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コンビ

 リヒターとタマキ、二人してその日の獲物0だった。獲物は取れなくとも移動費用や食費、宿泊費などなど、金はかかる。だから、二人して酒も飲まず、安い定食を食べていた時だった。リヒターが口を開く。


 「なあ、次の仕事、一緒にやらないか?」

 「なに? いい依頼でもあった?」


 普段二人がしているハンター業は仕留めた獲物そのもので利益を得るものだ。依頼は討伐という部分で利益を得る。それは仕留めても利益にならないゴブリンだったり、良い部品をもっておらず、スクラップにしかならないスクラップドッグだったりだ。それでも害はでる。だからこそ、ハンターにとっては利益になる。


 「ああ。依頼自体はゴブリンの討伐でよくあるやつだ。ただし……」


 一息、おいて水を飲むリヒター。まじまじとそれを見て次の言葉を待つタマキ。人と比べると小さく、群れるゴブリン相手は大剣を使うリヒターにとって相手が悪い。


 「近くにメカオークも出るらしい。だから値段が相場よりも高い」

 「……それってそっちがメインでしょ、普通。なんでおまけになってんのさ」


 ゴブリンは弱い。だからこそ数が多く、よく討伐依頼が出る。値段もそれなりだ。だが、メカオークは違う。生身のオークと違い群れないが、硬い。メカドッグなんて比にならない硬さで、とてもゴブリンとは比べるものではない。


 「ちらっと姿を見たって話しがあるだけで事実かどうかわからない。だが、そんな噂でもみんな受けたがらない」


 そんだけ危ないからな。と続けて言うリヒター。

メカオークは硬く、しぶとく、仕留めづらい。怪鳥のように脳天を貫いても停止しない。本当がどうか定かではないが、記録では体を半分吹き飛ばされても停止しなかったとある。奇跡的にほぼ無傷で仕留められたメカオークを分解した技術者曰く、冗長性が恐ろしく高い、らしい。技術者ではないリヒターやタマキにはよくわからない。

 ハンターが理解するべきなのはとにかく仕留めづらく、割に合わないということだ。


 「これはチャンスだ。ここで名を売ってついでに儲ける。どうだ? やってくれるか?」

 水をおいて首をひねり、考えるタマキ。顎をさすっている。

 「う~ん。普通のオークならともかくメカの方か~。万が一を考えるとな~」

 「……新しい銃、欲しがってたろ」


 それはこのまえ、二人で消耗品の買い出しに行った時だ。トランペットを見る少年のように店先の絵を見ていたタマキ。S&Cの新型魔法後篭式のライフルである【M&L05】だ。前の型よりも軽量化されており、かつ銃身の冷却性能が上がっている。とても高い。

 タマキの顎をさする手が止まる。


 「結構金貯めてたよな。その金と今回の金でちょっと背伸びしたら届くんじゃないのかな~」


 白々しく水を飲みながらつぶやくリヒター。


 「お、お前はどうなんだよ。その金で何買うつもりだ?」

 「俺は鎧を新しくするつもりだ。パーツごとに魔道刻印がされてるタイプ」


 魔道刻印もとても高い。今二人が使っている装備も魔道刻印はされているが、せいぜいが1、2部品の強度がどうしても出せなかった部品にだけ刻印がされる。そのため全てとなるととても贅沢だ。

 今リヒターが使っている全身鎧よりも高い身体強化の魔道刻印で硬く、ブースト魔術もついている。とても高い。

 しばらく黙る二人。周囲は変わらず騒がしいが、二人は少しも音を立てず固まっている。リヒターが最後とばかりに言う。


「万一メカオークがいても仕留める必要はない。逃げればいい」


やがて、タマキが切り出す。


 「うん。一緒にやろう」

 「ああ、よろしく頼む」


 タマキが水のジョッキを前にだす。リヒターはそれに同じく水のジョッキを突き出しぶつけた。



 その足でギルド受付へ行く。受付のお姉さんはどこのギルドでも美しい。そして後ろで睨みを聞かせるハンターを引退した現ギルド職員もお約束だ。


 「はい。確かに。では明日午後から出発ですね」


 受付のお姉さんであるアカリが書類を書く。茶髪でキリっとした顔にスーツは似合っている。とても少し離れた後ろで仁王立ちしている熊みたいな男の娘とは思えない。


 「内容はゴブリンの討伐ですが、メカオークはすでに知っていますね? お気を付けを」

 「うん。いざとなったらリヒターを餌にするから大丈夫だよ」 

 タマキがさらっという。

 「冗談にならないぞ。それ」


 移動手段はタマキのトラックなのだ。なんでもないように言いすぎて本当に置き去りにされそうな凄みがある。


 「ふふ、では生きてお会いしましょう」


 そういって受付を終わり、外に出る。飯を食べ始めたのが夕方で、受付も終了ギリギリだった。つまりは夜だ。街灯が照らす夜、酒場から漏れでる喧騒。タマキとリヒターは分かれて帰路に就く。今日は酒を飲む余裕がなかったが、依頼が終わったら吐くまで飲もう。心に決めて遠ざかる喧騒を背に、一人石畳を鳴らして安宿へと帰っていく。

 

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