私はアイシャ・セロニアス
こんな形で妹と再会し、それに救われるとは思いもしなかった。
何時も私の真似をしてばかりだった妹は、今や『受難の聖女』。
先代教皇に称号を授けられる程の術式使い。
だが、リーシャはリーシャだ。
私の可愛い妹であることに違いなく、私は私だ。
アイシャ・セロニアス。
武芸の家に生まれ、戦うことだけが目的だった。
それを変えたのは多分、シャアリィなのだろう。
そして、私が忘れてしまった時間が、それを生み出した。
「泊まっていけばいいのに」
というリーシャの言葉は嬉しかったが、今は酒が飲みたい。
忘却の酒ではなく、もう一度、歩き始める祝いの酒を。
「シャアリィ、心配掛けたね」
「きっと、これからも私は無神経にあなたを苛立たせるだろう」
「そして、あなたもまた、私を傷つけることもあるだろう」
「でも、そうやってでも、一緒に生きてくれないか?」
恥ずかしくて面と向かっては言えない。
シャアリィは私のしっぽを優しく掌で包む。
「勿論、一緒にいるよ」
「だって、しっぽはこんなに上機嫌なんだから」
成程、私の相棒は私のことをよく知っているのだな。
どんなに言葉で取り繕った所で、見抜かれていたわけだ。
以前、一度立ち寄ったことがあるという黒猫の看板のバーに入った。
「私達の幸運の象徴は、チョコレートと黒猫だよ」
「レリットランスには、それが揃っている店があるんだ」
「そして、私達の家もあるし、友人たちもいる」
「迷宮踏破者だから、街ではちょっとした英雄」
「素敵でしょ?」
ここから南へキャラバンで五日。
私達がアーシアンを出て、最初に辿り着いた街だと言う。
「それにね?」
「アイシャがグリーンノウズで拾っちゃった黒猫の獣人姉妹の子たちもいるよ」
「お姉ちゃんのエレナはアイシャより一つ年上、妹のナッチェはそろそろ誕生日で十六になる」
「本当に、黒猫尽くしでしょ?」
外国の何処かでは不吉の象徴だと言われているらしい。
私には全く理解出来ない。
猫は可愛いものだ。
シャアリィはくるくると表情が変わるから、見ていて飽きない。
私のような耳やしっぽはないけれど、その金色の瞳はまるで猫のようだ。
「スクリュウ・ドライバーを」
と、私が注文した酒をシャアリィが覗き込む。
「螺子とか入ってるの?」
思わず笑いが零れる。
「旧世界のお酒でね、ウォッカのオレンジ・ジュース割りだよ」
「油田で働くひとが、マドラーの代わりにドライバーを使ってたらしい」
「螺子は入っていないね」
種明かしで興味を失ったのか、シャアリィはカンパリ・オレンジを頼んだ。
「今日は沢山話して喉が渇いたね」
「喧嘩しながらでもいいから、ちゃんと、いろんなこと言い合えるようにしよう」
ああ、本当にその通りだ。
私は新しい命を生きるのだ。
シャアリィ・スノウの相棒であり、誇り高き白毛獅子。
アイシャ・セロニアスとして。




