友人
フォルトナーとの待ち合わせ。
先についていたのは、リーシャだった。
同じ教室にいながらも、帰り支度は何時でもリーシャが一番早い。
そういう面ではフォルトナーは少しばかり鈍い。
「教室で待っててくれてもいいじゃない?」
と、フォルトナーが愚痴を言えば、
「ああ、そう言われればそうだね」
リーシャには気遣いというものがわかってないらしい。
「さて、私への質問?尋問?答えられることなら隠す必要もない」
フォルトナーは、苦笑いして、
「あなたって本当に『お一人様』なのね」
「でも、正直、私はそういうところも含めて、あなたに興味を持った」
「聞きたいことは大したことじゃないの」
「この学舎を卒業して何になりたいのか、とか」
「どんなことが好きなのか、とか」
リーシャは何故、そんなことを聞きたいのか不可解だったが、質問に質問を返すより答えるべきだと思った。
「卒業・・・するかどうかはわからない」
「私は二年間、学舎で学ぶようにショットに言われただけ」
「何になりたいか・・・か、最強の術式使いを目指している」
「好きなことは、本を読むこと、甘い物を食べること、走ること」
「こんな感じでいいのか?」
フォルトナーは頷き、
「うん、私はねウィトプラナっていう街からここにきた」
「農業や畜産が盛んな所・・・まぁ、田舎だね」
「目的は治癒術師になるため」
「田舎だから治癒術を使えるひとが少ないんだ」
「流行り病で、大勢の子供が死んじゃったりする」
「そういうのを少しでも減らしたいって思って」
リーシャは、それを聞いた所で、何を言ってよいのかわからない。
「で、私のことを知って、自分のことを話して、どういう意味があるんだ?」
普通、そんなことを言われたら拒絶されていると感じるだろうが、今までの遣り取りでフォルトナーはリーシャの性質に気付いている。
「互いを深く知ることに意味とか、価値とか必要ないよ」
「何となくっていうだけ、セロニアスは美人だし、仲良しになりたいって思った」
「それに頭もいいし、私は正直、少し憧れているんだ」
ますます、リーシャには理解出来ない。
「美人で頭がいいと仲良くしたくなるものなのか?」
「私は余り考えたことがなくて、よくわからないんだ」
フォルトナーは微笑む。
「わからなくてもいいよ」
「たまに一緒にご飯を食べたり、同じ本を読んだら感想を聞かせ合ったり」
「そういうことがしたいだけ」
何故、そんなことがしたいのか、不思議に思う。
でも、確かに自分もショットと一緒に食事をしたり、お喋りをすれば楽しくなる。
成程、自分にとってのショットは、フォルトナーにとっての自分。
そう置き換えれば、やっと、フォルトナーの気持ちを僅かに理解出来た。
「つまりは、フォルトナーは私に好意を持っている、と」
「最初から、そう言ってくれれば話が早いのに」
フォルトナーは少しばかり俯いて、
「早い話より、大事なことがあるんだよ」
「それに言いにくい事だって、あるんだよ」
まだまだ心の機微というものはリーシャにはわからない。
それならば、形から入ろうと、
「じゃあ、ファーストネームで呼び合えば、仲良くなった証明になる?」
「私は、きみをアリスと呼び、きみは私をリーシャと呼ぶ」
「それが友達になるということなら、そうしよう」
思わぬ提案を受けて、アリスは自分の口を掌で覆う。
「いいの?」
「友達になってくれるの?」
リーシャは首を少し傾げ、
「らしいことには付き合えるよ」
「でも、私は面倒なことが嫌いなんだ」
「自分の時間が必要以上に減ることもね」
「冷たいと思われるかも知れないけれど、私は窮屈な思いをしてまで友達は欲しくない」
率直な物言いに、アリスが頷く。
「わかったわ」
「付き合えない時は遠慮なしに言ってくれていい」
「リーシャに悪意がないなら、大丈夫」
アリスは、リーシャの初めての友人になった。




