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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
外伝・受難の聖女編
488/598

友人

フォルトナーとの待ち合わせ。

先についていたのは、リーシャだった。

同じ教室にいながらも、帰り支度は何時でもリーシャが一番早い。

そういう面ではフォルトナーは少しばかり鈍い。


「教室で待っててくれてもいいじゃない?」


と、フォルトナーが愚痴を言えば、


「ああ、そう言われればそうだね」


リーシャには気遣いというものがわかってないらしい。


「さて、私への質問?尋問?答えられることなら隠す必要もない」


フォルトナーは、苦笑いして、


「あなたって本当に『お一人様』なのね」

「でも、正直、私はそういうところも含めて、あなたに興味を持った」

「聞きたいことは大したことじゃないの」

「この学舎を卒業して何になりたいのか、とか」

「どんなことが好きなのか、とか」


リーシャは何故、そんなことを聞きたいのか不可解だったが、質問に質問を返すより答えるべきだと思った。


「卒業・・・するかどうかはわからない」

「私は二年間、学舎で学ぶようにショットに言われただけ」

「何になりたいか・・・か、最強の術式使いを目指している」

「好きなことは、本を読むこと、甘い物を食べること、走ること」

「こんな感じでいいのか?」


フォルトナーは頷き、


「うん、私はねウィトプラナっていう街からここにきた」

「農業や畜産が盛んな所・・・まぁ、田舎だね」

「目的は治癒術師になるため」

「田舎だから治癒術を使えるひとが少ないんだ」

「流行り病で、大勢の子供が死んじゃったりする」

「そういうのを少しでも減らしたいって思って」


リーシャは、それを聞いた所で、何を言ってよいのかわからない。


「で、私のことを知って、自分のことを話して、どういう意味があるんだ?」


普通、そんなことを言われたら拒絶されていると感じるだろうが、今までの遣り取りでフォルトナーはリーシャの性質に気付いている。


「互いを深く知ることに意味とか、価値とか必要ないよ」

「何となくっていうだけ、セロニアスは美人だし、仲良しになりたいって思った」

「それに頭もいいし、私は正直、少し憧れているんだ」


ますます、リーシャには理解出来ない。


「美人で頭がいいと仲良くしたくなるものなのか?」

「私は余り考えたことがなくて、よくわからないんだ」


フォルトナーは微笑む。


「わからなくてもいいよ」

「たまに一緒にご飯を食べたり、同じ本を読んだら感想を聞かせ合ったり」

「そういうことがしたいだけ」


何故、そんなことがしたいのか、不思議に思う。

でも、確かに自分もショットと一緒に食事をしたり、お喋りをすれば楽しくなる。

成程、自分にとってのショットは、フォルトナーにとっての自分。

そう置き換えれば、やっと、フォルトナーの気持ちを僅かに理解出来た。


「つまりは、フォルトナーは私に好意を持っている、と」

「最初から、そう言ってくれれば話が早いのに」


フォルトナーは少しばかり俯いて、


「早い話より、大事なことがあるんだよ」

「それに言いにくい事だって、あるんだよ」


まだまだ心の機微(きび)というものはリーシャにはわからない。

それならば、形から入ろうと、


「じゃあ、ファーストネームで呼び合えば、仲良くなった証明になる?」

「私は、きみをアリスと呼び、きみは私をリーシャと呼ぶ」

「それが友達になるということなら、そうしよう」


思わぬ提案を受けて、アリスは自分の口を掌で覆う。


「いいの?」

「友達になってくれるの?」


リーシャは首を少し傾げ、


「らしいことには付き合えるよ」

「でも、私は面倒なことが嫌いなんだ」

「自分の時間が必要以上に減ることもね」

「冷たいと思われるかも知れないけれど、私は窮屈な思いをしてまで友達は欲しくない」


率直な物言いに、アリスが頷く。


「わかったわ」

「付き合えない時は遠慮なしに言ってくれていい」

「リーシャに悪意がないなら、大丈夫」


アリスは、リーシャの初めての友人になった。


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