表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
記憶を探す旅編
580/611

祝福の古代魔法

――― おふくろの味。


幼い日々に与えられるものは価値観の基準。

それがなければ、良いも悪いも決めようがない。

そして、母親が作る料理は、味覚の標準である。


標準とは平均ではない。

必要にして十分というバランスの上に成り立つもの。

だから、何時までも心に残り続け、愛され続け、安心する ―――


約束の安息日。

そのテーブルに振舞われたのは、少しばかり豪華な家庭料理だった。


ビーフシチュー、ハンバーグ、自家製のパン、そして素朴な器を満たすプリン。

そのひとつひとつは極めて丁寧に作られている。


エレナは言う。


「私達にはシャアリィさんのようなすごい魔法は使えません」

「だから、古代魔法?」

「つまりは自分達が知っている一番古い記憶を頼りにして作ったありふれた料理です」


テーブルに並ぶ料理はインパクトもなく、何処に行っても食べられるものばかりだが、シャアリィとアイシャにしてみれば究極の魔法に等しい。


「なんかね・・・涙が出ちゃうかも」


言葉少なにシャアリィは料理を味わう。

アイシャの反応は更に深い。


「ああ、いいね・・・じわりとくる」

「初めて食べるのに懐かしさのある味だ」

「ほら、この人参・・・星形だよ」

「子供の頃、母がきまぐれ料理を作る時にはこういう工夫をしてくれたんだ」


アレックスやオルチェ、エドワードは、親に見放された子供だった。

それでも、この料理を食べれば懐かしさに胸が痛む。


「ああ、確かにこれはじわりとくるね」


アレックスが隣に座るオルチェに視線を向ければ、


「よく手伝わされたよ・・・でも、手伝った時は不思議と飯が上手かったね」


オルチェにも懐かしさが蘇っているようだ。

エドワードは誇らしげに、


「エレナの味は、きっと、生まれてるくる子供にも伝わるさ」

「あ・・・言っちまった」


エレナは仕方ないねと言いながら、自身の妊娠を告げた。


「まじか・・・耳ありか?耳なしか?」

「生まれてみなきゃわからんか、ははは」


オルチェが顔を顰めて、


「あんた、そこは男か女かだろう?」

「まったく、しょうがないね」


マリウスは目を輝かせて、


「すごいね・・・エレナさん、お母さんになるんだね!」


と、エレナと自分の母、オリビアを交互に見る。

オリビアは、


「そういうことなので、私はプリンを作ることに専念しました」

「この料理はエレナさんの祝福の魔法で出来ているんですよ」


その種明かしは、シャアリィとアイシャにも届く。

二人は自分たちの血を残せない。

でも、それは痛みではなく祝福。


ずっと恋が出来るし、冒険も出来る。

少しばかりせつなくとも、見守りたい存在が増えれば、やるべきことも増えるのだ。


「おめでとうエレナ!」

「もっと早く教えてくれたら、お祝いの品を用意したのに!」


シャアリィがアイシャに目配せすれば、アイシャも、


「ああ、本当に素晴らしい」

「何時もサプライズを仕掛ける側だったらしいが、今日だけはまんまとやられたね」

「私達も又、とっておきのサプライズをするとしよう」


祝福の古代魔法は、受け継がれる。

今は鮮烈な文化の魔法も、いつか、古代魔法へと置き換わるのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ