徹底的な駆除
「賛成多数を持って、本法案は可決」
「明日、発行し、効力発揮は来週からとなります」
悪党以外は誰も困らない使用者責任連帯法と賞金首通報制度。
議会で堂々とこの制度に反対するような者は、博愛主義者か悪党の仲間。
それでも、全員賛成にならないのだから面白い。
「法案反対者のリストを作れ、至急だ」
「リストに乗った奴らは尾行対象、わかるな?」
「尾行は必ず複数人で連携」
「勝手に踏み込むなよ?」
「スキル持ちを向かわせる」
ジョンソンがそう部下に命じるのは当然のこと。
今までの衛兵監督所のように生温くはない。
千載一遇の好機、その動きは早い。
・・・
夕方には、フランコの手元にも尾行対象者のリストが渡る。
「やれやれ、こんな大物議員までも、か」
「汚い金を喰らうことに慣れて、善悪の判断も出来ないとはね」
アイシャと、シャアリィはうずうずしている。
「私達は、治対で待機」
「現場突入を援護するよ」
と、アイシャが言えば、少しお道化てフランコが言葉を返す。
「そうしてくれると助かるが、これでも法治主義を掲げてるんでね」
「なるべく殺さぬように無力化してくれ」
シャアリィとアイシャも同調して、
「「御意のままに」」
と、芝居掛かった返事で笑う。
・・・
週が明けるとすぐに、衛兵監督所に賞金首通報が舞い込む。
危険度を判断し、手に余る者は治安対策委員会の出動が要請される。
連日、次々と剥がされる賞金首手配書。
今まで自分達は何をしていたのか、と、衛兵達の士気も上がった。
治安対策委員会も人的資源を総動員して、通報者の保護と犯罪捜査を両立する。
出入口を封鎖するように、港も、キャラバン乗車場も、人員が配置された。
・・・
ある晩、件の大物議員の秘書がセブール商会の幹部と密会している現場。
そこに踏み込んだのは、シャアリィとアイシャ、そしてジョンソン。
「やぁ、議員秘書さん、セブール商会の幹部さんと内緒話かい?」
「俺達も混ぜてくれないか?」
嫌味な微笑みを湛えたジョンソンが、そう言いながら扉を開ける。
「俺がわかるかい?」
「面倒だから自己紹介を省きたいんだ」
縦に首を振る容疑者たちは、既に降参の表情。
「話が早くて助かるね」
「こちらは、高名な二人、あのドラゴン・スレイヤーだ」
「五体満足でいたければ、大人しく確保されたほうがいいよ」
シャアリィの指先で氷結の魔力がぎらりと光れば、そうする他ない。
「ひとつ、いい話をしてやろう」
「司法取引ってやつだ」
「きみ等は立場上、かなりの情報を持っているからね」
「無罪とまではいかないが、話す内容によっては大きな減刑が可能」
「それとも、上役に気を使って沈黙を貫いて、罪を全部ひっ被されて処刑台にあがるなら、それも良し」
「俺はこれでも優しいんだ」
「あんた達にだって家族はいるだろう?」
手錠を掛けられた容疑者たちの顔には、僅かな安堵。
使用者責任連帯法と司法取引の二段構え。
この街に悪党の居場所はない。




