王族嫌い
ワイズリートは王族も、貴族も、嫌いだ。
戦乱の世ならば、王族、貴族にも価値はある。
だが泰平の世にあっても、彼らは特権を行使し続けている。
市井から税を吸い上げるしか能のない連中が苦労のない人生を送ることは我慢ならない。
無駄な晩餐会、舞踏会、装飾品、その他贅沢の数々。
それらが貧しい者に施されれば、どれ程の人間が救われることか。
慈善を行う貴族も、随分と減った。
そのくせ、死後の幸せまでも約束されたいのか、教会への寄付だけは減らない。
その寄付の源泉は税なのだから、実際に負担しているのは領民。
そういう仕組みの何もかもがワイズリートは気に入らない。
だが、所詮は自分も教会の人間である。
仕組みを変えるための方法は、即ち・・・
自分が教皇になり、この国から王族、貴族を駆逐すること。
幸いにして、現教皇は既に齢百才。
数十年も生きるわけではない。
まるで自分に与えられた使命の様に時の歯車さえもが噛み合うならば、それに従うのみ。
「なぁ、リーシャ」
「人間ってのは、親を選ぶことは出来ないんだ」
「生まれ落ちた時に、いろんなことが決まってしまうなんて、理不尽だとは思わないか?」
セロニアスに生まれたリーシャは、当然、頷く。
「私はね、皆が自分の力で未来を切り開けるような世界にしたいんだ」
「これを語ったのは、幼い頃に一度だけ」
「父親にはぶん殴られたよ」
「貴様、何様のつもりだ、とね」
「私はその時、思ったね」
「人間とは言葉が足りない時、暴力という手段を取るのだ、と」
「ならば我々も暴力で変えてもいいんじゃないかってね」
顔では笑ってはいるが、ワイズリートは多分、何時も泣いていたのだ。
「もう、建国から五百年以上が過ぎたんだ」
「そろそろ特権を降ろしてもいい頃だろう?」
「そして、安心してそれが出来るように、私達が新しい武力となる」
壮大な理想、そして、それを成すために自ら払う犠牲。
リーシャは、ワイズリートの言葉に魅了される。
「私には理解出来ないことだらけでも、ショットを信じる」
「お前が嘘つきでもペテン師でも構わない」
「だが、一つだけ頼みがある」
それはリーシャにとって切実な願い。
「私が死ぬまでは、私の代わりを探さないでほしい」
「孤独に死ぬのは構わないが、孤独に生きるのは嫌だ」
迷うことなどない。
「夢の果てまで一緒に往こうじゃないか」
「私の騎士はきみ一人で十分さ」
最強の術式使い。
そんなものに憧れた理由。
世界を焼き払い、作り直すため。
この男にしか出来ないだろう。




