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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
外伝・受難の聖女編
504/571

冬のアーシアン

新しい義足は接地感が乏しく、なかなかに歩きにくい。

成長を加味して大きめに作られているのだから、仕方ないことではあるのだが。

シュラインが言った通り、その形状は美しく、ストッキングを通せば成人女性と見紛う程の出来栄え。

リーシャは、シュラインに内緒で少しばかり制服のスカート丈を詰めた。

そうすることで、足の美しいラインがより引き立つからだ。


あと数日もすれば、ワイズリートもジェネトリウムにやってくるだろう。

それまでに何とか十分に歩けるようにと、リハビリにも身が入る。


「ストレッチとバランス立ち」


手摺のついた壁に向かって健気にリーシャは練習を続ける。


・・・


アーシアンの冬は緯度の割には少々厳しい。

リーシャの故郷であるイルオールドでは雪を見ることも少ないが、アーシアンでは冬用の丈の長いブーツなしでは冬季の街歩きさえままならない。


折角の美しい義足の形が、冬用のブーツでは半分以上も隠れてしまう。

しかし、短いブーツでは雪がブーツの中に入り込むために外には出られない。

こればかりはどうしようもない。


「屋敷の中だけでもしょうがないか」


たかだか三センチ。

それでも高くなった目線は、少しばかり大人になった気分。

その代償の痛みさえもが、今は心地良い。


リーシャが待ちかねていた黒塗りの教会馬車が到着。

思わず走り出したくなるが、雪に足を取られて転んでは情けない。

じっと我慢してワイズリートを待つ。



「こんな寒い中で待っていなくとも良いのに」


と、ワイズリートに頭を撫でられれば、


「暇を持て余していただけだ」


と、リーシャは答えるが、その頬はすっかり冷えている。

二人は並んで屋敷の中へと向かう。

一目散に目指すのは暖炉のある部屋だ。


「私はココア、ショットは何がいい?」


と、尋ねれば、


「珈琲に少し、ブランデーを入れて貰おう」


と、いう返事。

侍従がそれを聞き届け、では、なるべく早く御持ちします、と、部屋を後にする。

リーシャは屋内用のブーツに履き替え、


「新しい義足、どう?」


と、少しよたよたしながら一回転。

ワイズリートは笑顔で答える。


「おお、いいじゃないか」

「実にエレガントだ」


その言葉こそがリーシャの待ち望んだ感想。

この一年いろいろなことがあった。

砂糖菓子一粒から始まった受難の連続。

あの日から、たった一日も消えることのない痛み。


そして遂に聞かされる、ショット・ワイズリートの野望。


「私は王族を駆逐する」

「その為には聖女の力が必要なんだ」


それはまさに世界を敵に回すに等しい。

リーシャは、迷いもせず答える。


「それは面白い」


残り一年のモラトリアム。


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