帰省
海路の手配が進む中、シャアリィとアイシャは少しばかり長い休暇を取ることにした。
自身の家の完成や忙しさの中で出来なかった、エドワードとエレナ、ナッチェの祝い、グリーンノウズに戻れば、又、暫く帰れないという事情もある。
フランコを一人残して行くのは、少々、心配もあるが、あまり無理な活動は控えるということを言い含めて、戻りは三月半ばから四月くらいということで了承を得た。
帰路十一日の旅は何事もなく終わり、二人がレリットランスに戻ってきた。
衛兵たちの何時もの歓迎、そして、何時もの様に最初の目的地は『黒猫のテラス』。
この寒空の下では、テラス席に座る客もいない。
店内は程良く混雑している為、シャアリィとアイシャは密談の出来るテラス席に座った。
「おかえりなさいませ、アイシャさん、シャアリィさん」
こんな時期に屋外席に座るという奇妙な客にも、店員の女性は何時も優しい。
シャアリィとアイシャはコートを着たままで、オーダー。
「ドラゴン・ラテ!」
「あとは・・・ホットケーキ!」
シャアリィの素早いオーダーに、新メニューを探そうとしていたアイシャもメニュー板を閉じる。
「同じものを」
「帰りに、チョコレートの大箱を二つ、お願いします」
吐く息が白い中、アイシャはシャアリィに微笑んで、
「ベッド、どうする?」
「二つ買っても、どうせ片方で寝ることになると思うんだけれど」
「大きいやつ、一つにしようか?」
と、新居の家具の相談をする。
クローゼットは別々、ミヤマの屋敷みたいにブーツを脱ぐ方式にしよう、そうすると冬は足が冷えるから、大きめの絨毯を買おう、化粧台はどうする?
話し始めれば、時間はあっと言う間に過ぎる。
午後四時、そろそろ仕込みが終わって開店待ちの一服をしているだろうと言うタイミング。
二人は『黒猫のテラス』を出て、ファイヤー亭に向かった。
「ただいまでっすー」
と、勢い良く扉を開ければ、扉の裏でナッチェがピギャっと可愛らしく悲鳴を上げた。
どうやら、扉で頭をぶつけたらしい。
「あー、ごめんねー、ナッチェ大丈夫?」
涙目になりながら、ナッチェが答える。
「大丈夫です、というか、おかえりなさいませ?」
何故、疑問形?と、アイシャが問えば、
「収穫祭も、結婚式も、会えなかったので本物かと疑いました!」
それを聞いて、他の面々がくすくすと笑う。
「おかえり」
の、連続に思わず照れた二人が、もう一度、ただいまと言う。
沢山の思い出話をする前に、忙しい時間が始まるのだから、土産のチョコレートを皆で摘まみ、営業に備えて気合を入れる。
「さて、今日も稼ぐか!」
という、アレックスの声に、一同がバラバラな返事を返す。
「了解しました」
「はい」
「よろしくお願いします」
「まかせてくれ」
「あいよ」
「おっけー」
「頑張るよ」
ホームは何時も、二人を温かく迎えてくれる。




