落胆の帰路
イザベラは酷く落ち込んでいた。
又しても自分がパーティの足を引っ張ったのだ。
小石に躓いたら、その拍子に、口から零れてしまいそうな言葉がある。
(もう勘弁してくれ)
だが、その言葉を懸命に噛み殺しながら、一歩一歩を踏みしめる。
この一歩はシャアリィが命を賭して拾った一歩だ、と。
アイシャ・パーティの面々も、少しばかり口が重い。
シャアリィのリバース・ボディを目の当たりにした衝撃もあるが、それよりも、ダガー一本で腐敗の呪いの武具、しかも、アイシャさえも凌ぐ達人に飛び込む気迫。
狂気と言えば一言だが、その狂気は計算の上で戦術として成立しているのだ。
即死以外はただの傷と言わんばかりの行動は、理解不能。
ロザリーは、シャアリィという少女が恐ろしい。
アイシャの背中で意識を取り戻したシャアリィが、すんすんと匂いを確かめる。
それに気付いたアイシャが、
「立てる?」
と、問うが、シャアリィは、
「立てない」
と、甘えた声で返す。
アイシャはシャアリィを背負ったまま、器用にポケットからチョコレートを取り出し、シャアリィの鼻先にそれを見せる。
ぱくんと音を立てて、シャアリィがチョコレートを口に入れれば、イザベラもロザリーも笑うしかなかった。
代わる代わる、頭を撫でられてシャアリィは上機嫌。
「無茶してごめんね」
と、言葉にすれば皆が、それを受け入れる。
シャアリィという少女は不思議だ。
四人の中で一番小さな身体、そして一番年下。
その頭の中で考えていることに、理解の及ばないこともある。
だが、こうして見れば、普通の少女と何も変わらない。
柔らかな髪も、バランスの取れた体躯も、可愛らしい声も、笑顔も。
甘やかしたくなるような条件を満たしている。
「なぁ、アイシャ・・・」
「こいつと一緒にいて大変だと思うことはないのか?」
その率直過ぎる問いに、アイシャは笑う。
「大変だよ?」
「最初から、今まで、ずっと大変続きさ」
「でも、私達は誓ったからね・・・ずっと共にあると」
シャアリィはまた、すんすんとアイシャの髪の匂いを嗅ぐ。
「もう、汗臭いからやめてよね?」
と、アイシャが言えば、シャアリィはにへらっと笑って答える。
「そんなことないよ」
「ふわふわでお日様の匂いがするもん」
「猫のお腹とちょっと似てるね」
イザベラは自分の苦悶など忘れてしまいそうになった。
前向きに捉えるならば、シャアリィがいることで道が開けているのだ。
道なき道を進む。
それは冒険者の本懐だろう。
「アンソニーには説教をしていたが、私もまだまだだな」
「シャアリィの考えていることがわからない」
「だが、それはわかろうとしていなかったからだろう」
「少しばかり恥じているよ」
「私は怖気づいてばかりいた」
「次こそは、面目躍如といきたいね」
ロザリーが笑う。
「得意、不得意があるからパーティを組むんだ」
「琥珀にだって出来ないことは沢山ある」
「イザベラも、為すべきことを為す」
「私も」
アイシャが綺麗に纏める。
「私達はパーティなのだから、ね」
その言葉に皆が救われる。
迷宮踏破までは、まだ試練があるだろう。




