表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
外伝・受難の聖女編
498/582

素足と文化祭

短い夏。

九月を迎え、学舎の授業が再開される。

リーシャはそこで一つの決断をした。

他の女子生徒のように、短い三つ折りのソックスを履くことにした。


この脚は、ワイズリートとシュラインがくれた大切な脚。

それを隠していた自分を恥ずかしく思ったのだ。

例え、皆がこの脚に恐怖しようと構わない。

自分には、ワイズリートがいるのだから。


登校初日。

当然、皆の目はリーシャの脚に向けられる。

その視線は様々だった、憚りもなく注視するものもいれば、横目で眺める者、あえて見ないようにする者、そして、何も変わらないという振りをしながら顔を引き攣らせる者。

リーシャにすれば、その全ての反応が面白い。


「セロニアス、すっげー恰好いい義足じゃん!」

「超強そうだな」


と、一部の男子生徒からは人気だ。


「ああ、超強いよ」

「だからスポーツの授業には出ないんだ」

「ズルになるからね」


リーシャは編入時から、スポーツと武道の授業を受けていない。

ワイズリートやシュラインに言われたからでなく、この脚を見せることに不安があった。

憐れみの目で見られることも嫌だった。


編入して以来、一度も主席の座を明け渡していない今であれば、憐れみの目を向けられることもなく、怖気づくこともない。

もし、最初からこの脚を晒していたならば、アリスは友達になってくれなかったかも知れないが、それを考えても詮無きこと。


リーシャの容姿に劣等感を感じていた女子たちにとっては朗報。

完璧なリーシャにも、その容姿に欠落があるならば、自分にもチャンスが回って来ると思ったからだ。

だが、現実は甘くない。

リーシャは己の姿を隠さない・・・それが一層、男子たちを夢中にさせた。


中間試験が終われば、期末試験の前に文化祭という校内の祭典がある。

規律の厳しい中央神学校で、唯一、生徒の自主性に委ねられる祭典だ。

この時ばかりは宗教色が緩くなり、吟遊詩や物語をモチーフにした劇を各クラスが披露するのも定番となっている。


リーシャの主席で中間試験が終わると、すぐに皆が劇の話題で盛り上がり始める。

当然のように主役に推されるのがリーシャだった。


「私はこの脚だ・・・主役は他の誰かがやってくれ」

「私は敵役(かたきやく)か、悪者をやらせて貰えると好都合」


本人が言うのだから、と、男子たちは残念そうにリーシャの主役を諦める。

それに気分を良くしたのが、貴族子女の面々。

侯爵家の令嬢、ブリジット・リュシー・キュヴィエが、主役に名乗りを上げた。


「では、よろしければ私に主役を任せて頂けないかしら?」


周囲に侍る取り巻きの女子たちが喝采で賛成を示す。

リーシャが主役をやらないならば、と、半ば興味を失った男子たちも渋々同意する。

キュヴィエは、編入当初から一貫してリーシャを快く思っていない。

父親にも抗議する程だが、リーシャの後見人が枢機卿だと聞かされれば黙るしかなかった。


やっと一矢報いることが叶ったと思った矢先、キュヴィエの意中の相手であるヨアヒム・ユンカースがリーシャと同じく主役を辞退した。


「僕は舞台だと緊張するから、とても主役は無理だ」

「メルダーなら身長も高いし、度胸もある」

「僕は彼を推薦するよ」


ユンカースに指名されたメルダーは謙遜しながらも、それを受け入れた。


「主役と支援者で劇を決めるといいね」

「決まったなら、その他の役を皆で決めよう」


誰となく、そう言い出せば、特待クラスの劇の出し物は主役たちに委ねられた。


・・・


リーシャが悪役を望むならば、と、キュヴィエ達は、なるべく悪役が惨たらしく最後を遂げる劇を選んだ。


「この劇がいいわ」


と、キュヴィエが自ら選んだのは、悪魔に魂を売り渡した商人が、賢い主人公たちに散々に凹まされた挙句、最後には正体を見破られて主人公に葬られる、と、いう物語。

物語の商人は男なのだが、それを女に変えてまで、リーシャに悪役をやらせるという案に、一部の者は反対したが、対案を出せと言われれば面倒になり、キュヴィエの案を採用することになった。


そんな流れにも関わらずリーシャは、


「面白いね!」

「勿論、大歓迎で悪役を演じるよ」


と、にやりと笑う。

キュヴィエにとって、それがトラウマになるとは、この時はまだ、思いもしなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ