一流の証拠
パーシモン・パーティが解散され、アルゴ・パーティは残ったメンバーを積極的に受け入れた。
ミアボルト、オーベルクは専業のタンクには至らないものの、その役割を十全にこなし、アイシャ・パーティに遅れること三階層、つまり十二階層まで進出した。
だが、十二階層ともなれば、徘徊性の魔物でさえも手強い。
得られる魔石は上質だが、その危険性との釣り合いも妖しくなってきた。
玄室に入れば、それ以上の凶悪な魔物と遭遇し、魔力ロックが切れるまでの時間粘っての撤退も増えた。
リーダーのアルゴがメンバーに告げる。
「俺たちの実力じゃ、ここいら辺りが天井だ」
「運よく最下層、最終玄室の扉の前に辿り着いたとしても、待ち受けるのは死」
「腹立たしいが、奴らはさらに奥に行ける程に強い」
「踏破パーティは、今日で解散しよう」
「迷宮が消えてなくなるわけじゃないさ」
「自分たちの身の丈にあった場所で、牙を研ぐ必要があるってだけだ」
それは英断。
短剣使いでありながら、敵と正面からやり合う狂気の男に残った理性。
ティガー・アルゴは間違いなく一流の冒険者だ。
賑わう山鳥亭に、奇しくも揃った迷宮攻略者たち。
「よう、イザベラ」
気軽にアルゴはアイシャ・パーティのテーブルの一席に座る。
ロザリーだけが無遠慮な男に眉根を寄せるが、他のメンバーはそうでもない。
「おや、突然どうした?」
と、イザベラが返答すれば、
「俺たちは店仕舞いにするわ」
「片道切符じゃ、酒も飲めなくなるんでね」
「あとは、お前さん達に任せた」
「応援半分、やっかみ半分」
「尻に火ぃ点けてもらったこと、感謝してるぜ」
「お蔭でここんとこ、少しばかり稼ぎもあったからな」
イザベラは自分の麦酒のジョッキをアルゴのジョッキにぶつける。
そして、カウンターに屯するアルゴ・パーティの面々に声高らかに告げた。
「引き際、潮時、それを知っているのが一流の証拠さ」
「私からの餞別だ」
「今日のお前たちの飲み食いは、私が払おう!」
カウンターのテーブルに打ち鳴らされる麦酒のジョッキ。
早く注げと店員がとばっちりを食う。
「俺様も相当やれると思ってたんだがねぇ」
「お前らときたら底抜けだ」
「最早勝てるのは、飲み比べくらいだぜ」
ロザリーが、その挑戦受けたとばかりに、
「ほう、飲み比べで私に勝てるとでも?」
「ラムでも、テキーラでも、持ってくるがいい」
「値の張るスコッチはイザベラに叱られるがね?」
アイシャとシャアリィは笑いながら、アルゴとロザリーの飲み比べを煽る。
「ロザリー、アイシャ・パーティは酒場でも最強だと思い知らせてやれ!」
口角を吊り上げロザリーが嗤う。
「勿論さ」
「私が酔い潰れる所を見たことがあるかね?」
シャアリィは既にほろ酔い、満腹で、カシューナッツを齧りながら、
「平和な争いだねぇ」
と、それをぼんやりと眺めた。




