アンチ・ブレード
『アンチ・ブレード』の有用性が最も高いのは、イザベラだ。
だが、他の三人にとっても有益なスキルであることは間違いない。
特にシャアリィにとって物理防御力二割上昇は、生死を分ける接近戦の負担を軽くする。
「悩ましいね」
と、皆が口を揃えるが、実際には半ば誰が所有するべきか決まっている。
「イザベラが使うなら、言い値でイザベラに売ろうじゃないか」
と、アイシャが言えば、シャアリィもロザリーも首を縦に振る。
イザベラはアイシャの即断に瞠目しながらも、後のことを考える。
「この冒険が終わるまで保留にしないか」
「これ以上の魔石があるかもという欲ではないよ」
「私はこの魔石を買えるならばオークション最低落札価格以上を必ず用意するし」
「他の魔石の権利は当然放棄する」
「これが突出して価値のある魔石だった場合、くじやパーティ内オークションというやり方もあるだろう?」
「これはメンバー全員のもの、きみたちに損をさせたくはない」
ロザリーは快く承諾し、シャアリィもアイシャも当然、受け入れた。
それを見て、イザベラは心を軽くしたのか、
「ありがとう」
「まさか、こんなとんでもないモノを得るチャンスを貰えるとは思いもしなかったよ」
「残りの冒険も、俄然、やる気が出るというものさ」
アイシャ・パーティの面々は、受付嬢とギルド・マスターに口留めをする。
迷宮の宣伝にはうってつけだが、問題は魔物の強さだ。
それは相性というものまで含めての。
達人揃いで尚且つバランスの取れたアイシャ・パーティでなければ仕留められなかった魔物だけに、他のパーティが遭遇すれば全滅必至。
迷宮踏破以上の価値があるとなれば、それでも挑んでしまう冒険者も出るだろう。
「そうですね・・・確かにとても価値がある魔石ですが、命とは比べようもありません」
と、受付嬢がギルド・マスター、ヒューリー・ウラカンと視線を合わせれば、ウラカンも又、
「所有者がそう言うのであれば、ギルドは沈黙を守るさ」
つまりは、鑑定結果そのものを公表しないことを約束した。
・・・
魔石の所在は、冒険者ギルドから商業ギルドの貸金庫に移される。
この街で最も堅牢な場所と言えば、火災にも耐えうる商業ギルド大保管庫。
シャアリィがぽつりと零す。
「アンソニーにも、売り上げの一部をあげたいんだけど」
と、言えば、皆は当然、同意する。
「あの時点で、あそこにいたのだから当然の権利さ」
「そうじゃなきゃ、こんな物騒な連中とパーティを組んだ甲斐がないじゃないか」
それを聞いてシャアリィの顔が綻ぶ。
「良かった・・・皆、ありがとね」
四人はいつも通り、山鳥亭に向かう。
少しばかり早くなった落日と、まだまだ下がらない気温。
今日も麦酒で喉を潤すために。




