威風堂々
午前十時。
アイシャ・パーティのメンバーは誰一人遅れることなく、冒険者ギルドに揃った。
そこにはアイシャ・パーティだけでなく、他の冒険者たちもいる。
「いよいよ真打登場ってか?」
畏怖と嘲笑の混じる声で、冒険者たちはアイシャ・パーティを見送る。
その視線に晒されても、最早、アンソニーでさえも痛痒を感じない。
一ヶ月にも満たないフィールドでの戦闘訓練のようなオーガ狩り。
しかし、今まで単独で仕留めたことのない大物を自分の手で仕留めることが出来るようになったことは、アンソニーにとって絶大な自信となっていた。
「初日から大物が相手だ」
「気を抜くなよ」
イザベラがメンバーに檄を飛ばす。
「心得た」
「問題ない」
「任せてよ」
「肝に銘じる」
それぞれが声を上げ、イザベラが扉を開ければ、そこにも又、野次馬が集まっていた。
旅立ちの声を上げた以上、群衆は景色の一部。
行く手を遮るようなことがない限り、構うような相手ではない。
南門から伸びる踏み固められた迷宮への道。
僅かな砂塵を巻き上げながら進む、ザグレブホーン最強の冒険者パーティ。
・・・
フォーメーションはアイシャの提案で、
斥候のアイシャは、四メートルの先行。
会敵即殲滅に備えて二列目にシャアリィとイザベラ。
後方への狙撃を狙うアンソニーが三列目。
後方から強敵が来た場合に備えて吸引の出来るロザリーが殿だ。
入り口から一層への階段、アイシャは密度の薄い氷結と土石、それに混じる風の精霊を感じる。
「複合属性の精霊・・・以前と少しばかり様子が違うな」
恐らく、最近の活発な冒険者の侵入に合わせて、迷宮は様々な魔物を召喚、使役したようだ。
以前のような氷結属性そのままの精霊場が乱されている。
「場違いな奴が出る可能性が高いね」
と、ロザリーの慎重な言葉を吐く。
殲滅担当のイザベラとシャアリィは、それを気に掛けることもない。
「エンゲージアンドキル」
「私達の目に触れれば、そいつの命運が尽きる時だ」
イザベラが物騒な事を言えば、シャアリィも螺旋杖をくるりと回して、
「ちっこいのは全部、イザベラにあげるよ?」
と、微笑む。
ほんの数秒で戦闘モードに変わった猛獣たちにアンソニーもビビッてはいられない。
「俺は弾数に限りがある、緊急以外では指示なく撃たない」
アンソニーの覚悟にロザリーが応じる。
「それでいいね」
「だが、集中は切らすなよアンソニー」
「私にヒールの無駄打ちをさせればそれだけ滞在時間が減る」
そして、最初の会敵!
「この独特な足音・・・スケルトンか」
「数は多いぞ、二十以上」
そう言いながらも、アイシャは既に彗星棍を伸ばしている。
アンソニー以外のメンバーは、皆、お好きにどうぞというポーズで己の武具すら構えない。
「遠慮なく頂く」
右手に持った棍を左にひと薙ぎ、持ち換えもせず、そのまま右にひと薙ぎ。
秒殺、瞬殺・・・歩幅から腕の長さまでをきっちり使った二振りで二十体もの敵を骨片へと帰す白毛獅子。
「アンソニー、動いている頭をダガーで壊せ」
アイシャから指示が飛び、カタカタと震える頭蓋だけになったスケルトンを破壊する。
クラス2とクラス3の壁は高いが、クラス3になれば、そこからどれだけ強くなろうとクラス3。
レベル五十に満たないアンソニーにとって、レベル百八十を超えるアイシャの底は知れない。
その差は仔猫と猛獣。
魔石を拾い集めようとしたアンソニーをシャアリィが止める。
「価値の低い魔石を集める必要はないよ」
「探索は始まったばかり」
「荷物を増やしてどうするのさ?」
その表情は、かつて一緒に潜っていたシャアリィとは違う。
琥珀の魔女・・・その金色の瞳。
アンソニーは膝の埃を払い、スケルトンの残骸の中の煌めきを後にした。




