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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
諦めの迷宮踏破編
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愚者

翌日、アンソニーは冒険者ギルドに現れなかった。

寝坊かと一時間程待ってみたが、姿を現すこともなく・・・。


「ルビーの件で厄介事に巻き込まれたかな?」


と、ロザリーが口にした。

イザベラもそう考えて、アンソニーの自宅へとパーティ全員で向かうことにした。


「アンソニーは、いますか?」


というシャアリィの問いかけに、アンソニーの母が答える。


「昨晩から戻っていません」


それを聞き、アイシャが状況を整理すれば、何が起きたのかは断定出来た。


「冒険者の誰かが、アンソニーを攫ったということだろう」


当然、最も疑わしい相手と言えば、パーシモンだ。


・・・


ギルドでパーシモンの行方を問えば、アンソニーと同じく、今日は姿を見ていないという返答が返ってきた。

ここまで来れば、アイシャ・パーティは形振り構わず情報を集め出す。

その様相は山狩りそのものだ。


「パーシモンを発見次第報せろ」


イザベラが私兵を動かし、ロザリーも又、教会の騎士たちを動員する。

突き止めたのは半ば朽ちた廃屋、使われなくなった貴族の別邸だった。


正面玄関を開け放つと同時、玄関に仕掛けられていた爆薬が炎を上げる。

吹き飛ばされた衛兵は重傷。

屋敷の中からパーシモンの哄笑が響く。


「シャアリィ・スノウ!」

「その気になったから、掛かってやったぜ!」

「ほら、来いよ・・・他の奴がきたら遠慮なく屋敷の爆薬を使うぞ!」


残暑の日差しがまだ残る空が火薬の煙で黒く染まる中、シャアリィは歩き始める。

扉を無くしたエントランスには、拘束されたアンソニーと愚かな誘拐犯。


「大人しく俺に殺されろよ」

「そうでなきゃ、こっちの小僧から串刺しだ」


禍々しく目を見開いたパーシモンが叫ぶ。

シャアリィはただ無言で杖も持たずにエントランスへと足を踏み入れる。


「シャアリィ!戻れ!」

「否、全員、突入!」


イザベラが号令を発した直後、屋敷の二階の通路が吹き飛んだ。


「他の奴は黙ってみてろ!」

「次に動いたら、小僧の身体に風穴が空くぞ」


ロザリーは、面白くもなさそうに呟く。


「馬鹿が・・・」


既に皆が理解している、パーシモンの命は後数分だ、と。

シャアリィが嘲笑う。


「これだけ準備するの、大変だったんじゃない?」

「私を殺す?」

「寝言は寝ていいなさいな?」


ミアボルトが群衆の中から現れて、シャアリィに縋る。


「やめてくれ・・・あいつは可哀想なだけだ・・・俺が説得する」

「頼む、殺さないでくれ」


シャアリィは吐き捨てるように告げる。


「生かしても、放火、誘拐、殺人未遂・・・死刑だよ?」

「それにあいつは自分から死を望んでいるじゃない?」

「私の行く手を遮るっていうのは、そういうことでしょう?」


シャアリィの冷酷な死刑宣告に、パーシモンが怒声を上げた。


「上等だ、やってみろよ」

「その前に後悔させてやらぁ!」


手に持つ槍をくるりと回し、パーシモンは躊躇することもなく、アンソニーの脇腹に突き刺した。

くぐもった呻き、だが、アンソニーは悲鳴を上げない。


「おらっ!女狐に助けを請え!」

「お前の代わりに殺されちまうって泣き喚け!」


その瞬間・・・琥珀の魔女はパーシモンの視界から消えた。


「閉ざせ」


それは執行の合図。

再びその姿を視界に入れた時、パーシモンの視界が黒く塗り潰された。


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