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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
諦めの迷宮踏破編
540/570

最後の扉は運次第

翌日、残り一つの玄室。

立て続けに引いた悪辣な魔物とは違い、そこにいたのはラミアだ。

数こそ二十体を越えていたが、乱獲としか言えない戦闘。

アイシャは相当に引きが悪いらしい。

シャアリィが笑いながら、アイシャに玄室選びをさせないように、と、忠告した。


十五階層に残る転移陣は六箇所。

この迷宮の規模はアーシアン迷宮二つ分に相当する程に広大だが、どうにも八階層が一つの区切りであるように思える。

八階層の一箇所を除き、ランダム転移陣はここまでない。

前半と後半を隔てるように存在するならば、十六階層が最終階層ということになる。


六箇所のうち、ロザリーが選んだ転移陣。

どうやら『当たり』の気配が漂っている。

十五階層で踏んだ転移陣は青色であったのに、着いた転移陣は赤色・・・。

その仄かな光は、危険を想起させる発光。


一直線に伸びる通路の先に、ひとつだけの玄室。

アイシャ・パーティの面々は息を飲む。


「どうやら、当たりの気配だね」


イザベラの表情が硬くなる。

ここが当たりだとしても、それを証明する方法は結局、全域踏破しかない。

シャアリィは気楽に、


「じゃあ、行こうか」


と、既に戦闘モード。

いよいよか、と、ロザリーの表情も強張る。



――― その玄室の扉には竜のレリーフが彫られている。


中を見るまでもなく、この規模の迷宮であればいても不思議ではない。

それが、どの龍なのか・・・。

最悪なのは火炎龍だ。

アイシャ・パーティの中で、火炎龍のブレスに耐えられるのはシャアリィだけ。

それは賭けにすら値しない。

では、他の竜ならばどうか・・・。


最悪ではないものの、やはり討伐は困難を極めるだろう。

氷結龍であるならばアイシャ・パーティに分がある。

イザベラ、ロザリーも長い時間、ザグレブホーンで狩りをしているのだから、最高水準に近い氷結耐性は得ているはず。


アイシャが指示を出す。


「中にいるのが、氷結龍か土石龍ならば討伐可能だ」

「風雷龍ならば相当に苦しいが、まだ勝負になる」

「が、火炎龍だけは無理だ」

「火炎龍を引き当ててしまった場合には、皆、転移陣に奔れ」

「いずれ火炎耐性を手にする時まで勝負はお預けだ」


如何にシャアリィであろうと、勝てない相手に挑むわけにはいかない。

ジャミングを駆使したとしても、ブレスは阻めない。

溶解した床、赤熱する壁に囲まれては人間は生存できないのだ。


「さぁ、イザベラ開けてくれ・・・」

「私はどうにも引きが悪いんでね」


アイシャは扉の開封をイザベラに委ねる。

手を翳せば、ゆるゆると二度、三度、扉が揺れて、ゆっくりと開く。

そして、イザベラのサファイアの瞳が捉えた姿は、


「アース・ドラゴン!」


その声に呼応して、シャアリィが玄室に足を踏み入れた。

直後壁から伸びてくる無数のアース・ランス!


「壊せ!」


それをジャミングで打ち砕き、四人が土石龍と対峙する。

龍が二度、三度、首を横に振れば、床が軋みを上げて波打ち四人の足場を崩す。

その刹那、再び、シャアリィのジャミング!


上級術式クエイクをも粉砕し、その瞳には妖しい光、そして口元には禍々しい笑み。


「アイシャ、粉塵ブレスが来たらハリケーンで相殺してね」


アイシャもまた禍々しく笑い、


「ああ、皆、擦り傷くらいは勘弁してくれ」

「呼吸出来ないよりはマシだ」


言ったばかりの粉塵ブレス。

六節詠唱では間に合わず、アイシャが彗星棍を振り回し周囲の空気を撹拌する。

緩和されたとは言え、口と鼻腔に入り込む微細な砂粒の不快感が気道にまとわりつく。

上品ぶっている場合ではなく、面々は砂混じりの唾を吐き出す。


「こりゃ、乙女の天敵だね」


口元を聖衣で覆い、一人難を逃れたロザリーが冗談を言えば、


「ああ、使用人には見せられないね」


と、イザベラも笑う。


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