宝石の輝き
初日の成果を携えてアイシャ・パーティが帰還する。
イザベラの変わり果てた装備を見て、皆が絶句。
だが、その健在ぶりには喝采が起きる。
「予定通り、クリスタル・ゴーレムを討伐したよ」
「魔石の鑑定を依頼したい」
イザベラが差し出した紫色の魔石の大きさに、そこにいる者全てが目を奪われる。
「これ・・・本当に魔石なんですか?」
受付嬢がそう疑うのも無理はない。
イザベラのガントレットの拳と同じような大きさの紫色の鉱物。
これが魔石であるならば、その価値は金貨数千枚にも達するだろう。
勿論、それは術式が封印されていればの話だが、この魔石に限って言えば、十割近い確率で封印術式は存在する。
今まで何度も極上の魔石を手にしてきたシャアリィとアイシャの見立てなのだから。
「あと、土産はこれだ」
アンソニーが自らのナップサックから、鷲掴みのルビーを換金皿に置く。
「宝石・・・ルビー!」
そして、ナップサックをテーブルに置く。
ごろごろと溢れるルビーの塊に、皆が腰を抜かす。
「こんだけあると、最早石ころだな」
と、誰かが笑ったが、実にその通りだ。
イザベラが気前良く、
「皆に一粒づつ進呈しようじゃないか、我々の勝利の記念品だ」
大きな塊は、指ニ本分程もある・・・他の街で売れば金貨数十枚の品だろう。
しかし、これだけの量が流通すれば、あっとう言う間に価格は下落する。
この品で利益を得たいならば、時間との戦いだ。
「おい、ルビーはこれっぽっちじゃないんだろう?」
ゴーレムを倒して手に入れたのだから、と、誰かが気付けば、皆の目の色が変わる。
「ああ、現地にはルビー結晶化した骸があるな」
「明日一日くらいは保つだろうが、明後日くらいには迷宮に取り込まれて消えるさ」
「場所は、当然、クリスタル・ゴーレムの玄室」
「欲張り過ぎて魔物に食われないようにな?」
ギルド関係者は、すぐに宝石を扱う店に伝令を走らせた。
大量のルビーが持ち込まれる可能性が高いから、買い取り値段には十分に気を付けろと。
二級品のルビーは、明日になれば屑値になる。
だが、一級品のルビーは逆に値を上げることになるだろう。
宝石商にしてみれば、とんだ、とばっちりだ。
そんな景気の良い話にも興味を示さない男が一人。
「土産?宝石?だと!?」
心の奥底で燃え上がる仄暗い感情。
それは紛れもなく憎悪であり、激情であり、破滅さえも恐れぬ憤怒。
だが、悲しいことに矛先は余りにも強過ぎる。
『その気になったら何時でも掛かって来るがいいよ?』
少女は美しい顔で確かにそう言った。
繁華街とは言い難い街の中央の道を男は走り抜ける。
ただ、闇雲に海岸に向かって駆ける。
ここまで来たならば、誰にも叫びは届きはしない。
「ぶっ殺す・・・」
「さぞかし沢山の花が飾られ、皆が泣いてくれるだろうなぁ」
「だが、その墓石さえ蹴り砕いてやる」
英雄の光は平凡な男の人生を奪う。
自分が英雄になれないならば、『英雄殺し』に、なればいい、と。




