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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
記憶を探す旅編
555/582

試し斬りの機会

シャアリィはジルノワールに到着するなり、衛兵所に駆け込む。

中継点の街には、ギルドというものは殆どなく、行政の雑用のアレコレは殆ど衛兵所が行っているのだ。


「手紙出してもらいたいんですけど」


と、可愛らしい娘が声を掛ければ、鼻の下を伸ばした中年の男が出来る限りの愛想を纏って手続きを手伝う。

この世界、外見が美しいと様々な得がある。

勿論、面倒事もつき纏うのだが。


シャアリィは、アイシャの記憶喪失について、友人知人に前以て手紙を送ることにしたのだ。

勿論、アイシャの了解は得ている。

面倒な説明を一から十までするよりも、向こうに心の準備をして貰う方がいい。

そうしなければ、毎回、毎回、アイシャも気苦労することになる。


フランコに手紙を送れば、ジョンソンにも内容は届くだろう。

もしかしたら、レオパルドにも伝わるかも知れないが、商会の共同経営者という立場である以上、レオパルドには直接手紙を送るべきだ。


ヴィルテ、アンナ、ミヤマにも、それぞれ手紙を書いた。

レリットランスの面々は、手紙が届く翌日には、街に着いてしまうので、直接、会って話をすることにした。


「笑い飛ばしてくれるといいね?」


と、シャアリィは期待するが、それを出来るのはシャアリィくらいだろう。

皆、空気を読むし、必要以上に心配もする。

それでなくとも、アイシャは皆から慕われているのだから。


・・・


手紙を出し終え、宿を取って二人が休んでいると、なにやら外が騒がしい。


「何かあったのかな?」


普段ならば、面倒事に首を突っ込まないアイシャが珍しく、外を気にした。

幸い、まだ着替える前。

コート一つ羽織れば、それだけで臨戦態勢。


「見に行こうか」


人集りが出来ているのは、カードとダイスの絵が描かれている看板の店。


「殺しだってよ」

「それも、知らないうちに後ろから、ぶすり、だと」

「殺されたのはアーシアンに向かう商人だったらしいぜ」

「あれか・・・例の盗賊ギルド」

「奴らの仕事か?」


シャアリィとアイシャが噂話を集めれば、そこに見えてきたのが『盗賊ギルド』などという信じがたい集団の名前。


「看板も出せないギルドじゃ、儲けなんてタカが知れてるだろうに」


アイシャは、当然のことを口にした。

シャアリィは一考する。

これは、アイシャにとって一つの治療になるのでは、と。


「私達で、壊滅させちゃう?」

「こんなのボーナスゲームでしょ」


シャアリィが物騒なことを言えば、記憶を失っているはずのアイシャも嗤う。


「いいね」

「私も、自分がどれだけ強くなったのか、知りたいと思ってたんだ」

「それを試す相手には打って付けだ」


一日、二日、滞在を伸ばした所で、文句を言われることもない。

シャアリィとアイシャは、衛兵所に立ち寄って、更なる情報集めを行った。


「今晩は、衛兵さん」

「盗賊ギルドとかいう連中がのさばっているんだってね?」

「ちょいと片付けるのを手伝おうか?」


口調は柔らかいが、その内容は傍若無人。


「いや、お嬢さん方に手を貸して頂くわけにも・・・」


体裁を繕い断ろうとする衛兵の眼前に、シャアリィがアーシアンの冒険者登録証を見せつける。


「シャアリィ・スノウ?」

「ド、ドラゴン・スレイヤー?」

「あんたたちが?」


満足そうに頷くシャアリィの横でアイシャが告げる。


「私のも見せようか?」

「まぁ、衛兵さんに頼みたいのは賞金首のリストの公開」

「その中で件の盗賊ギルドなる集団に足を突っ込んでそうな奴を教えてもらいたい」

「いいね?」


質問のカタチではあるものの、アイシャの眼光を見れば、それは命令だ。

こうして業の深い二人の狩りは、中継点の街で始まった。


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