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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
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愚かな襲撃

フランコは、行きは旅客専用車両。

キャラバンなら十一日だが、旅客専用車両ならば七日。

帰路の日数は今の所不明・・・但し通常のキャラバンよりも遅いということはあるまい。

なにしろ四頭立てで、荷台車両は空なのだから。

用心のために治対の術式使い二人に同行を依頼した。

二人は共に馬車の操縦経験もあり、万一、騎手を喪失しても、その代理に問題はない。

勿論、願わくば何も起きないことが一番良い。


・・・


シャアリィとアイシャは、フランコに比べれば少しだけ気楽だ。

帆船に乗ってしまえば、あとは時間の問題。

相手が大型帆船の海賊であろうと、シャアリィのキャノンを受ければ撃沈間違いなし。

しかも、その射程はフルチャージならば圧倒的な四百五十メートル以上。

当然、先制の一撃で沈めることが可能。

上級の狙撃術式でも射程百メートルがせいぜいなのだから、まさに魔力砲台。


・・・


同時並行する二つの旅程。

運命はきまぐれ。

その両方に降りかかる火の粉。


シャアリィとアイシャが以前、襲撃にあった渓谷地帯。

フランコの旅客専用車両は、盗賊団と遭遇した。

グリーンノウズから逃げ延びた悪党共は徒党を組み、盗賊団を結成したのだ。

フランコの馬車を襲うのは、勿論、計画された犯行。

千載一遇の好機と見た五十名もの悪党が、仕掛けたのは馬の脚を折るための稚拙な罠。

ただ数本のロープを巻き付けた杭で、道を塞ぐだけの湿気(しけ)たもの。

前方を警戒していた騎手に簡単に見破られた。


だが、それでも、馬車を停止させることには成功。

フランコ自らがダガーを手に、そのロープを切断するために馬車を降りる。

それを遠くから眺めていた盗賊たちが、後方から馬で一斉に距離を詰めた。


数十本もの矢が放たれ、その内の数本が旅客専用車両に突き刺さる。

護衛は術式射程まで、身を低くして車両の中に隠れ潜む。

フランコだけが平然と降り注ぐ矢をものともせず、馬車の外で迫る海賊たちを待ち受ける。


「くそ神父、散々好き勝手やってくれたが、今日でそれもお仕舞だ」

「ここでブチ殺して、グリーンノウズの教会に首だけにして返してやるぜ」


臆病なのか、用意周到なのか、盗賊は二十メートルくらいまで距離を詰めると、そこに留まり、ひたすらの矢を放つ。


・・・


時は少しばかり過ぎて、九日後。

グリーンノウズの港から少し離れた場所で、三隻の大型帆船がシャアリィとアイシャの乗るマーメイド商会の中型帆船に迫っていた。

大きな帆には、『S・S・C』の文字。

それはグリーンノウズの拠点を失った、セブール海運商会の船舶。

機械式大型弩弓を備えた、捕鯨艦だ。


「ドラゴン・スレイヤー殿、セブールの捕鯨艦が接近しております!」

「如何なされますか?」


アイシャは事も無げに吐き捨てる。


「出来れば敵を一列に並べてくれると助かるよ」

「奴らが仕掛ける前に、琥珀のシャアリィが一撃で撃沈するさ」


シャアリィとアイシャは甲板に立ち、迎撃の準備を始めた。


「捕鯨艦の弩弓の射程はどの程度か、知ってるか?」


アイシャが船員に尋ねると、


「最大射程で百メートルですが、的に正確に当てるなら五十メートルがせいぜい」


それを聞いてシャアリィが鼻で嗤う。


「私の射程は四百五十メートル以上だよ」

「でも、三隻一度に沈めるならば二百メートルかな」

「どちらにしても、生かして返すつもりはない」

「このタイミングでの襲撃ということは、マーメイド商会の中にセブールと通じている者がいるに違いない」

「幾ら金を積まれたかわからないけれど、そいつも絶対に逃がさない」


シャアリィとアイシャの乗った帆船は、器用に進路を変えながら、敵の陣形が一直線になるように進む。

そして、セブールの捕鯨艦との距離が約三百メートルという位置で、理想の位置を得た。


「急制動開始!」


マーメイド商会の帆船が、風を受けていた帆を畳む。


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