表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
諦めの迷宮踏破編
515/570

強くなるということ

復活したアイシャ・パーティに一人増えたマスコットのような少年。

既にシャアリィに対する思いは吹っ切れているとは言うものの、やはり、シャアリィとアイシャの尋常ならざる仲の良さには、時折、溜息が出る。


しかし、自分がこのパーティに参加させてもらっているのは、浮ついた感情なんかではない、と、常に自らを叱咤する必要があった。


今日も順当に五十体ものオーガと、一体のスノウ・ウルフを仕留めて冒険者ギルドへと帰る。

自らが仕留めたのは、たった一体。

それでもアイシャ・パーティでは、報酬は均等割。

オーガ十体分・・・つまり金貨五枚もの収入だ。

そこからコンパウンド・ボウや矢の支払いとして、金貨三枚をイザベラに返しても手元には金貨二枚が残る。


しかも、こんな凄い武器の代金が、金貨三十枚だというのだから、たった十日で返済も終わるのだ。


「パーティに参加させてもらった上に、いろいろ良くしてもらって、俺、甘えすぎじゃないかなって」


夕食の席で、アンソニーが吐露すると、アイシャが笑う。


「まぁ、普通はこうはならないよね」

「荷物持ちでも、炊事係でもやると言っても、私達のほうが荷も担げるし、料理も上手い」


ロザリーも辛辣だ。


「正直な所、同情九割、興味一割だね」

「強い武器を持ってわかっただろう?」

「意味のない努力なんて報われないということが」


イザベラも又、


「その通り」

「強くなる方法は鍛錬ばかりではないよ」

「人脈、知識、考え方、そして報われる努力」

「闇雲に弦を引いた所で、それが身になるのには時間が掛かる」

「きみの武具だって、明日には壊れるかも知れない」

「金は稼げる時に稼いで、備えることも必要なんだ」


シャアリィは一人、マイペース。


「このテーブルが少しばかりおかしいだけだから、美味しいお酒を飲みなさいな」

「こんな美少女に囲まれて、幸せでしょ?」


確かに皆、見るだけならば、美人、美少女に間違いない。

だが、自分達が猛獣であることを隠そうともしないパーティ・メンバーたち。

美味しい酒でもアンソニーが酔えるはずもない。


「皆のように強くなるにはどうしたらいい?」


と、アンソニーが率直に尋ねれば、イザベラが微笑む。


「その漠然とした問いから、少しばかり奥に踏み込むことだ」

「脚運びを上手くするには、体幹を鍛えるには、早く矢を番えるには、無理のない姿勢で撃つには・・・そのひとつひとつがきみを強くする」

「強くなる方法は無限だ」

「だが、すぐに効果の期待できる方法は少ない」


かつてアイシャがイザベラやロザリーから学んだように、今、アンソニーは強くなるということを学んでいる。


「こうして酒を酌み交わしながらでも、強くなれるのさ」


数日前、自分が言った言葉が滑稽に感じる。

最初で最後の夢?

夢を語る程、自分は何もやっていなかっただろうに。

アンソニーは、麦酒を煽り、パーティの面々を見やる。


こんなに近いのに、今はまだ、果てしなく遠い存在。

自分が今、やるべきことはなんだろうか。


「済まない・・・用事を思い出した」


アンソニーは、じゃらりと多めに銀貨を積み、席を立つ。

あと数時間ならば、矢を番える練習が出来るだろう。

振り返らず店を出る背中に、ロザリーが呟いた。


「神のご加護があらんことを」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ