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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
諦めの迷宮踏破編
543/571

最後の冒険

五百三十九年十月十二日。

ザグレブホーン迷宮踏破が認定された。

アイシャ・セロニアス。

シャアリィ・スノウ。

イザベラ・リリィ・シュベルド。

ロザリー・イグシエンヌ。

そして、協力者の名前としてアンソニー・レジータ。


五名の名が刻まれたモニュメントが街の中央公園に設置された。

踏破年金は四パーセントと高額だが、既にザグレブホーンの迷宮に潜る者は数える程しかいない。

踏破報酬の金貨千枚は、パーティに所属した五名で均等に分けられた。

迷宮踏破の証明となったアース・ドラゴンの魔石は領主府が接収。


ソウル・リーパーの魔石には真空斬という物理攻撃スキルが内包されていた。

イザベラはギルドが算定した最低落札価格でアンチ・ブレードの魔石を買い取った。

その額は金貨三千枚、そこにさらに二百枚の金貨を上乗せし、他のパーティ・メンバーはそれぞれ八百枚の金貨を得た。


イザベラとロザリーは、真空斬の魔石の権利を放棄。

シャアリィがそれを受け取った。


アイシャは、この数年の記憶を失っている以外に健康上は問題ない。

ロザリーは新しい銀枠純金十字を授与され、大司教となった。

だが、その身から失われた二十レベルもの経験値、そして瞬間的に刻まれた五年という歳月により、大メイスを自在に操るだけの能力を喪失した。


「最後の冒険に行ってくるよ」

「アイシャを少しの間、お願いね?」


アイシャをイザベラの屋敷に残し、シャアリィは、一人、ザグレブホーンの未踏破玄室に挑む。


・・・


アイシャは確かに傍にいる。

だが、それはシャアリィと出会う前のアイシャ。

何時も申し訳なさそうに、シャアリィの後を追う気弱な少女。

これからどうするか・・・。


話さなければならないことが沢山ある。

マッカーシー・パーティが全滅し、ランドウ・ミヤマが召されたと知れば、アイシャの哀しみは相当だろう。

自分と成した数々の冒険は信じて貰えるだろうか。

レリットランスに家があることや、ザック・パーティとの付き合い、エレナ、ナッチェ、フランコ、アンナ、レオ、ジョンソン、数々の友人たちとの縁。


今は思い出せなくても、何時か思い出す日は来るのだろうか。

そんなことを考えれば、ただ、自分を傷つけたくなる。


「折角、拾った命なのに、私はなんで迷宮に潜るんだろう」


音の無い胸がきりきりと痛む。

その答えを探すべく、シャアリィは玄室の扉を開ける。

運が悪ければ、そこが自分の死に場所。

残り五つの転移陣。


もしも、その先に迷宮がまだ続いているのなら、また、アイシャと共に冒険がしたい。


――― 冬の迫る北の大地。


そこにあるのは『諦めの迷宮』と呼ばれた古代迷宮。

シャアリィは思う。

何かを失う前に諦めることを覚えるべきだった、と。

だが、そうはならなかったし、今すぐにでも引き返すことも出来る。


『好き勝手やって、好き勝手に生きて、好き勝手に死ね』


その言葉を思い出して、ふふっと嗤う。


「ああ、そうさせてもらうよ」


金色の瞳が涙で光った。






氷結のシャアリィ

諦めの迷宮踏破編 終幕 ―――


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