やっぱ重いね。鎧とリヒター」
「タマキはいつも言ってるよ。それ」
「鎧も重いけど、リヒターも十分重いよ」
「そんなに?」
「そんなに」
雑談しながら街の商業区へ。道は広く取られており、運転しやすくなっている。適当な駐車場に停めて、警備員に挨拶をして、歩く。
「えーと、ポーションと回復薬と食料と弾か」
リヒターが指折り数えてリストを思い出す。
「全部いつも通りの場所で買えるよ」
「んじゃ、さっさと行こうか」
「うん。ポーションと回復薬は多めにね」
魔力の回復用、傷の回復用、タマキの消耗品。全て必要な物だ。特に、ゴブリンの討伐となると弾の消費は激しい。1発で仕留めれても相手が何体もいる。
「あ、ポーションはADのやつにしてね。回復薬は東雲製薬で」
ポーションや回復薬は人によって拘りが強い。性能よりも味だが。タマキはADのマスカット。回復薬は東雲製薬のレモンが好みだ。リヒターは不味くなければなんでも良い。
「はいはい。分かってますよ。飯は? 何がいい?」
「あー、乾パンとかかな。あとレトルトのシチュー」
「分かった」
温かい飯はリヒターも食いたい。だから殆どいいなりだ。
とはいえ1週間もかからず、しかも2人の予定だ。そこまで買い込む必要もない。
さっさと済ませて弾を買いに行く。
弾のことはリヒターにはわからない。
最低限の口径、自分が使う拳銃くらいはわかるがライフルの弾や、ショットガンの弾はよくわからない。
だからリヒターはタマキの後ろに着いていくだけだ。
タマキ行きつけの銃砲店へ。様々な銃が並んでいるがリヒターにはよく分からない。
「おじさん。メカオークに通じる弾ちょうだい」
店番の髭面の恰幅の良いおっさんへ気安く話しかけるタマキ。
「メカオークゥ?オメェの銃じゃ厳しいだろぉ。本当かぁ?」
「本当だよ。それに、万が一だよ。もしもの時は後ろのやつが戦うって」
その言葉にリヒターを見る店番の男。
「ふーむ。まあいい。死んだらそん時だ。オメェの銃ならコイツだな。ただし、1発撃ったら銃身が焼けるからな。赤熱どころじゃないぞ。」
そういって差し出されたのは弾頭が黒く、弾頭周りに赤く刻印が描かれている銃弾だ。
「アイアン・マギ製の120-150マギ徹甲弾だ。これならお前の使い方次第でメカオークの装甲を抜ける」
「いくら?」
「1発10,000E」
「流石に高いねぇ。やっぱメカオーク割に合わないね」
そうタマキは言って、顎に手を当て無言になるタマキ。
「どうすんだ?買うのか、買わないのか」
急かされ、頭を真横になるほど首をひねり答えを出す。
「うん。二発ちょうだい」
「連発すると暴発するかもしれんぞぉ?」
1発目で銃身は焦げ、二発で銃身の破裂の可能性が高い。
「やっぱり命を考えるとね。だいじょうぶ。冷却はなんとかできると思う」
奥の手、というよりは緊急時用の手だろう。ハンターなら大なり小なり用意している。例に漏れずリヒターも。
「そうかい。せいぜい死なないようにな。」
そうして会計を済ませて外に出る。
タマキは買った弾をポーチの中で指でなぞりながら言う。
「買っちゃったよ。高い弾。経費だからその分差し引いてね」
「はいはい。使わないことを祈るよ」
そうして準備は終わり、出発だ。
トラックのエンジンを響かせながら、街を出て依頼の目的地であるアイレン村へ。時折トラックを跳ねさせながら、踏み固められた道を行く。




