表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
469/595

復路の始まり

深夜まで語らいながら酒を飲み、甘味を摘まむ。

高台とまでは言えないまでも、周囲より少しばかり高い位置にあるアンナの邸宅からは海も見える。

二階のベランダから景色を見れば、楽園の風景がそこにある。

右手の高級商業地区の魔道の灯りが陸の宝石ならば、一面の星の海は空の宝石。

風の音、草のそよぎ、虫の声。


・・・


日の出前。

アンナに見送られて、まだ暗い職人通りを歩く。

職人通りのギルド前を右に曲がれば、長い市場通り。

それを抜ければ、海も近く潮の香りが強くなる。


シャアリィとアイシャを待ち受けるように、埠頭の前に集まっている船員たち。

船員頭が点呼を取れば、勿論、欠員なし。

全員が船に乗り込み、船内の食堂で朝の会議。

出港の時だけがマーメイド商会の面々が揃う瞬間だ。


アイシャが船員たちの前に立ち、出港前の指示を出す。


「昨晩は皆、ちゃんと楽しめたかな?」

「あと数時間で、我々はまた十五日間の航海に出る」

「非番の者は速やかに休息を取り、そうでない者は珈琲で目を覚ませ」

「腹いっぱい食べすぎると眠くなるから、程々にな」

「観測手は常に警戒を怠るな」

「異常があれば、私かシャアリィにすぐに知らせてくれ」

「質問がある者は挙手!」

「但し、私達のプライベートに関わる質問には答えない」


男達がそこで残念そうな声を上げ、笑いが起こる。


「次の航海は何時ですか?」


若い船乗りが、最後列から大声で質問を投げた。


「次の航海の出発は四十五日後、エンダーベルト便は一ヶ月の休み」

「次もこの船に乗りたい者は、帰ってすぐに勤務希望を出しておくように」

「うっかり、遠方便に参加すると楽園には来られなくなるぞ?」


シャアリィはアイシャの話術に感心する。

アイシャは何をやらせてもそつなく出来るから、不思議だ。


「では、各自、食事が済んだら、出港前点検」

「指示が必要であれば、ここで私達は待機しているので、遠慮なく」


その声で、賑やかな食事が始まる。

船長と船員頭、観測手はシャアリィたちとテーブルを共にする。


「セブールの襲撃、また、ありますかね?」


そう問われたアイシャは、


「あるだろうね」

「連絡を絶った捕鯨艦の行方を追う時間はたっぷりあった」

「しかし、また襲撃があったところでどうということはないさ」


シャアリィも頷く。


「戦艦が来ても沈めてあげるよ」

「向こうに着いたらすぐに潜入者潰しもあるね」


美しい少女たちに相応しくない豪胆さに、船長たちは舌を巻く。


「奴らは敵にしてはならないひとを敵に回した、と、いうことですね」


アイシャは少しばかりお道化て、


「これでも、私達は平和主義者なんだよ」

「それだけは信じてもらいたいね」


テーブルの面々は、どっと笑った。


・・・


「実物を見ると素晴らしいな」

「値段は少々高いが、十分に満足だよ」


フランコは、出来上がった新型車両を見て感想を漏らす。


「やがてこれが魔道動力機関で走ると思うと、心が躍るね」


商業ギルドから派遣された騎手たちも、感嘆の言葉をあげる。


「今までの車両の倍近い幅ですね」

「まるで戦車だ」


いよいよ陸路も折り返し。

四頭の馬が蹄の音を響かせて、衛兵通りをお披露目のように進む。

その威容に衛兵達も思わず目を奪われる。


護衛を伴って見送りにきていたアネモイが、


「いよいよ始まりますね?」

「道中お気をつけて」


と、声を掛ければ、フランコは飄々とした笑みで応える。


「ええ、油断なく、抜かりなく、荷物を積んで戻ってきます」

「祝杯は、その時に是非!」


レリットランスの正門を抜け、目指すはグリーンノウズ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ