子供
フランコはさらなる襲撃を警戒し、騎手に注意を促す。
「済まないね・・・私は少しばかり敵が多い」
「カレンザは素通りしたい所だが、飲食物の補給だけは必要だね」
護衛達もフランコの言葉に頷く。
木を隠すには森の中、ヒトを隠すには・・・そう思えば中継点の街は危うい。
そして、それは的中する。
カレンザに着く間際、旅客専用車両の天井に何かが当たった。
それが『がしゃん』と音を立てて壊れると、天井が燃え始めた。
どうやら着火用の燃料油を入れた瓶だったらしい。
それを皮切りに同様のものが、次々と旅客車両に投げられる。
硝子窓の向こう、それを投げているのが成人前の子供たちだという衝撃。
火の手は早く、このままでは火傷を負うのは確実。
「御者台を切り離せ」
「私達は飛び降りる!」
フランコの指示で、騎手は客車と御者台を繋ぐ連結器の留め木を引き抜いた。
護衛が車両の扉を開け放ち、三人は転がるようにまだ動いてる車両から飛び降りる。
蜂の子を散らすように子供たちは中継点の街に逃げた。
燃え盛る旅客車両・・・辺りは黒い煙と塗料が焼ける匂いに包まれる。
フランコ達は砂塗れとなり、護衛の一人は足を折った。
呻く護衛をすぐさま中級ヒールで治療し、フランコ達は旅客車両の後を追う。
「子供を雇うとは悪辣な!」
火炎術師の護衛が吐き捨てれば、水術式の護衛は車両の火を消すためにウォーター・ウォールを展開する。
既に手遅れ・・・屋根や扉だけでなく車輪の一部までもが燃え、旅客車両は無残な有様。
「やれやれ・・・どうしたものかね」
と、呟くフランコの元に、車両の騎手が身軽になった御者台で戻って来た。
「皆さま、ご無事ですか?」
と、三人を気遣う。
移動の足がなければ、どうすることも出来ない。
騎手が一つの提案をする。
「操縦できるならば、御者台と馬をお貸ししましょう」
その提案は急ぐならば受け入れるべきだが、それでは騎手も護衛もカレンザの街に置き去りにすることになる。
それは危うい。
逃走した子供たちだけでなく、それを操っている奴が潜伏している可能性は高い。
「まずは街まで行こう」
「きみ達は衛兵所で待機、私が始末を着ける」
フランコは馬の頬を撫でながら、騎手と護衛に告げた。
その言葉は穏やかだが、眼には憤怒の炎が燃える。
・・・
衛兵所に着くとフランコは、
「私の乗っていた馬車が襲撃されて、あの様だ」
と、燃え残った旅客車両を指差す。
「ふ、フランシスコ枢機卿!」
「お体の方は大丈夫ですか?」
衛兵は砂まみれのフランコを心配するが、フランコが欲する言葉はそうではない。
「衛兵諸君、今から私と共に首謀者及び実行犯の捜索を開始してもらいたい」
「職務怠慢に問われたくなければ、賊を一人残らず私の前に晒せ!」
「子供であろうと年寄であろうと女であろうと容赦はするな」
「そして、次のキャラバンが被害に遭わぬように、街道を警備!」
その剣幕に圧され、衛兵たちが即答する。
「承りましたっ!」
フランコは声色を戻し、
「私の護衛と、騎手の保護も頼むよ」
「くれぐれも丁重に」
衛兵所を出るとフランコは聖衣の砂を払い、自らも捜索に加わる。
目には目を、歯には歯を。
だが、出来れば子供を手に掛けたくはない。




