冬のアーシアン
新しい義足は接地感が乏しく、なかなかに歩きにくい。
成長を加味して大きめに作られているのだから、仕方ないことではあるのだが。
シュラインが言った通り、その形状は美しく、ストッキングを通せば成人女性と見紛う程の出来栄え。
リーシャは、シュラインに内緒で少しばかり制服のスカート丈を詰めた。
そうすることで、足の美しいラインがより引き立つからだ。
あと数日もすれば、ワイズリートもジェネトリウムにやってくるだろう。
それまでに何とか十分に歩けるようにと、リハビリにも身が入る。
「ストレッチとバランス立ち」
手摺のついた壁に向かって健気にリーシャは練習を続ける。
・・・
アーシアンの冬は緯度の割には少々厳しい。
リーシャの故郷であるイルオールドでは雪を見ることも少ないが、アーシアンでは冬用の丈の長いブーツなしでは冬季の街歩きさえままならない。
折角の美しい義足の形が、冬用のブーツでは半分以上も隠れてしまう。
しかし、短いブーツでは雪がブーツの中に入り込むために外には出られない。
こればかりはどうしようもない。
「屋敷の中だけでもしょうがないか」
たかだか三センチ。
それでも高くなった目線は、少しばかり大人になった気分。
その代償の痛みさえもが、今は心地良い。
リーシャが待ちかねていた黒塗りの教会馬車が到着。
思わず走り出したくなるが、雪に足を取られて転んでは情けない。
じっと我慢してワイズリートを待つ。
「こんな寒い中で待っていなくとも良いのに」
と、ワイズリートに頭を撫でられれば、
「暇を持て余していただけだ」
と、リーシャは答えるが、その頬はすっかり冷えている。
二人は並んで屋敷の中へと向かう。
一目散に目指すのは暖炉のある部屋だ。
「私はココア、ショットは何がいい?」
と、尋ねれば、
「珈琲に少し、ブランデーを入れて貰おう」
と、いう返事。
侍従がそれを聞き届け、では、なるべく早く御持ちします、と、部屋を後にする。
リーシャは屋内用のブーツに履き替え、
「新しい義足、どう?」
と、少しよたよたしながら一回転。
ワイズリートは笑顔で答える。
「おお、いいじゃないか」
「実にエレガントだ」
その言葉こそがリーシャの待ち望んだ感想。
この一年いろいろなことがあった。
砂糖菓子一粒から始まった受難の連続。
あの日から、たった一日も消えることのない痛み。
そして遂に聞かされる、ショット・ワイズリートの野望。
「私は王族を駆逐する」
「その為には聖女の力が必要なんだ」
それはまさに世界を敵に回すに等しい。
リーシャは、迷いもせず答える。
「それは面白い」
残り一年のモラトリアム。




