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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
記憶を探す旅編
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チョコレート

キャラバンが動きだして早々、シャアリィが自分の鞄に手を突っ込んでごそごそと何かを探している。

可愛らしい目が二、三度ぱちくりと瞬きをして、どうやらお目当ての物を見つけたらしい。

その手にあるのは、銀色の小さな包み紙。


「はい、どうぞ」


と、そのうちの一つを私の掌に置く。

何だろうと包みを解くと、そこにはチョコレートがあった。

ほんの数回しか食べたことのない高価な菓子だ。


「いいの?」


と、思わず聞き返すと、


「嫌になるまで食べてもいいよ?」

「レリットランスに着けば、もっと美味しいチョコレートがあるんだ」


どうやら、私だけでなく、シャアリィも相当に金を持っているらしい。

チョコレートを口に入れると、それはゆっくりと解け、口の中いっぱいにカカオの香りと甘さが広がる。


「美味しい!」


何故か、こみあげてくる懐かしさ、そして目の奥に涙。

あまりの美味しさに涙が流れるなどということがあるのだろうか。

シャアリィは、ハンカチを差し出して、


「やっぱり身体は覚えてるんだねぇ」

「私達の冒険は、楽しい時も、辛い時も、何時だってチョコレートがあったんだ」

「やりきれない時や、頑張らなくちゃならない時、これがあったから耐えられた」


その言葉は心に沁みる。

そうか・・・私はこの味を知っていたんだ。


「アイシャはね、まだ初心者でガキんちょの私にいろいろなことを教えてくれた」

「戦い方から、旅の仕方、駆け引き、知識、あらゆることをね」

「アイシャと会った当時、私は三十レベルそこそこだったのに、今じゃ百七十近い」


・・・?


いろいろなことを考えても、私とシャアリィが出会ってから、五年程度。

たった五年で、百四十レベル?

そんな前例、見たことも、聞いたこともない。


「そりゃ、無茶苦茶ね」

「なんのために、そんな無茶を私達はしたのかな?」


シャアリィの目が少しだけ吊り上がって、


「いずれ、言わなくちゃならないから、言うよ」

「復讐のためだったんだ」

「その相手は、氷結龍」


その魔物の名前を聞いて、私は明確にひとつの場面を思い出した。

真っ白な身体を青い血に汚し、自らの刃がソレを討った。


「っつぅ、ぅ」


頭が割れる・・・だが、この鮮やかな回想は記憶そのもの!

そうだ、私達はたった二人であの化け物と戦い、勝利した。


「アイシャ、大丈夫?」

「アイシャ・・・」


少し目の前が霞む。

しかし、糸口は掴んだ。

私の記憶は取り戻せる!


「少しばかり頭痛と眩暈がするけれど、大丈夫だよ」

「それに、今、私はその場面を明確に思い出した」

「満身創痍の氷結龍に止めを刺したのは、私だ」


シャアリィは大喜びするかと思えば、柔らかな笑顔で私の頭を胸に抱き抱える。


「無理しなくてもいいんだよ」

「うん、アイシャが倒したんだ」

「私達の宿敵をね」

「奴に至るまでに二年半という時間を費やして、私達は復讐を成し遂げた」


復讐・・・誰の、何の・・・?


「アイシャ・・・あのね・・・」

「マッカーシー達は、もう・・・」


音が消える。

その先を耳が受け付けないように。

色が消える。

もう何も見たくない。


でも、閉じた瞳の裏側で、マーシーが叫んだ。


「皆、即時撤退、即時離脱、ここで俺達のパーティは解散だ」


直後放たれたアイス・ランスとフローズン・ダガーの嵐。

ああ、私はパーティを見殺しにして独りで逃げた、んだ。

皆、あの時、あの場所で・・・。


ふらつく視界がゆっくりと定まる。


「そうか・・・マーシー達は、もう、いないんだ」

「そりゃ、こんなにも強くなるはずだね」

「くくっ、そうか・・・」


感情がぐちゃぐちゃになる。

理性が綻んで、暴れたくなる。


「私達が出会った日のことだよ」

「アイシャだけが知っている秘密についても、宿についたら話すね」

「それまでは、ゆっくりと休んで?」

「いつも通り、アイシャが休む時は私は起きているから」


いつも通り。

そうだね・・・その言葉は安心できるんだ。

シャアリィ、私、あなたに甘えてもいいんだよね・・・。


言葉にしない問い。

私は微睡に落ちる。


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