冒険をしにきた
七月下旬、ザグレブホーン、キャラバンの停車場。
二人の少女が降り立ち、向かう先は冒険者ギルド。
「お久しぶりのただいまー」
閑散とした室内にシャアリィの声が響く。
聞き覚えのある声に受付嬢は顔を上げ、
「シャアリィさん、と、アイシャさん?」
目尻に涙など浮かべて、
「おかえりなさい・・・まぁ、見ての通り、随分ヒマなギルドになってますけれど」
そう、見ればわかる。
これは酷い。
グリーンノウズ並みに寂れているのだから。
アイシャは右手で顔を覆う。
「ナセルバからの出戻り・・・あまり、いないみたいね?」
と、問えば、
「戻って来た人たちは結構いるんですけれど、皆、他の仕事に」
「この街は仕事はたくさんありますからね」
「命懸けの仕事をする必要性がないんでしょうねぇ」
シャアリィは、
「いいことじゃん」
「元々、私達みたいな食み出し者の仕事なんだから」
「それに魔石ならナセルバからも輸入出来るんだしさ」
と、至極、当然のことを言う。
受付嬢は、そこで話を切り替えて・・・
「今回は、何が目的です?」
「イザベラさんとロザリーさんなら、夕方には戻ってくると思いますけれど」
懐かしい名を聞いて、アイシャが微笑む。
「彼女たちは健在か」
「そう言えば夏場は、ハイランド・オーガの駆逐が仕事だったね」
「私達も手伝うとしようか」
「迷宮踏破は、秋からでもいいし」
思わず口を滑らせる。
受付嬢の目が輝く。
「迷宮踏破!」
「いよいよですかっ!」
「久しぶりの大ニュース!」
シャアリィは、ふらふらと掲示板の前に行き、
「お・・・名有りいるんじゃん」
「あ・・・やっぱ見なかったことにしよ」
顔を背けるのも無理はない。
『毒の大蛇』
ラミアの変異種・・・シャアリィの大嫌いな毒持ちだ。
・・・
瓶入りの麦酒を片手に受付嬢とお喋りをしている間に陽が傾いて、
「魔石の換金を頼む」
と、あの癖のある声が聞こえた。
「イザベラ、ロザリー!」
と、アイシャが二人の名を呼べば、
「アイシャ、シャアリィ、来てたのか!」
「久しぶりだね」
と、二年ぶりとなる再会が叶った。
どうやら日々の鍛錬を欠かしていないらしく、イザベラ達はますます強くなったようだ。
「二人とも、まずは竜殺し、おめでとうだね」
「それに商売で随分と成功しているらしいじゃないか」
「わざわざ、こんな過疎の街に何の用事かね?」
と、ロザリーに問われれば、シャアリィとアイシャは声を揃えて答える。
「「冒険をしにきた」」
その言葉に皆が一瞬黙った後、笑い声をあげる。
「まずは、再会の宴だな」
かつての戦術指揮者イザベラが扉を指差す。
四人は、懐かしの山鳥亭に向かうことにした。




