ぶらり街歩き・前編
「衛兵通りに綺麗な新築のお家が建ったね?」
「私も将来、あんな家に住みたいなー」
昼過ぎ、ナッチェがしっぽをゆらゆらさせながら、そんな事を言った。
アレックスは仕込みをしながら、
「ナッチェなら可愛いし、いい旦那捕まえりゃ住めるぜ?」
「俺もこの商売引退したら、新居欲しいもんだ」
「オルチェは多分、住むとこなんざ今のままでいいって言うだろうけどさ」
シャアリィとアイシャは、にやにやしながら、
「へー、そんなに綺麗な家?」
「安息日、ちょっと見に行こうか?」
と、言えば、アレックスは、
「他人様の家なんぞ見ても、涎が出るだけさ」
「俺はゆっくりしたいね」
等と、面倒くさがり全開。
ナッチェは、シャアリィとアイシャに同意して、
「お茶するくらいしかやることもないので、お供しますよ」
と、微笑んだ。
・・・
「オルチェ姉さん、暇でしょ?」
「たまには、一緒にお茶行こうよ」
「エレナは新婚らぶらぶで、ナッチェが暇してるからさ」
シャアリィがオルチェも誘うと、じゃあ着替えてくるわ、と、乗ってきた。
『黒猫のテラス』、今日はオルチェが寒がるので、店内の奥のテーブル。
「ドラゴン・ラテ、と、ティラミス」
シャアリィのオーダーは早い。
三人は暫く、メニュー板とにらめっこ。
「ここあ、と、ちーずたると!」
「カモミールティ、ザッハトルテ」
「珈琲、シナモンロール」
オーダーを終えて、お喋りが始まる。
「毎日、毎日、同じことの繰り返し」
「嫌なわけじゃないけど、たまには刺激が欲しいもんさ」
と、オルチェがシナモンロールを齧りながら言えば、アイシャが笑う。
「オルチェ、それはない物ねだりだよ」
「私達はこういう何気ない一日がとても楽しい」
「そのうち、歌劇場が出来たら、趣味にすればいいんじゃないかな」
オルチェが少し驚いた顔をして、
「今だってあるだろう?」
「でも、歌劇の観覧は高いじゃないか」
「アタシが趣味にするにはちょっとね」
シャアリィが言う。
「グリーンノウズに私達が作ったみたいな屋外歌劇場、こっちにも出来るかもなんだよ」
「アネモイが前向きに検討してる」
ナッチェがもぐもぐと口と耳を動かしながら、
「できるといいですね、たのしそうです」
アイシャが、
「そういえばナッチェ、成人おめでとう」
「お酒をオーダーしてもよかったのに」
ナッチェの顔が固まる。
「そうでした・・・私、おとなだったんだ」
「甘いお酒、今度、ご一緒してください」
その言葉にオルチェが笑う。
「甘いのが好きなうちは、まだまだ、子供さね」
「大人になれば、苦いのも美味くなるよ」
「楽しいことだけじゃなくて、辛いことも過ぎてみればいい思い出になるように」
「まぁ、暫くは、まだ、甘えたっていいさ」
三人の冒険者達は、少しばかり過保護だ。
オルチェの胸元でキラリと輝くのは、シャアリィ達が贈ったネックレス。
目敏くシャアリィが見つけて、似合うよ、と言えば、オルチェは少し照れながら、
「何時も済まないね」
と、不器用に笑った。




