二度目の誓い
沢山の荷物を抱えてリーシャが買い物から戻って来た。
市場で仕入れてきたのは、大量の夏野菜と牛肉。
「今日の夕食は、野菜の牛肉巻き」
「コーンポタージュとサラダです」
「デザートはチョコレートケーキ」
「ショットにはおつまみ用のナッツがあります」
意外にも買い物上手なリーシャ。
それもそのはず。
教会図書館にはありとあらゆる書物がある。
その中には料理のレシピ本も当然ある。
「おお、本格的な料理だね」
「作ったことはあるのかい?」
リーシャは鼻を鳴らして答える。
「ある・・・わけない」
少しばかり不安になるワイズリートだったが、サラダがあるなら失敗してもサンドイッチくらいは作れると頭の中で予備案を考える。
「料理に取り掛かるまで、まだ時間はあるだろう?」
「きみに見せたいものがあるんだ、倉庫に行こう」
屋敷の離れ家屋の一角にある倉庫。
そこには穀物の大袋や、土嚢、大工道具、様々なものがあった。
かなり広めの倉庫は窓がなく、昼でも奥まで見通せない。
ワイズリートが備え付けの不燃カンテラに魔力を流し、灯りを点ける。
「これはきみのために用意しているものだよ」
一体、幾つあるのか見当も付かない程、山積みにされた魔石。
リーシャは驚きを隠せない。
不燃カンテラの灯りを受けて、きらきらと輝く魔石の山。
その全ては暗影の魔石。
「これは一部」
「きみが次の次の冬を迎える頃には、この倍を集めておく」
「きっと、何十もの術式がきみに宿るだろう」
「だから、それまでは慌てなくてもいいんだ」
既に三、四万個以上もあるだろう魔石の山・・・金貨数千枚の宝の山だ。
「あまり構ってあげられない理由」
「わかってくれたかな?」
リーシャは思わず、ワイズリートに抱き着いてしまう。
そして自信なさげに、
「私にこれだけの価値があるの?」
「今でも好き放題させてもらっているのに・・・」
ワイズリートは視線の高さをリーシャに合わせて、
「私の夢に付き合わせているんだ」
「もっと傲慢でいい、私だけはきみを裏切らない」
「きみを最強の術式使いにする、そう、言っただろう?」
そう言って、リーシャの軽い身体を持ち上げる。
それは実の父でさえしてくれなかった、愛情表現。
くるくると二度程回って、リーシャの身体を地に降ろす。
「私・・・否、妾は、この先も面倒を掛ける」
「だが、ショット・・・妾はお前の剣であり、盾」
「槌でも、矛でも、杖でも、お前の望む姿で、お前の敵を滅する」
「改めて誓う」
「この命、この身体、この魂は、全てお前のものだ」
ワイズリートは微笑む。
「『魔界の騎士』の一節だね」
「では、私も・・・」
「生まれた時は違えども、召される時は共に」
「この世界を焼き尽くすのは我ら」
「千の剣を向けられようと、炎の雨を浴びようと、誓いを違えることはない」
リーシャは邪悪な笑みでワイズリートと視線を交わす。
「お互い、業が深いね」
ワイズリートはそれを鼻で嗤う。
「そうでもない」
「この美しく腐り果てた世界には、見守る神しかいない」
「私達に罰を与える者なんていないんだ」
「これは業でなく、祝福だ」
最強にして最凶。
その目覚めまで、数百日。




