ドラゴン・スレイヤーに至った道筋
マルシェ・イングリット。
その女の率いるパーティは、実力以上の階層まで進出していた。
絵に描いたようなならず者の寄せ集めのようなパーティだ。
ナセルバに到着し、宿を見つけた私達は夕食前に少しばかり話をした。
件のパーティの謀略によって、マッカーシー・パーティが壊滅したこと。
そしてその発端となった私の妹の竜召喚スキルのこと。
さらには・・・
「私の心臓は消えてしまって、代わりに魔核がある」
と、いうシャアリィの告白。
それは私の心を乱すのに十分だった。
私の妹が発端となり、私のパーティの巻き添えとなって心臓を失ってしまったのだから。
しかし、その全てが解決済みである以上、今更私に出来ることなど、ない。
それでもシャアリィにしてみれば完全に巻き込まれなのだ。
「つまりは、私が仲間全員を失った日に、その巻き添えで氷結したシャアリィを見つけ迷宮から連れ帰れば、あなたは魔人になってしまっていた」
「イングリット・パーティにも、氷結龍にも報復は終わっている」
「私達は二人で氷結龍を倒したドラゴン・スレイヤー・・・」
詰め込めるだけ詰め込んだような冒険譚。
だが、その全てに整合性があり、シャアリィの胸に耳を当てても心臓の音はない。
それを気にすることもなく明るく振舞うシャアリィに苛立ちすら覚える。
「はぁ・・・」
思わず大きな溜息が出る。
他に変わったことはないかとシャアリィに尋ねれば、
「ミヤマ先生が亡くなって、アイシャが大泣きしたこと」
「ロートシルトのおじいちゃんも、召されたこと」
「いっぱいあるんだけれど、多分、南側を一回りしたほうがいいかも知れない」
と、言う。
特に私を混乱させるのが、この数年で出会って親睦を深めた人々だ。
こんなにも様々な出来事があったのに、それを覚えていない私・・・。
シャアリィはさぞ気苦労の連続に違いない。
「面倒になったならば、私のことは気にしないでね?」
「無理に私の記憶探しの旅に付き合う必要はないんだから」
つい、口から出た言葉にシャアリィが激怒した。
「アイシャが記憶を無くすなんて思ってもいなかったけれど、私達の誓いはそんなに安っぽいものじゃない」
「アイシャが私を嫌いで、一緒にいるのが嫌なら仕方ないけれど」
「私は、面倒だろうが、なんだろうが、ずっと一緒に生きるって誓ったんだよ」
「次に、それを口にしたら、本当に怒るからね」
その剣幕に圧され、私は謝ることしか出来なかった。
でも、私自身、悪い事をした覚えもなく、互いのためを思っただけ。
少しぎこちない空気。
正直、マーシー達の死よりも、ずっと重く圧し掛かるのが、魔人化についての責任の所在。
その元凶であるイングリット・パーティに止めを刺したのだから、これ以上出来ることはない。
だが、どのような経緯であれ、二人でなければ成し遂げられなかった復讐。
復讐が終わったから、はい、さようなら、というわけにはいかない。
私はこのままシャアリィと一緒にいて良いものか。
気楽に考えれば、本人が望んでいるのだから、一緒にいるのが適切だろう。
でも、本当に私はシャアリィとずっと生きたいと思っているのだろうか。
今、現状、その答えを言うならば・・・
それは『違う』と、言わざるを得ない。
今の私には、『わからない』のだ。




