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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
スピンオフ・黒猫の冒険編
604/611

ナッチェは告白する

野盗が狙うにはあまりにも得がない農作物。

貨物車には屋根さえなく、防水布で覆うだけ。

隙間から見える小麦袋や根菜の箱。

野盗が無事に念願を叶えた所で、どうやって戦利品を持ち運ぶというのか。


ウィトプラナは真冬以外は至る所に収穫物があるような農耕の街。

今はちょうど作物変更の時期にあたるため、緑の景色よりも土色が目立つ。

小麦には連作障害があり、大豆、稲作を循環させる必要がある。

勿論、全ての農家が同じ作物にならないように管理されており、穀物を扱う農家は他の農家と比べて優遇される。


シャアリィたちの護衛任務、その帰路は穏やかで何事もなくレリットランスに帰還した。

商人の護衛完了を受諾書にサインしてもらい、それをギルドに提出すればクエストは完了。


往復で一人当たり銀貨百七十枚弱(十七万円相当)。

日当で言えば、休日抜きの四日で一日あたり銀貨四十二枚以上。

護衛を専門にする冒険者がいるくらいに実入りはいい。

敵襲がなければ最高のクエストだ。


「おかえりなさい」

「クエスト完了を認めます」

「事務手続きの時間をちょうだいな」


相変わらずの軽さで、受付嬢はナッチェの手から受諾書を受け取る。


「じゃあ、これにて清算完了」


と、目の前に並ぶ金貨と銀貨。

ナッチェの手に金貨三枚と銀貨七十枚が渡った。

ギルドからの帰り道、ファイヤー亭が店を開けている。

営業開始までにはまだ時間があり、ナッチェは英雄たちと視線を合わせた。


「どやされるかも知れないけれど経過報告に行くのです」


シャアリィ、アイシャは絶縁中の身。


「私達は家で待ってるよ」


と、手を振ってナッチェと別れた。


・・・


「お邪魔します」


少しばかり怖気づきながらナッチェが開いた扉から顔を出す。

その声に気付いたオルチェが奥から走って来る。

仕込みの最中のアレックスが顔を上げて、ナッチェを見る。


「うちは日没から開店だよ」

「悪いが出直してくれないか」


アレックスの声は冷淡で、ナッチェは逃げ出したくなった。

オルチェの怒声が飛ぶ。


「アンタ、そんな扱いはないだろう?」

「何か話したいことがあるから来たんじゃないか!」


アレックスの眼光は、オルチェの言い分を破壊する。


「言いたいことがあるなら言えばいい」

「どうするかは別だけどな」


一拍の間を置いてナッチェは語る。


「迷宮に潜りました」

「ご主人や女将さんが言っていた通りの恐ろしい場所でした」

「でも、斥候の仕事をしました」

「今日、キャラバン護衛の仕事から戻ってきました」


アレックスとオルチェが目の色を変える。


「まさか・・・」


その不安をナッチェが肯定する。


「戦いました」

「五人・・・ひとを殺しました」


アレックスが静かに告げる。


「出て行け」

「二度とここには来るな」


ナッチェは俯き、そっと扉を閉める。

目から溢れそうな涙を空を見上げて耐える。

叫びそうな痛みを唇を噛んで堪える。


それでもナッチェの夢は止まらない。


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