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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
473/606

アンダーロック

「こんな辺鄙な所に街があるなんてね」


シャアリィがそう零す程、アンダーロックは過疎地。

馬車でたった二日の距離なのに、レリットランスとは大違い。

市場というには小さすぎる食料品店、鍛冶屋、雑貨店、こじんまりとしたカフェテラス。

それでいて、宿屋と酒場だけは四つづつもあるアンバランス。


総合ギルドという何でも屋が、街で一番大きな建物。

その隣には衛兵所。

この迷宮の灯は三十年後には恐らく消えているだろう。


「地域冒険者章の発行をお願いしたいのですが」


と、アイシャが問えば、


「あんたら、どっから来たんだ?」

「ここはもう、新規発行はしていないんだよ」

「レリットランスの冒険者ギルドで発行してもらってくれ」


むさ苦しい髭面の担当者に言われ、アイシャはレリットランスの冒険者章を見せる。


「これでいいのかな?」


と、冒険者章を提示すれば、


「ああ、それでいい」

「随分と上等な武具を持っているが、この街じゃちょっとばかり目立つ」

「気をつけな」


と、目を合わすこともなく、不愛想に言い放った。

何時もならば、ドラゴン・スレイヤーだのネームド・キラーだの言われて応接室に通されるのだが、その遣り取りもない。

手間が省ける反面、少しばかり拍子抜けだと、アイシャは思った。


出掛ける前に宿を取っておかなければ、最悪、寝床にあぶれる。

二人は古びた宿屋の中でも、一番新しそうな宿を選んだ。


「銀貨五枚、飯は別、湯の追加は銀貨一枚」


ここでも不愛想。

どうせ何処でも同じだろうと、二人分の銀貨を渡す。


「貴重品は持ち歩け、鍵は必ず締めろ、男は連れ込むな」


言われなくともそうするという類の注意を受け、部屋の鍵を受け取れば準備完了。

出発前の息抜きに、カフェテラスの席に座る。

薄っぺらいメニュー板にはパンを使った軽食と、珈琲、紅茶、酒の類。


「珈琲」

「紅茶」


選択肢などないのだから、仕方ない。

代金と注文の品は、その場で引き換え。

二人の所持品にチョコレートやキャラメルがあることだけが、救いだ。


「二極の製品が、火と風」

「四極の製品が、火と氷結と風二つ」

「魔石の数は火が六十、氷結が三十、風が九十だね」

「さくさくっと採取して帰ろう」


何時もなら迷宮に入る前は上機嫌のシャアリィですら、その顔には苦笑い。


・・・


誰の注目を引くこともなく、何かに注目することもない。

淡々とした狩り、腹を膨らませるだけの食事、寝心地の悪いベッド。

それでも魔石の数だけは半日も掛けずちゃんと揃った。


翌日、正午。

迎えの馬車が約束の時間通りに到着し、二人はアンダーロックの街を後にする。

そう言えば、ザック・パーティが冒険者になったのは、この迷宮だったらしい。

その頃は、まだ活気があったのだろうか。


帰りの馬車の中で、シャアリィとアイシャは消えゆく迷宮の街を振り返った。

うっかり見逃してしまいそうな、街道の立て札の文字は掠れて読めない。

もしかしたら、次に来る時にはなくなっているかも知れない。

次の魔石採集はアーシアンにしよう、と、二人は苦笑いした。


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