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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
諦めの迷宮踏破編
541/571

混戦

アース・ドラゴンは、上級術式さえ封じれば他のドラゴンよりも弱い。

だが、その体力に限って言えば、どのドラゴンよりも強い。

飛ぶための羽根を持たない代わりに、足は一対、つまり二本、多い。

それは重心の安定と、物理攻撃力を底上げする。

どんな場合でも四本の脚は体勢を維持し、短い首は太く頑強。


腹や気道という弱点を晒さない鉄壁の竜。

だが、その土石龍にすら防げない弱点がある。


『眼球』、『口内』、『鼻腔』


そのいずれかに強力な攻撃を加えたならば、それは脳に届く!

しかし、アイシャの鵺斬も、イザベラのレイピアも、それを成すには短か過ぎる。

土石龍の体格に比すれば、まるで針のようなものだ。


「シャアリィ、テンカウントだ!」

「これだけ暴れてもこの玄室はびくともしない!」


アイシャが砲撃を提案するが、シャアリィはそれを拒否した。


「それは無理!」

「チャージ中に奴の術式が来れば、無事では済まないよ?」


土石術式は見た目は地味だが、その実、凄まじい破壊のエネルギーがある。

初級術式のストーン・バレットでさえ、致命傷になり得るのだ。


「じゃあ、どうする?」


半ば指揮を放り出したアイシャに、イザベラが吠える。


「使える手を探るしかないさ!」


迫りくるドラゴンの左手の攻撃を躱し、その横っ面にシールド・バッシュを叩き衝ける。

ドラゴンの爪が割れ、青い血が飛び散った。

しかし、イザベラの盾も無事ではない。

目に見える程の大きな凹み。


「貫け!」


追い討ちをかけるのは、シャアリィのアース・ランス。

見えない腹に突き刺さる土石槍。

唸り声を上げてアース・ドラゴンがシャアリィを追う。


意を決したアイシャが、アース・ドラゴンの背に飛び乗り、頭部目掛けて走る。

そして鵺斬を逆手に持ち、土石龍の右の眼球を抉る!


激しく身体を揺らしアイシャを振り落とそうとするが、アイシャは全身の力を両手に込め、それに耐える。

土石龍は背中のアイシャを押し潰すべく、地面に腹を晒した。

その瞬間を見逃すシャアリィではない。


「薙ぎ払え!」


気道から顎の直下に至る短い距離をエレメンタル・バーストが貫く。


「ギョギョエエエエエエエエエエィギャゥ」


致命には至らないが、相当の傷を負わせることには成功した・・・。

シャアリィは仕切り直すように距離を離し、アイシャの姿を探すが見当たらない。

土石龍の身体の向こう、血塗れの戦士が横たわる。


「ロザリー!」

「アイシャに治癒を!」


その叫び声で覚醒したかのように、土石龍の背にぎょろりと巨大な目玉が出現した。

その目がイザベラを睨んだ瞬間、イザベラの身体が硬直する!


「石化の魔眼か!」


このまま一撃を受ければ、イザベラの身体は砕け折れる!

シャアリィはイザベラの前にたちはだかり、暴挙に出た。


「トゥエンティ・カウント、チャージ開始!」


十秒でさえ凌げるか危ういこの場面で、捨て身の選択。

アイシャの治癒を終えたロザリーが、イザベラの前に立つシャアリィを守るべく両手にメイスを構える。


「クエイクが来たらお陀仏ね」

「でも、飛び道具なら、凌いで見せるよ!」


若草色の瞳も狂気に染まる。

玄室内に吹き荒れる魔法風は、間違いなく二十カウントの暴風。

巻き上げた瓦礫の竜巻が、まるでシャアリィ達を守るように土石龍の行く手を塞ぐ。


「七・・・六・・・五・・・四・・・三」


真空刃が土石龍の身体に届き、無数の傷を負わせるが、その緩やかな行進は止まらない。


「二・・・一・・・砲撃!」


まるでロザリーが何時も口にする『神のご加護』とやらの力か。

暴挙の二十秒が、破壊に転じた。


自身の身体に比すれば狭すぎるこの玄室で、アース・ドラゴンの逃げ場はない。

距離十メートルという位置から放たれた無慈悲の氷塊が土石龍の上半身、そして背中の目までも瞬時に氷結させ、直後、それは砕ける。


ふらりと揺れて、シャアリィの身体が瓦礫塗れの床に落ちた。


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