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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
諦めの迷宮踏破編
525/572

水晶の巨人の討伐

三度目のコラプション。


「ギィイン・・・ギギギギギ・・・ギャギャギャギャッ」


まるで悲鳴のような音がクリスタル・ゴーレムの左半身から響く。


「がらん」


と、転がったのは、巨大な左腕の指のない拳。

捻じ曲がってもまだ動きを止めない水晶の歯車が、その開いた隙間から見える。


それは、イザベラ達にとって福音。

ここまでの攻撃が大きなダメージを与えているという証拠。

士気はあがる。


しかし、ゴーレムも又、一段階凶悪さを増す。

黄色い目はオレンジ色となり、透き通っていた水晶が赤く染まる。

それは単体進化。


水晶の巨人はさらなる硬度を持つジュエル・ゴーレムへと変わる。

鋼の武器でも、なんとか傷を入れることが叶っていた身体の硬度が増せば、最早、斬撃によるダメージは期待出来ない。


「ルビー結晶化・・・なのか?」


もしも、最高硬度を持つ金剛石へと変化したならば、打撃でさえも通るかどうか・・・。

ただ一人、シャアリィは赤く染まるゴーレムを見て、喜びの声を上げた。


「どでかい宝石だよ!?」

「ぶっ壊して持ち帰れば大金持ちじゃん!?」


何処までもマイペースな琥珀の魔女に、白毛獅子も、戦乙女も笑声を重ねる。


「「やる気出るね!」」


魔力を温存するように、ジュエル・ゴーレムは、物理攻撃主体へと攻撃を切り替えた。

イザベラは、ただ、それを避け続ける。

時折、アイシャに浴びせられるストンピングも、最早、奇襲ではない。

だが、ただの一度でも喰らえば、即死級のダメージだ。


「束ねし力、四門を巡れ、碧き波動、我が手に宿れ、解き放て、風の礫」

「ウインド・ブラスト」


至近距離からアイシャが術式を浴びせれば、シャアリィも呼応するように、


「散れ!」


アイス・ブラストを撒き散らす。

かなり魔力を消耗しているのか、ゴーレムが氷結することが増え、それを見逃すことなくシャアリィがアース・ランスを叩き込む。


アイシャの魔力枯渇が近い。

イザベラも又、筋力向上に魔力を動員しているために肩で息をしている状態だ。


そして四度目のコラプション。


ついに左脚の破壊に成功する。

床に倒されれば強烈なストンピングも、大質量の叩き衝け攻撃も出来ない。

ただ、手足をばたつかせ、時折、術式を吐き出すだけの石の塊。


アイシャは歓喜に顔を歪めながら、ゴーレムの手が届かない場所から、彗星棍を頭部に叩き衝ける。

十回、五十回、百回・・・宝石を掘り進む(のみ)の如く、ほんの僅かづつ頭部を破壊してゆく。


イザベラも又、レイピアの先端をゴーレムの腕の傷に捻じ込み抉る。

刃が欠けることもお構いなしに、半透明の歯車を抉り出す。


やれやれとばかりに、シャアリィが一分間の休憩を終え、五度目のコラプションを頭部に込めれば、オレンジ色の目は光を失い、ジュエル・ゴーレムが沈黙する。


最早、三人とも魔力は底を打っている。

この大量の宝石に囲まれながらも、動く気力もない。


・・・


玄室の魔力ロックが解除され、ロザリーとアンソニーがゴーレムの身体に腰掛けてのんびり雑談している三人を見つける。


「クリスタル・ゴーレムじゃなくなってるね?」


と、いうロザリーの声にイザベラが反応する。


「これ、全部、ルビーだよ」

「質はそれほど良くはないが、全部を持ち帰れないのが残念だ」

「というか、多分、ザグレブホーンのルビーの価格、暴落するだろうね?」

「さて、鏖殺のロザリー、きみには仕事が待っているよ」

「我々は皆、魔力枯渇でこの様だ」

「魔石を抉り出してくれないか?」


皆の目が、ロザリーのメイスに注がれる。


「きみの獲物じゃなきゃ、多分、日が暮れる」

「よろしく頼んだよ」


アンソニーは大きめのルビーをナップサック一杯に回収し、シャアリィとアイシャは仲良くチョコレートを齧る。

イザベラは余程疲れたのか、小さな寝息をたて、ロザリーだけが必死で魔石を抉る。


そして、数十分を掛け、ロザリーが抉り出した魔石。

それは紫色の大きな塊。

明らかに術式が封印されていると思しき魔石を手にロザリーが呟く。


「光は闇の中に輝き、闇はこれに勝たなかった」


名有りにも匹敵する魔力の結晶は、とても美しかった。


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