相変わらずの武具職人
「フランコ、寄りたい所があるんだけれど、付き合って貰える?」
シャアリィが尋ねれば、フランコも当然、応じる。
「勿論、構わない」
「で、何処かな?」
この街で予定外に寄る場所と言えば一つしかない。
アイシャは商業ギルドの通りの北側を指差す。
「ここから近いよ」
「アンナ・ヘリントスの工房」
シャアリィの螺旋杖の制作者にして、エンダーベルト最高の魔法武具職人の名前はフランコも知っている。
「私が一緒でも大丈夫なのかな?」
「少しでも問題があるなら、私は先ほどの宿に戻っているが」
と、お茶会の前にシャワーを浴びた小さなホテルの方向を親指で差す。
「全然、問題ないよ」
「私達とアンナは友人同士」
「それにフランコを一人にすると、どうせ、お酒飲みにいくでしょ?」
シャアリィはにやにや笑いながら、フランコを見やれば、
「まぁ、そうなるね」
と、フランコは素直に白状する。
そんなお喋りをしている間に、アンナの工房の門を潜った。
もうすぐ日没、アンナが活動を始める頃だ。
玄関に置かれた鳴らないハンドベルを無視して、シャアリィが大きな声で工房の主を呼ぶ。
「アンナー、来たよー、起きてるー?」
その声に反応して扉が開き、ぼさぼさの髪に下着姿、シャツを羽織っただけのアンナが出て来た。
「お、おお、誰かと思えば!」
「すぐに上がりなよ、お茶を・・・」
と、そこでフランコの存在に気付き、慌ててしゃがみ込む。
「ちょ?誰?すぐに着替えてくるから、待ってて!」
シャアリィとアイシャはくすくす笑い。
「「相変わらずだねぇ」」
と、言えば、フランコは少しばかり顔を赤らめて、
「工房の主は、何時もこんな感じなのか?」
と、問う。
・・・
「えー、この若さで枢機卿???」
十全に着替えを終え、珍しく口紅まで引いたアンナが驚きの声を上げる。
巷でどれ程有名でも、引き籠りの職人がフランコのことを知るはずもなかった。
「相変わらず、引き籠ってるんだね?」
と、アイシャに問われれば、頭を掻きながらアンナは、
「まぁね・・・でも、お付き合いしている人はいるんだ」
「すっごい進歩だろう?」
「同じ職人界隈のひとなんだけどさ、生活魔具職人のメイヤーって知ってる?」
まさか・・・さっき会った人物か、と、シャアリィは思った。
でも、あの人はどう見ても六十才近い。
まぁ、エドワードとエレナみたいな年の差カップルはいるけれど・・・。
「そこのお弟子さん」
その一言で、ほっと胸を撫でおろす三人。
「つい、さっきまでいたんだよ、メイヤーさんの所」
「生活魔具をアーシアン中に普及させる」
「今回の旅は、その買い付けのためのもの」
自分に会いにきたとばかり思っていたアンナは、少しばかり拗ねた。
「私はついでかよ」
「まぁ、それでも嬉しいからいいんだけれどね」
応接間を見渡してアイシャは、
「大魔境になってたらどうしようかと心配したが、ちゃんと掃除もしてるみたいで安心したよ」
「彼氏も出来たし、ちゃんとしなきゃね?」
と、お遣いだらけの日々を懐かしんだ。




