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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
453/594

クラーケンの消滅

議員絡みで拘束されたセブール商会の関係者は七名。

その中には、新支配人ローバーの姿もある。

既に個別の取り調べが始まり、ローバー以外の全員が司法取引を求めて、膨大な証拠、証言を吐き出した。

誰もローバーを庇うものはなく、セブールになど勤めなければ良かったと口を揃える。


一人の調書が終わる度、ローバーはその供述を聞かされた。

最初は沈黙で遣り過ごしていたローバーだが、二人目、三人目と供述を聞かされる頃には、否定や言い訳が混じり始めた。


「私はただ本社からの指示で・・・」


口癖のように唱えた所で六人もの供述に共通する、


「上首尾に事を運んだならば、私が特別に報奨を出す」


という口上は、ローバー自身が犯罪の主体だという自覚があったことを肯定する。

それを突き付けられると、ローバーは司法取引を要求した。


「もう一切、セブールとは関わらない」

「商会の事務所も閉鎖する」

「だから、死刑や奴隷落ちだけは嫌だ」


涙を流しながら訴えかけるが、ジョンソンは首を振る。


「司法取引ってのはな、情状酌量じゃないんだよ」

「全部が明らかになってからじゃ、我々は『取引』で得るものがない」

「真面目に商売だけやるなら、セブールにだって居場所はあるんだ」

「つまりは出世欲に駆られて、あんた自身が犯した罪」

「慎ましく生きられなかった罰」

「それは議員さん達も一緒さ」


ローバーはただ項垂れ、子供の様に泣いた。


・・・


本気になった領主府、衛兵監督所、教会。

裁判所は本来の姿を取り戻し、罪人たちに与えられる判決は、至極真面(しごくまとも)


ローバーは、立法介入と複数の贈収賄、暴力行為の教唆と幇助、不当価格操作、脅迫行為の教唆と幇助、殺人の教唆と幇助等の罪に問われ、判決は死刑。


セブール商会と癒着し、法案可決に反対した議員たちは、贈収賄、立法権濫用の罪にて、強制労働、その期間は贈収賄の額に応じて、十五年から四十年と幅広い。


司法取引に応じた議員秘書、セブール商会幹部は、罪状に応じて個別の審議が為され、最も軽い者で、罰金と強制労働二年、奉仕活動二年、最も重い者は五年毎に仮釈放申請可能な無期限禁固。


事実上、セブール商会は運営不能となり、複数空いた議員席には功績のあるギルド関係者や貴族によって埋められた。


後日、違法残置されていたセブール商会の船舶や商品は競売に掛けられ、マーメイド商会はただ同然の値で、二隻の大型帆船を手にいれ、その他の海運事業者も破格の値段の商品にありついた。


商会が消えたことにより、あらゆる商品の価格が下がった。

嫌がらせを伴う強制的なみかじめ料の徴収がなくなり、それを埋めていた談合もセブールと共に消えたからだ。

商品が安くなったことで、消費者の購買意欲は高まり、殆どの商店がその恩恵を受けた。


賞金首になっていない、ならず者も治安安定と共に居場所がなくなり、グリーンノウズから姿を消してゆく。

海岸通りは活性化し、新しい店も増えた。

観光客の目的は歓楽街だけでなくなり、都心の規模は拡大。

治安の回復は見込み以上の税収を領主府に齎した。


ただ、旧市街区だけは・・・

以前のまま時代に取り残されたように静かだ。

それでも犯罪件数が激減したのだから、注意を払えば夜歩きも出来るだろう。


一通りの決着がつき、フランコの粛清劇は終幕。

だが、これは始まりであり、終わりではない。


新都の繁栄から視点を変えれば、まだ、そこに貧民街がある。

全ての者を救うのは、人間には少しばかり荷が重い。


・・・


次の目的地はエンダーベルト。

商品の買い付けに伴う様々な仕事。


フランコは、ドロテア・パストーレ司教に枢機卿代理を託し、シャアリィ、アイシャに同行することにした。

フランコの基礎学校時代からの同期であり、才媛であるものの、いわゆるツンデレ。

そして、フランコに惚れている。


「あんたが無事に帰ってこなかったら、私が枢機卿になってあげるわ」


勿論、人前ではこんなことは言わないし、心配していることは態度でわかる。

フランコは飄々とした笑顔で、


「ああ、それもいいね」

「きみになら任せられる」


パストーレは俯き、


「いいから、早く行って、早く帰ってきて!」


そういう彼女の手に、フランコは執務室の鍵を預けた。


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