勝利と引き換えに
氷結精霊の名残りは粉雪となり、動かないアイシャ、シャアリィ、イザベラの身体に白く降り注ぐ。
・・・
ロザリーは絶叫する。
「起きろぉおおおおおお!」
「目を開け、私を見ろ、頼む・・・」
石化の呪いから解かれたイザベラの顔色に赤みが差し、その手首から脈動が伝わった。
シャアリィはぼんやり目を開け、虚空に向けて掌を差し出す。
「アイシャ・・・何処にいるの・・・」
何時もならば、すぐに自身の掌を握り返す少し体温の高い掌は現れない。
力なく伸ばした手が床に落ちる。
ロザリーが再びアイシャの元に奔り、耳元で戦士の名を呼ぶ。
「アイシャ、起きろ!」
「シャアリィが待ってる、お前がいなくなってどうする!?」
「シャアリィが!シャアリィが、待ってるんだ・・・」
「起きてくれ・・・」
力を失った瞳から流れた涙・・・それは死の兆候。
ロザリーは、胸元の銀枠純金十字を外し、アイシャの胸元にそれを置く。
「召される狭間の御霊よ、私は祈ります」
「この者にもう一度、神の庭たる美しき世界を見せ給え」
「理を覆す対価には、黄金」
「リザレクション!」
凡そ二十レベルに近い経験値と五年もの寿命を捧げ、それでも尚、成功率五割にも届かない禁呪。
静寂が続き、落胆の溜息を零そうとした刹那。
轟く雷鳴と視界を覆う閃光。
深緑の瞳に生命の光が戻る。
それと引き換えにがさがさになった唇で、ロザリーが祝福を告げた。
「お帰り・・・アイシャ」
「シャアリィが待ってる」
「肩を貸そう、あそこまで歩くんだ」
よろける足取りで肩を貸し合いながら、アイシャとロザリーが愛しい者の傍に辿り着く。
呆けるアイシャは、まだ死の余韻から覚め切っていない。
「シャアリィ?」
まるで知らない名前を口にするように不慣れな言葉。
だが、それでも自分がしなければならないことを理解しているかのように、白い少女は琥珀の少女の手を握る。
覚えていない・・・でも、この手の冷たさは・・・心地よくて、何故か懐かしい。
ロザリーは立ち竦む。
冒険の果て・・・これがその答えならば、天罰なのか、と。
満身創痍の四人は、そのまま、暫く動けずにいた。
・・・
イザベラが目を覚まし、シャアリィも徐々に覚醒する。
土埃は降り注いだ雪で泥になり、白銀のハーフ・プレートも、聖衣も、戦装束も分け隔てなく汚した。
虚ろな眼差しのアイシャを抱き止めながら、シャアリィは懸命に涙を堪えている。
自問自答。
何故、私たちは冒険をすることを選んだのか。
味気ないチョコレート・・・たった、それだけの思い付き。
人が羨むものを持っていながら、馬鹿にも程がある。
だが、それを否定するように、土石龍の魔石は美しい純白色。
その輝きだけが、勝利の証。




