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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
外伝・受難の聖女編
485/611

主席

冬季期末の試験が間近に迫り、授業の合間の休憩時にも教科書や参考文献、ノートを開く者の数が増えた。

窓際の最後列、リーシャは群れに混ざることもなく、外の景色を眺めている。

ほんの数か月前、何もかもに絶望し、ワイズリートと契約を交わした日から、リーシャの人生は一変した。

毎日、適度に甘味を味わうことも出来るし、日が暮れるまで教会図書館の貴重な書物を読み漁ることも出来る。

友人等必要ない。

友人が出来た所で、つまらぬお茶会等で時間を奪われるだけならば、それは不要、それは無駄。


本当の意味で、リーシャの孤独を埋められるのは、ワイズリートだけなのだ。

そのワイズリートに会えないことだけは、寂しく感じる。

主人と下僕・・・本来ならば、そういう関係なのだろう。

だが、ワイズリートに言わせれば、そんな陳腐な関係ではない、と、言う。


最初に会った時、ワイズリートは好きに呼べ、敬称もいらない、と、言った。

つまり、互いは目的のためにある存在ということなのだ、と、リーシャは解釈している。

そこでリーシャは考えた。

少しばかり生意気になっても良いだろう、と。


試験が終わり、結果が発表される。

リーシャは見なくてもわかっている。

ひとつたりとも、試験の問題を間違えた覚えがないのだから。


主席、リーシャ・セロニアス。


順位表の一番上に書かれている自分の名前。

小さな口から零れたのは、面倒なことが起きなかったという小さな安堵。

学舎での最初の使命を果たしたのだから、帰宅したらシュラインに我儘を聞いてもらおう、と、珍しく図書館にも寄らずジェネトリウムに帰った。


「シュライン先生、期末テスト、一番だったよ」

「ショットに面会の時間を作るように催促してくれ」


研究室の椅子に座るシュラインは、目を丸くして驚く。


「一番?きみが?どうして?勉強好きなのか?」


疑問符だらけの返答に、リーシャは薄い胸を張る。


「私、速読と暗記、暗算には自信があるんだ」

「セロニアスの複雑な禁足結界だって、何度も抜けたことがある」


シュラインは腑に落ちる。

白毛獅子の直系は、オーバーヒューマン。

人間以上の人間を作り出す技術によって生まれた旧世界の遺産。

一度滅びた文明を再興した今の人類が叶う相手ではない、と。


「わかったよ」

「さすがの枢機卿様も年末年始くらいは時間があるだろうさ」

「二、三日は、ここで過ごせるように言い含めておくよ」


リーシャは自分の我儘が受け入れられたことに年相応の笑顔を見せる。


「ショットと会える」

「・・・新しい服を仕立ててもらってもいい?」

「折角だから、ちゃんとした格好で会いたい」


シュラインはリーシャの頭を撫でながら、


「あいつは少女趣味さ」

「きみの制服姿のほうが喜ぶと思うよ・・・鬼畜のド変態枢機卿様だから」

「まぁ、私も他人の性癖を笑える立場じゃないがね」


リーシャは少しばかり考えて、


「そうかもね・・・学舎の制服なら可愛いし、ハイソックスで、この脚も見せずに済む」

「少しばかり、普通の女の子の気分を味わうのも悪くない」


じゃあお願いね、と、上機嫌でリーシャは自室に引き籠った。

シュラインはそれを見届けた後、長い溜息を吐く。


「中身はまだまだ子供だね」

「ああ、畜生」

「子供ってのは、面倒だ」

「特に手の掛からない子供ってのは、イライラする」


そう零すくせに、随分と優しい表情。

自分がリーシャに少なからぬ親愛の情を持っていることに気付く。

今年もあと一週間で、終わる。


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