閑話:回る、回るよ、くるくると
相変わらずシャアリィは、賑やかで。
杖を回したり、自分が回ったり、アイシャの周囲を回ったり。
「シャアリィ、うっかり氷の上に乗らないでね?」
鼻歌混じりに動き回るシャアリィを見て、アイシャは思う。
何がそんなに毎日楽しいのだろうか、と。
確かにシャアリィと生活は楽しいし、飽きないし、なにより大好きだ。
時折、ぎゅっとしたくなる瞬間も多い。
自分より少し背が低く、ちょっと舌足らずだけど、時折辛辣。
その捉え所の無さは、まるで猫のようだ。
自分は獅子なのだから、守らないと、等と、保護欲を掻き立てられる。
それでいて、何時も自分を窮地から救ってくれる。
とても頼り甲斐のある相棒。
「もうすぐ着くから、そろそろ大人しくしてね?」
そう言えば、ちゃんと大人しくなる。
シャアリィはアイシャの真面目な所を見て、何時も考える。
見かけはすごく可愛いのに、少しばかり残念だなぁ、と。
別に無理してはしゃげとは言わないけれど、もう少し女の子っぽくてもいいんじゃないかな。
何より、自分にはないしっぽと耳。
そんな可愛らしいものがありながら、勿体ない。
ついつい触りたくなる誘惑に駆られる。
「アイシャは、くるくるしたい時ってないの?」
「なんとなく嬉し過ぎちゃう時とか、構ってもらいたい時とか」
「何かを誤魔化したい時とか、いろいろ考える時とか、くるくるするの」
「違う景色になって、違う見方になって、自分を確かめるんだよ?」
アイシャは自分がシャアリィと一緒に回っている場面を想像する。
「いや、二人してくるくるしてたら危ないでしょ?」
「それに何処を見ていいかわかんなくなるよ」
「私は真っすぐ歩くだけで十分」
「ちゃんとシャアリィが気付いてくれるし」
思わず二人とも顔が綻ぶ。
「じゃあ、アイシャの分まで、やっぱり、回らないと、ね」
少しばかり、シャアリィが回る理由がわかったけれど。
そんなことを考えている間に目的地につく。
・・・
領主府に着き面会を申し出ると、アネモイは執務を中断して時間を作ってくれた。
そして、シャアリィ達の報告に目を輝かせ、興味深く話を聞いた。
「歌劇場にカジノ王ですか」
「それは、又、慧眼でしたね」
「私も機会があれば、お礼を兼ねて会いたいものです」
「この街にはカジノは必要ありませんが、子供向けの歌劇場は良いですね」
「催し物が増えれば、街は活性化します」
「空き地を活用すれば、費用もそれ程掛かりませんし」
「運営できる人材がいれば、検討しましょう」
シャアリィとアイシャは声を揃えて、礼を言う。
「お礼を言うのは私ですよ」
「ビジネスのためとは言えど、グリーンノウズにまで向かわせてしまっているのですから」
「もうすぐ、お家も完成するのでしょう?」
さすがはアネモイ。
耳が早い。
・・・
領主府に長居したので時間も足りず、今日の締めはザックの墓参り。
今日の供え物は、小さな花束と度数の高いジン。
「お蔭様で、私達も、もうすぐレリットランスの住人になるよ」
「今日は景気付けにキツいやつを持ってきた」
「酔い潰れるまで、楽しんでくれ」
アイシャがにやりと笑う。
「もう、お花にも飽きてきたでしょう?」
「さすがに食べ物はそっちまで届く間に痛んじゃうから我慢してね?」
「みんな、何時もお墓の周り綺麗にしてくれてるからね」
「私達もこんなふうにしてもらえるのかな?」
シャアリィは少し寂しく笑った。
まだまだ遠い話でも、ヒトは必ず死ぬ。
だから、生きているうちは、ちゃんとしっかり楽しもう、と。
ザックの墓標の前でも、シャアリィはくるりと一回転。
そして、最後に一言告げる。
「また、来るね」




