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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
449/556

衝撃の宴会、再び

三月最初の安息日。

シャアリィとアイシャは、ファイヤー亭での宴会を予告した。


「そろそろ私達は自分の仕事に戻るよ」

「その前に、皆に酒と料理を振舞おうと思ってね!」


滞在中にこっそり集めたスパイスの数々。

作る料理は勿論、スパイス・スープ。

さすがにアンナの工房のような、スパイスの磨り潰し機もなければ、微塵切り機もない。

職人ギルドで特大の寸胴鍋を手にいれて、あとは全てが手作業の根性料理。

今日は予め貼られる『貸し切り』の報せ。


昼食を済ませると、すぐに準備に取り掛かった。

さすがにアイシャは感覚遮断をしてもスパイスにやられるので、ペースト作りはシャアリィの担当になった。

そして、玉ねぎの微塵切りもまた、アイシャには余りにも厳しく、それもシャアリィの担当に。

アイシャは揚げ物担当となり、特製フライドチキン、フライドポテト、クリームコロッケ等を作り始める。

揚げ物とスパイス・スープは、絶妙に相性がいい。


「なんだなんだ、今度は何を作ってやがる、魔女の薬のような匂いだぞ」

「ん、でも、なんか、身体に良さそうな気もするな」

「それに・・・腹が減る」


アレックスが、ちょいちょいとシャアリィの作業を眺めに来る。

その後ろで、オルチェはまたしてものたうち回る。


「ぐ、ぐ、ぐ、まだ、まだ、我慢できる」

「それ、完成まで何時間くらい掛かるんだい?」

「下手したら、何か腹に入れておかないと、空腹で倒れる」


シャアリィはすっとぼけて、さぁ?


「夜までには出来るよ?」


と、平然と答える。


シャアリィとアイシャは、これを見越してポケットにチョコレートを確保している。

それから一時間程でスパイス・ペーストが仕上がり、次は大量の玉ねぎを炒める。

甘味が染み出した香ばしい匂いに、オルチェがまた悲鳴を上げる。


「何か手伝いますか?」


と、キャナリィ親子もそわそわし始め、ナッチェはチョコレートでドーピング。

寸胴鍋に水を入れ、用意された具材が次々と放り込まれる。

強火の炎で一気に沸騰、そこからは蓋を閉じて弱火でぐつぐつぐつぐつ。


「あとは、待つだけなんだけど、マリウスは食べ盛りだし、ライスは爆盛りで沢山炊こうね」


と、アイシャに作業を依頼する。

時々ぺこぺこと動く鍋の蓋から洩れてくる蒸気は、予想以上に食欲を掻き立てる。

ナッチェはその横で、大量のサラダを刻んで大皿に盛りつける。


「あー、また、ケーキ忘れた」


都合良く現れるエドワード夫妻に金貨を渡し、ケーキの購入を依頼する。

そして迎えた午後七時。


「お待たせしました、シャアリィ特製スパイス・スープです」

「ライスと合わせて召し上がると、昇天出来ますよ?」


一瞬、目に沁みるような蒸気を伴い、地獄の釜の蓋が開く。

皆の空腹は限界点・・・そして、スープを一口啜り、一同が一斉に咽る。


「ひぃー、辛い辛い辛い・・・いや・・・旨い」

「おおおお、辛い、旨い、辛い、旨い、ライス、ライス!」

「おう、そういうことか・・・ライスで中和して食べる料理か」


アレックスの言葉で、皆、皿にライスを盛り盛り、スープに浸して口に運ぶ。


「野菜うまぁ、肉うまぁ、蕩けるー」


酒を飲むのも忘れて、皆がスープに夢中になる中、アイシャがさらに、


「揚げ物を挟むと、無限ループだよ」


と、言えば、皆のフォークが揚げ物に刺さる。

マリウスの皿がすぐに空になって、ナッチェが新たなスープを注ぐ。


「サラダに癒されますね・・・この料理は罪深い」


エレナと、オリビアが視線を交わす。


「これは是非、私達も覚えなければ、ですね」


オルチェはただ、料理に夢中。

マリウスが呟く。


「焼き鳥もすごいけれど、このスープもすごい」

「ご主人のお店の二号店か、このスープの専門店か、悩みます」


美味しい料理は人を幸せにする。

皆に様々な記憶を残して、シャアリィとアイシャは又、旅立つ。

次に戻る時には、きっと他の誰かがスパイス・スープを作るだろう。


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