表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
462/594

異端審問官

対峙して数十分。

既に殆どの盗賊が矢を使い果たした。

矢の無い弓などただの棒切れ、鈍器の代わりにもならなければ、薪の代わり焚べるくらいしか使い道もない。

弓を放り捨て、粗末な刀剣、短剣を抜き放ち馬から降りて旅客車両に歩み寄る。


盗賊から解放された馬たちは草と水を求め、散り散りに走り去る。

徒党を組んだ所で所詮はただの寄せ集め。

自ら逃走の足を捨てるなど、愚の骨頂。


「最早、私の出番さえ無くなったかな」


そう呟くフランコの後ろで、もうひとりの術式使いが姿を現す。

治安対策委員会の術式使いはベテラン冒険者に比すれば、当然、格下。

しかし、それでもただの荒くれ者相手ならば、その暴力の差は歴然。


「火の精霊よ集え、恵みの雨に代わりて、愚か者を焼き尽くせ」

「ファイヤ・レイン」


盗賊たちの頭上から、初級術式の火の雨が降り注ぐ。

エクスプロージョンのような劫火ではないが、簡単には消えない魔力の火だ。

頭目らしき男が地面に転がって背中の火を消すと、手下の盗賊に喚く。


「術式使いは接近戦じゃ弱いんだ」

「大袈裟に泣く暇があるなら、前に行け!」


一人の盗賊が、悲鳴を上げながら逃走すると、他の者達も顔を見合わせる。


「無理だ・・・強過ぎる」

「もう、終わりだ」


恰好と体格だけは一人前の悪党共が武器を放り捨て、フランコに(すが)る。


「俺たちは、あいつに(そそのか)されただけなんだ」

「もう、何もしない、勘弁してくれ」

「改心するし、真面目に働く、助けてくれ」


フランコは、跪いて懺悔する男達を放ったまま、頭目の男を見据えて、


「あんたはどうする?」

「もう詰んでると思うが、言い訳くらいなら聞こうじゃないか」


問われた頭目は、尚も抗戦を叫ぶ。


「お前ら、こいつを殺さなければ終わりなんだぞ?」

「馬鹿な真似はやめて早くこいつを殺せ!」


フランコは鼻で嗤い、


「皆は、改心したようだがね」

「きみの情状酌量はナシだ」


足元に転がっている手頃な小石を拾うと、


「万物は重く、固く、尖る」

「ジャッジメント・ワン」


そう詠唱して、人差し指で小石を弾く。

指先から放たれる眩い光は、手近な物すら無双の武器に変える陽根源転換術式。

ぽっかりと、盗賊の頭に穴が穿たれ、その向こうに殺風景な渓谷の景色が見えた。


もう一度、同じように遥か遠くに見える逃走した男の背に向けて術式が放たれれば、その頭蓋が消し飛んだ。


「私は、これでも異端審問官の一人なんだ」

「きみ達の懺悔が懺悔でなく、ただの命乞いだということくらい、わかっている」

「だが、まぁ、命だけは許そうじゃないか」


それを救いの言葉と捉えた悪党共が感謝の言葉を零す。


「有難い」

「約束は守る」

「慈悲に感謝します」


その言葉は、一つもフランコには響かない。


「きみ達に祝福を授けよう」

「私が詠唱句を唱えたら、この指先を見るんだ」

「・・・光は照らす、罪に染まる者を許さず、その眼差しを焼き尽くす」

「ホーリー・スカイ」


物騒な文言に驚き、目を見開いた盗賊たちの視界が白一色に塗り潰される。

その白い世界はやがて消え失せ、もう・・・何も見えない。


「何をした・・・何も見えない」

「おい、神父さん、俺は生きてるのか?」

「どうなってるんだ」


フランコは穏やかな声で、


「祝福さ」

「これで、もう、二度ときみ達が罪を犯すことはない」

「私は先を急ぐよ」

「きみ達に使った時間を取り戻さなくちゃならないんだ」


言い残すと、護衛と共に車両に戻る。

地面を手探りしながら這う男達が叫ぶ。


「・・・騙しやがった、な」

「くそ、くそ、くそ、くそ、畜生ぉおお」

「見えねえ・・・何も・・・これが聖職者のやることかぁあ!」

「呪うぞ!地獄に行っても忘れない!」


何も罰を与えず悪党を許す程、フランコは甘くない。

それでも、命だけは許すという約束は守った。

運があれば、集落まで辿り着けるだろう。


粛清枢機卿を乗せた旅客車両は、レリットランスを目指す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ