マーメイド海運商会
グリーンノウズに戻ったシャアリィ達は、早々にレオパルドと会談。
レオパルドは二人を歓迎し、進捗を話す。
「買収した商会は、中堅の総合交易商、マーメイド商会です」
「初期投資額は聖金貨二百枚」
「輸送船舶は、外洋航海も出来る大型帆船が二隻、国内航路用の中型帆船も二隻」
「それと三隻の高速艇」
「わがままを言わせて頂ければ、高速艇の一隻は私のプライベート船舶として使わせて頂きたい」
「表向き商社の責任者に変更はありません」
「まだ、セブールと全面戦争するわけにはいかないので、ご理解願います」
シャアリィとアイシャは、その手際と配慮に拍手を送る。
「さすがはレオパルド様です」
それを指で制して、
「私達はパートナーですから、敬称は不要」
「気軽にレオと愛称で呼んで頂ければ、距離も近くなります」
シャアリィとアイシャは顔を見合わせて、
「では、私達も同様に、ファーストネームでも、二つ名でもお好きなように」
三人はフルートグラスのスパークリングワインを掲げ、海運事業最初の一歩を喜んだ。
「ドラゴン・スレイヤーに」
「カジノ・キングに」
「マーメイド商会に」
「これで遠慮なく、クラーケンを狩り尽くせるね?」
と、シャアリィが言えば、アイシャは、
「私達は既にビジネス・パーソンだ」
「武力の行使は最終手段、出来る限り、法と金のパワーゲームで駆逐する」
「レオを荒事に巻き込まないためにもね」
レオパルドは微笑む。
「私はパレスの主、荒事にも慣れていますとも」
「しかも、今は当代最強の冒険者が傍にいる」
「恐れることなどありませんよ」
スマートな紳士は、まだ五十手前。
一代でこの地位を築いたのだから、激動の人生だったに違いない。
・・・
午後六時。
「ただいま、フランコ」
合鍵で邸宅に入ったアイシャが声を掛けると、フランコは応接間のソファで以前のように本を片手に酒を飲んでいた。
「やぁ、休暇は満喫できたかい?」
と、問われれば、
「勿論!」
「車両の準備も整っているし、新しく買った家も完成したよ」
「暇が出来たなら、又、レリットランスにも遊びにおいでよ」
「まぁ、その前に仕事は山積みなわけだけど」
シャアリィが言えば、フランコもアイシャも笑う。
「海路の準備も出来た、中堅の交易商会をレオが買収済み」
「これでクラーケンを叩き出しても、問題はない」
アイシャがにやりと笑う。
「あの、いけ好かない新しいセブールの支配人を吊るす罠を用意してたよ」
フランコが意味深に口角を吊り上げる。
そして、指を一本立てて、
「次の法案は、使用者責任連帯法」
「末端の子悪党をしょっ引けば、その使用者まで責めが及ぶという万能法さ」
「勿論、領主機関、教会は、その対象外だが、犯罪組織は対象に含まれる」
「自分たちが作った法で自分の首が締まるのは御免だからね」
そして、もう一つ、と、フランコが二本目の指を立てる。
「賞金首通報制度」
「賞金首の所在を通報すれば、賞金首報酬の二割を民間人でも手にすることが出来る」
「通報者は治安対策委員会によって身辺保護が付くから、安心して通報出来る」
「善良な市民が増え、衛兵監督所の手間は減る」
「まぁ、これは私達の仕事だ」
シャアリィはチョコレートの箱をテーブルに置き、
「好きでしょ?コレ」
「いい仕事をした子にはご褒美が必要」
「清く、正しく、美しく」
三人がチョコレートと酒を楽しめば、勝利の味がした。




