クリスタル・ゴーレム
『クリスタル・ゴーレム』
その情報の開示は、アルゴ・パーティにとって最悪の報せ。
斬撃減衰率九割以上、上級術式を持ち、大質量から繰り出される物理攻撃は即死級。
主力が短剣職である以上、必要な攻撃の手数は二千回に達することが予想される。
敵の攻撃を全て避け続けながら、それだけの攻撃を至近距離で当てる等、不可能だ。
鈍器で戦う重装僧侶のオーベルクが前線に出て被弾すれば回復役を失う。
ゴーレムと戦うには、どうしても高火力術式使いが必要。
エンダーベルトでは数人から多い時で二十人もの術式使いで狩りをする。
ひとりや二人の火力では、太刀打ち出来ない。
しかも、クリスタルタイプのゴーレムは魔法耐性も備える。
「ははっ・・・俺達は暫く休憩だな」
口先では笑ったものの、アルゴの眉間には皺が寄る。
アイシャ・パーティがゴーレムを撃破しなければ、下層に進めない以上、七階層までの確認が終わればやることがなくなる。
パーシモン・パーティは、数こそ三つのパーティで最大だが、現状は厳しい。
リーダーのパーシモンやサブ・リーダーのミアボルトでさえ、到達深度は五階層。
構成するメンバーは剣が主体。
通常の戦闘でさえ、傷を負っている体たらく。
まずは迷宮に慣れるという段階なのだから。
・・・
アイシャ・パーティでは、ゴーレム戦対策。
「エンダーベルトのゴーレム狩りは、まず、敵の機動力を奪うことから始まる」
「脚と胴の繋ぎ目を徹底的に攻撃し、直立出来なくするんだ」
「そうすれば、あとはどうとでもなる」
どうとでも・・・の、中にはシャアリィの秘技が含まれる。
アイシャは目配せで開示するよ、と、シャアリィに了承を取る。
「皆に伏せてあるシャアリィの術式・・・」
「その一つにコラプションというものがあってね・・・」
致命の腐敗、それを知らされたメンバーの顔面は蒼白となる。
「さらに言うと、サンド・プリズンという魔力回復スキルや、敵の術式を封殺するジャミングという術式もあるんだ」
イザベラ、ロザリー、アンソニーは、氷結術師としてのシャアリィしか知らない。
だが、別の貌、土石術師、根源転換術師としてのシャアリィは近接戦闘のエキスパートだ。
イザベラでさえ倒せる程の反則級の術式持ち。
「そりゃ・・・ドラゴン・スレイヤー・・・だからな」
皆が疑いの目で、アイシャを見る。
シャアリィが笑いながら、
「アイシャも、あれよ・・・実は風雷や治癒の中級術式とか、ぶっ壊れ剣技とかあるよ」
ロザリーの口からは呻き声しか出ず、イザベラは両手を挙げて降参の姿勢。
アンソニーは理解さえ追い付いていない。
そこでシャアリィが総括。
「まぁ、魔力ロックが解除されるか、私がぶっ壊すか、どっちが早いかなって」
「多分、上等な魔石が手に入るだろうから、逃げ回るだけなんて、勿体ないでしょう?」
イザベラが忠告する。
「外では言うなよ?絶対に・・・」
封印指定さえ危惧されるシャアリィだったが、一つだけ反論。
「リーシャには、これでも完全敗北してるんだよね・・・むっきぃ」
受難の聖女恐るべし。




